前口上
電子工作を趣味にしていると、次第に測定器が必要になります。
次に、電子工作に凝ってくると、次第に測定器自体を製作したくなります。
更にのめりこむと、測定器を製作するための測定器を作りたくなります。
そして、ついには絶対測定にまで興味が行ってしまい、
泥沼から抜けられなくなってしまいます。
まあ、ここまでいくと、ちょっと病気かもしれませんが(^^;
とは言え、通常自作測定器は精度・機能ではメーカー製にかないません(まあ、当然)。
どなたか忘れたましたが、以前ある技術者が以下のようなことを文献に書いておられました。
「測定器を購入するとゆうことは、機能を買うのではなく、精度を買うのだ。」
けだし、名言であります。
なので、測定器は買ってくるのが常識です。
もし採取した測定器のデータを他社・他人に提供する場合、「自作測定器で測定しました。」
と言ったなら当然信用されないでしょう(笑)。しかし、電子工作の趣味の世界なら許されます。(^^v
以下、ここのページには、主に自作可能な測定器の方式検討について纏めます。
(興味のある方は、
こちらのコラム「測定器を自作する(したい?)話」も参照してくだい。)
直流電流測定
- 直流電流計の自作
電子回路を使用しない場合、直流電流は
可動コイル型電流計
で測定することに
なりそうでが、さすがに電流計まで自作することは、精度、機械的構造の点から
実用的でないと思います。
ちなみに、かつて、「マイキット」なる商品では、磁石(コンパス)の周りにコイルを
巻き、コイルを流れる電流が作る磁界により、コンパスの針の向きが
南北方向から傾くことにより、電流の強さを表示していました。

- 分流器
分流器
に必要とされる抵抗器の値は、一般的には、中途半端な値となるため
複数の抵抗器を組み合わせて実現する必要があるため面倒です。
しかし、面倒ですが実現性が低い訳ではありません。
また、分流器を使用する場合、分流器に流れる電流が大きくなる傾向があるので
分流器の消費電力にも注意する必要があります。
ところで、電流計の内部抵抗ですが、この値が判らないと分流器の値を計算
することが出来ません。分流器の値を決定する場合は、購入した電流計の内部抵抗を
テスターなどで測定してみる以外、方法はないと思います。

- 直流電位差を使う方法
精度の高い直流電流測定の方法として、直流電位差計と標準抵抗器を使う方法があります。
直流電位差計の原理および電流測定の方法については、電気計測のページの
直流電位差計の原理を参照してください。
さて、直流電位差計を自作出来るかですが、私はケルビン・バーレー・ポテンショメーターを使う
方法を提案します。
ケルビン・バーレー・ポテンショメーターは主にロータリースイッチと(精密)抵抗器から成り立ちます。
精密抵抗器については、電子工作の観点からは誤差0.1%の金属皮膜抵抗で十分な精度だと思いますし、
かつ入手も容易です。より、精密な抵抗器も世の中にはありますが個人での入手は難しいかも
しれません。(昔、秋葉原では0.01%精度の抵抗器を売る店もあったのですが、今はありません。泣)
また0.1%から選別する手もありますが、選別のための手段が別途必要です。
なお精密抵抗器はお値段が少し高いので、ケルビン・バーレー・ポテンショメーターを自作すると
抵抗器だけで数千円になってしまいますが、精密測定のための投資としてやむを得ません。(^^;
直流電位差計を使う際に問題になるのは標準電圧の準備です。
昔は標準電池を使うのが当然でしたが、維持・管理が難しく、かつ今はほとんど手に入らないでしょう。
私は諦めて、標準電圧のICを使用しました。普及しているICでは例えば317の番号で呼ばれるものが
ありますが、少し精度に不満を感じたので、たまたま見つけたLM4040というICを使いました。
ケルビン・バーレー・ポテンショメーターと標準電圧発生器の自作例は下記を参照してください。
直流電位差計 − ケルビン・バーレー・ポテンショメーターの製作
直流電位差計 − 標準電圧発生器の製作
標準抵抗器ですが、ネットで買えますが数万円します。(^^;
かつ、電子工作ではそこまで必要ないでしょう。
私は、0.1%の金属被膜抵抗器をを使用しています。なお、抵抗器は発熱すると
抵抗値が変動するので、大きな電流を測定するのは現実的ではありません。
一方、逆に測定電流が小さすぎると平衡をとるための電流計が振れなくなります。
なので直流電位差で計れる電流はmAオーダーになるでしょう。
標準抵抗器として使う精密抵抗器はケースに入れ、下記のように製作しました。
小物ツール − 精密抵抗器
最後に、直流電位差計を使った直流電流測定の実験事例としては下記を参照してください。
電気計測実験 − 直流電位差計によるアナログ直流電流計の校正
- 演算増幅器を使う方法(工事中)
直流電圧測定
- 可動コイル型直流電圧計
可動コイル型直流電圧計
と言っても、実態は
可動コイル型直流電流であり、
この電流計に直列抵抗Rを接続することにより、電流の値Iから
V=IRのオームの法則
により電圧Vが読み取れます。
ただし、実際には電流計には内部抵抗:Raがあるため、直列抵抗Rを決めるに
あたっては、計算上のRからRaを引かないと大きな誤差が発生します。
一般的にはRaは中途半端な値となるため、実際に挿入する直列抵抗の値も
半端な値となります。これを実現するためには、複数の抵抗器を組み合わせて
実現します。
ところで、電流計の内部抵抗ですが、この値が判らないと直列抵抗の値を計算
出来ません。電圧計を自作する場合は、購入した電流計の内部抵抗を
テスターなどで測定してみる以外、方法はないと思います。

