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CR微分・RC積分回路の実験


本ページ作成。(2025/12/16)
  1. 実験の目的

  2. CR微分回路とRC積分回路に矩形波を入力し、時定数を変えたとき波形が
    どのように変化するか観測します。

  3. 実験課題

    1. 矩形波入力時の波形観測
    2. CR微分回路とRC積分回路それぞれに矩形波を入力し、出力波形を観測します。
      また、入力周波数は一定にしたまま時定数を変え、その変化を見ます。

  4. 実験回路

    1. CR微分回路

    2. RC積分回路

  5. 回路の機能と動作

  6. 入力信号を微分・積分する回路ですが、厳密な微分・積分ではなく、微分・積分に
    近い波形になる回路です。

    動作の理解には電気回路(学)の過渡現象に関する知識が必要になります。
    CR微分・RC積分回路の詳細な動作はトランジスタ・パルス回路の解析の
    CR微分・RC積分回路を参照してください。

  7. 実験回路の設計

    1. 設計条件
    2. (1)入力電圧:
      周期1ms、デューティー約50%、振幅は下図のように直流の下駄を履いています。

      (2)信号源
      シュミット・トリガの実験で使用した回路を流用し、
      低周波発振器の出力である正弦波から矩形波を生成して使用します。
      出力インピーダンスは1.5[kΩ]です。
      シュミット・トリガの閾値が0[V]に対して対称性が多少悪いため
      矩形波のデューティーは50[%]から少しずれます。

      (3)出力の負荷
      微分回路と積分回路の負荷には何も接続しません。
      波形観測のためのオシロスコープを接続しますが、オシロの入力インピーダンスは
      [MΩ]のレベルなので無視出来る値です。

    3. CとRの選定

    4. シュミット・トリガ回路
    5. 矩形波を生成するために シュミット・トリガ回路の実験で使用した電子ブロックを
      そのまま流用します。シュミット・トリガの入力は発振周波数を1kHzに設定した
      低周波発振器の正弦波です。

  8. 実験方法

    1. 電子ブロックの配置(シュミット・トリガ)
    2. 矩形波を生成するシュミット・トリガの回路を
      電子ブロックで下図のように組み立てます。
      (回路図は シュミット・トリガ回路の実験を参照)


    3. 矩形波入力に対する出力波形の観察
      発振周波数ルを1kHzに設定した低周波発振器の 出力をシュミット・トリガーに
      に入力し矩形波を生成します。低周波発振器の出力レベルは
      発振器で2[Vp-p]に調整します。
      Viの値の設定には テスターアダプタアナログ直流電圧計 を使用し、
      テスターアダプタはpeak to peakモードにしました。
      (厳密に設定する必要はないので、オシロスコープでだいたいの
       レベルに設定しても良いと思います。)

      (1)微分回路の波形観測
      シュミット・トリガーの出力に微分回路を接続し、微分回路の入力(Vi)と
      出力(Vo)の波形をオシロスコープで観測します。
      時定数を変えるため、コンデンサーの値を変えながら波形の変化を見ます。


      (2)積分回路の波形観測
      シュミット・トリガーの出力に積分回路を接続し、微分回路の入力(Vi)と
      出力(Vo)の波形をオシロスコープで観測します。
      時定数を変えるため、コンデンサーの値を変えながら波形の変化を見ます。


  9. 実験機材

    1. 電子ブロック
    2. 抵抗器
    3. 47[kΩ]1/4W P形カーボン
    4. コンデンサー
    5. 0.1[μF]、0.01[μF]、0.001[μF]:マイラー
      100[pF]:セラミック
    6. 低周波発振器
    7. テスターアダプタ
    8. アナログ直流電圧計
    9. 簡易安定化電源 (10[V]端子)
    10. 乾電池:1.5[V]×4
    11. オシロスコープ

  10. 実験結果

    1. 波形観測(矩形波入力)
    2. 入力(Vi)の矩形波に直流分があるため、積分回路の出力(Vo)もその分プラス方向に
      シフトしています。
      コンデンサー
      の容量
      時定数 微分波形 積分波形 備考
      0.1[μF] 4.7[ms] (微分波形)
      入力(Vi)
      と出力(Vo)は
      ほぼ同じ波形

      (積分波形)
      出力(Vo)はほぼ
      入力(Vi)の平均
      となる直流に近い
      0.01[μF] 0.47[ms] ほぼパルス幅と
      同じ時定数
      0.001[μF] 0.047[ms]
      100[pF] 4.7[μs] (微分波形)
      出力(Vo)の高さが
      入力(Vi)より低い

      (積分波形)
      出力(Vo)は
      入力(Vi)とほぼ
      同じ波形
      上:Vi、2V/div、0.5ms/div
      下:Vo、2V/div、0.5ms/div

  11. 測定結果・考察

    1. 微分回路
    2. 時定数をパルス幅の約10倍(4.7[ms])にすると入力がほぼそのまま出力に現れました。
      時定数をパルス幅の約1/10倍(0.047[ms])にすると良好な微分波形になりました。
      時定数をパルス幅の約1/100倍(0.0047[ms])にすると微分波形のピークが低くなりました。
      以上から、入力の立上がり時間が(パルス幅に対し十分)早い場合、微分回路の
      時定数はパルス幅の1/10〜1/20(?)あたりを目安に決めればよいと考えます。

    3. 積分回路
    4. 時定数をパルス幅の約10倍(4.7[ms])にすると出力は入力の平均となる直流に近づきました。
      時定数をパルス幅の約1/100倍(0.0047[ms])にすると入力がほぼそのまま出力に現れました。
      波形の立上がり・立下がり時間をあまり気にしなければ、
      時定数をパルス幅の約1/10倍(0.047[ms])くらいより長くすれば
      出力波形が入力波形に近づきます。長いパルスを分離する場合の定数設定の
      目安になると思います。

  12. 今後の課題

    1. 応用
    2. CR微分回路は今後実施予定のトランジスタによる双安定フリップ・フロップ
      の実験や、オール・トランジスターによるパルス発生器に使用する予定です。

    3. アナログ・テレビの原理実験
    4. 課題という訳ではないのですが、微分・積分回路はかつてアナログ・テレビの
      垂直同期信号と水平同期信号の分離に使われていました。
      今となってはほとんど実用性がないですが、アナログ・オシロを使って
      アナログ・テレビの真似事が出来ないかたまに考えてます。
      「イ」の文字を表示するとか。(笑)

  13. 参考文献

    1. パルス回路の設計(昭和56年(1981) 第20版(改訂10版)) P-44〜54 微分回路、積分回路、猪飼國夫著、CQ出版社

  14. 関連項目

    1. トランジスタ・パルス回路の解析− CR微分回路・RC積分回路の解析
    2. トランジスタ・パルス回路の実験− シュミット・トリガの実験
    3. 自作電子ブロック
    4. 低周波発振器
    5. 簡易安定化電源
    6. テスターアダプタ
    7. アナログ直流電圧計


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