- 倍率器
倍率器
により実現する測定レンジは、通常切りのいい値となるので、
必要とされる倍率器の抵抗値も切りのいい値となり、
実現は容易です。

電流計と倍率器を使用したアナログ電圧計の製作事例は下記のリンクを参照ください。
アナログ直流電圧計の製作
- 直流電位差を使う方法
直流電位差計の原理については、電気計測のページの
直流電位差計の原理を参照してください。
直流電位差計の製作については、本ページ内の「直流電位差計を使った電流測定」の項に詳しく
記載したのでそちらを参照してください。
なお、直流電位差計を使った直流電圧測定の実験事例としては下記を参照してください。
電気計測実験 − 直流電位差計によるアナログ直流電圧計の校正
- 演算増幅器を使う方法(工事中)
抵抗測定
- 直流電位差を使う方法
直流電位差計の原理および電気抵抗測定の方法については、電気計測のページの
直流電位差計の原理を参照してください。
直流電位差計の製作については、本ページ内の「直流電位差計を使った電流測定」の項に詳しく
記載したのでそちらを参照してください。
直流電位差計を使った電気抵抗測定の実験事例としては下記を参照してください。
電気計測実験 − 直流電位差計による電気抵抗の測定実験
なお、電気抵抗測定の際、必要となる基準抵抗器については、電流測定でも使った
下記を使用しています。
小物ツール − 精密抵抗器
- ホイートストン・ブリッジを使う方法
電気抵抗の測定方法としては最もポピュラーな方法でしょう。(^^v
ホイートストン・ブリッジの原理ついては、電気計測のページの
ホイートストン・ブリッジの原理を参照してください。
一応、ホイートストン・ブリッジの自作は容易ではあります。
(ただし要求仕様による。笑)
必要となる精密抵抗器は電子工作の観点からは0.1%の金属被膜抵抗器で十分と思われ、
入手は容易だからです。
問題は電源と平衡点を見つけるための検出器です。電源は直流を使う方法と交流を
使う方法があります。
(1)直流を使う場合
電源は安定化電源でも、電池でもとくに問題はありません。
問題は検出器です。検出器は高感度なほど平衡点を正確に設定出来ます。
最小値が判ればよいで絶対値は問題ではありません。
デジタル・マルチメーターやデジタル・テスターが使えるなら問題ありませんが
そのような場合、そもそもブリッジを自作する必要はないでしょうから(^o^;;
アナログメーターを使う場合を考えます。
ブリッジで使う場合、高感度(50〜100μA)で0点が中央にあるセンターメータータイプが
ベストです。
(2)交流を使う場合
信号源は何でも(?)よいです。
ブリッジの平衡条件に周波数が入っていないので、正弦波である必要はなく、例えばラジオの
イヤホン端子からの出力を使うことも出来ます。自作するなら、矩形波の発振器の方が作りやすい
でしょう。正弦波ならある程度周波数が高い方が平衡点が判りやすいと思われます。(1〜3kHz?)
検出器としては周波数が可聴帯域ならクリスタル・イヤホンが使えます。
高感度なので好都合です。
信号源として高周波領域(数百kHz以上?)を使いたい場合は、ブリッジ本体の実装や配線
にも神経を配る必要が出てきます。(別途検討予定)
ブリッジの製作事例についてはACブリッジの製作を
参照してください。
また、ブリッジを使った電気抵抗測定の実施例については下記を参照してください。
電気計測実験 − ブリッジによる電気抵抗測定の実験
低周波の正弦波発振器の自作例としては
発振器 − 低周波発振器
矩形波の発振器は現在(2025/6/7)計画中です。(^^;
- 演算増幅器を使う方法(工事中)
LC(インダクタンスと静電容量)測定
- 交流ブリッジを使う方法
交流ブリッジについてはいくつかの種類がありますが、容量測定のためソーティ・ブリッジと
インダクタンス測定のためマクスウェル・ブリッジの原理ついては、電気計測のページの
交流ブリッジの原理を参照してください。
LCの値はとくに周波数が高くなると測定周波数によって変わってくると思われますので、
厳密には使用する周波数で測定するのが望ましいです。
しかし、低周波ならそこまで気にしなくてもよいでしょう。
信号源は、ブリッジによる電気抵抗測定の記載と同じですが何でも(?)よいです。
ブリッジの平衡条件に周波数が入っていないので、正弦波である必要はなく、例えばラジオの
イヤホン端子からの出力を使うことも出来ます。自作するなら、矩形波の発振器の方が作りやすい
でしょう。正弦波ならある程度周波数が高い方が平衡点が判りやすいと思われます。(1〜3kHz?)
検出器としては周波数が可聴帯域ならクリスタル・イヤホンが使えます。
高感度なので好都合です。交流電圧計を使う場合は、出来るだけ高感度のものを使用すると
正確に平衡点を設定出来ます。
ブリッジの製作事例についてはACブリッジの製作を
参照してください。
また、ブリッジを使ったLC測定の実施例については下記を参照してください。
電気計測実験 − 交流ブリッジによるLC測定の実験(50Hz)
電気計測実験 − 交流ブリッジによるLC測定の実験(1kHz)
より高い周波数でブリッジを使用するためには、実装や配線に気を配る必要があります。
私はそこまでノウハウがないので、手元にある参考文献をあげておきます。
(1)電子展望(昭和56年1月号)P101〜105、測定器の実践的な使い方、第5回 R,C,Lの高周波測定に挑戦
茨木一郎著、誠文堂新光社
雑誌の連載記事で手元にあるのは第3回〜第6回まで。たいへん蘊蓄(うんちく)のある記事で
参考になります。たぶん著者はかつて測定器を製作・販売していた三田無線研究所の
関係者と思われます。
(2)入門電気計測(1980 第16刷) P135〜136、西野治著、実教出版
交流ブリッジの静電遮蔽やワグナ接地の原理について記載。
- 共振回路を用いる方法(工事中)
- 過渡現象を用いた有極性コンデンサーの容量測定(工事中)
交流電圧測定
いずれの方式も、ダイオードを使用して交流を整流し直流に変換してから、
直流電圧計で読み取ります。交流の実効値に変換する方式もありますが
回路が複雑になるので、通常は整流方式により交流のピーク値を読んだり
交流波形が正弦波であることを前提に直流電圧計の読みに波形率をかけて
実効値とするなどの方式をとります。
- 整流型交流電圧計
商用交流電圧を測定する典型的な交流電圧計の構成です。
整流回路にて交流を直流に変換し、直流電圧計にて測定する構成とした計器です。
測定波形は正弦波であることが前提で、測定する交流電圧の実効値と
直流電圧計の読みとの比は波形率と言い、
1.11倍になります。
ダイオードの順方向電圧降下が測定誤差となるため、
小さな電圧では使用できず、概ね10[V]以上で使用されます。
また、内部抵抗は直流電流計の感度で決まりますが、10kΩ/V程度になりそうです。

- ACプローブ+直流電圧計
高周波回路の測定によく用いられる方式です。RFプローブなどと呼ばれます。
D1、D2にシリコン・ショットキ・ダイオードを使用すれば、比較的小さな
電圧まで読み取ることが出来ますが、絶対値は期待出来ません。
なお、この回路の指示値はピークtoピーク値です。
ダミー負荷としてRLを接続し、校正すれば電力計としても
使用出来ます。ただ電力計の場合は、指示値が小さい程、目盛りがつまってしまいます。

- ACプローブ+直流増幅器+直流電圧計
ACプローブ+直流電圧計の構成に対し、ACプローブの後ろに直流増幅器を接続し
測定感度を上げるとともに、入力インピーダンスも大きく出来る方式です。
ACプローブですぐに直流に変換してしまうため、プローブと直流増幅器の間を
シールド線で接続するとかなり距離を離すことが出来ます。
増幅するためかなり小さな電圧まで測定出来ますが、ダイオードの順方向電圧降下
およびダイオードの温度特性の変化を受けやすく、校正しても絶対値は
読み取るのは更に難しくなります。

- 広帯域アンプ+ACプローブ
測定電圧が小さいとダイオードの電圧降下による誤差が大きくなるため
まず、測定波形を増幅してから整流する方式です。広帯域アンプは測定する
周波数帯域内で一定の増幅度を維持出来るものが必要です。

- 絶対値回路+LPF
ダイオードによる整流では、ダイオードの順方向電圧降下が測定誤差になって
しまいます。これに対して、演算増幅器とダイオードにより、理想的なダイオードを
実現するとダイオードによる誤差を無視出来るようになります。
いわゆる絶対値回路です。整流した後の波形は脈流なのでローパス・フィルタ(LPF)
を通して完全な直流にします。自作する場合は最も精度が出せる方式だと思います。
周波数特性は演算増幅器で決まるため、高周波では使用できません。

- 参考文献
No. | 記事 | 出版社 | 著者 | 特徴 | 備考 |
1 | トランジスタ技術(Dec. 1997) 高周波回路の設計と製作
第3回 電子電圧計アダプタの製作
| CQ出版社 | 鈴木 憲次 | トランジスタ増幅型 | |
2 | 実験と工作で学ぶ 初めてのエレクトロニクス(2001)
第2部 第12回 正弦波発振器と 交流電圧計の製作
| CQ出版社 | 黒田 徹 | 絶対値型 | |
3 | トラ技ORIGINAL No.3 試作研究 アナログIC/測定器 回路の誕生(1990)
第6章 AC-DCコンバータをつくる
| CQ出版社 | 松井 邦彦 | 絶対値型 | |
4 | 入門電気計測 (1980 第16刷) | 実教出版
| 西野 治 | 整流型交流電圧計の原理 ACプローブの原理 | |
増幅回路の簡易測定
- 入力インピーダンスの測定
最初、VR = 0の状態でのvoの読みをvo0とします。
このとき、voの波形が歪まないようvsのレベルを適当に調整しておきます。
次に、VRの値を調整して、voの読みがvo0の1/2になるようにします。
この状態になったとき、VRを回路から外して、VRの値を読み取れば
その値がZiとなります。

この方法は、viの信号レベルが低いため、測定器で直接測定出来ない場合でも、
voが測定可能レベルであるならば、使用することが出来ます。
- 出力インピーダンスの測定
最初、SWが解放状態でのvoの読みをvo0とします。
このとき、voの波形が歪まないようvsのレベルを適当に調整しておきます。
次に、SWを短絡してからVRの値を調整して、voの読みがvo0の1/2になるようにします。
この状態になったとき、VRを回路から外して、VRの値を読み取れば
その値がZoとなります。

- 電圧増幅度の測定
Ri1とRi2は減衰回路です。
Ri2 << Zi、ならば
vi = [Ri2 / (Ri1 + Ri2)] * vs
です。このとき出力voの波形が歪まないようにvsのレベルを適当に調整しておきます。
増幅度Avは
Av = vo / vi = vo /[{Ri2 / (Ri1 + Ri2)} * vs] = (vo / vs) * (Ri1 + Ri2) / Ri2
∴Av = (vo / vs) * (Ri1 / Ri2 + 1)
となります。

この方法は、viの信号レベルが低いため、測定器で直接測定出来ない場合でも、
voが測定可能レベルであるならば、使用することが出来ます。
周波数測定(工事中)
- 交流ブリッジ
- 吸収型周波数計
- 周波数カウンタ
-
共振周波数測定(工事中)
(周波数測定に統合?)
高周波測定(工事中)
- 高周波プローブ
- 終端型電力計
- SWR計
- アンテナインピーダンス計
- リターン・ロス・ブリッジ
- 電界強度計
- スプリアス測定
ノイズ・フィギュア(NF)測定(工事中)
S/N比測定(工事中)
歪率測定(工事中)
校正・標準器(工事中)