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平滑回路(コンデンサー入力形)の動作


ようやく本ページ完成。(2023/02/27)
  1. コンデンサー入力形平滑回路の構成



  2. 半波整流回路とコンデンサ入力形平滑回路

    1. 回路構成
    2. 半波整流回路とコンデンサー入力形平滑回路を組み合わせた回路を下図に示します。


    3. 半波整流回路と平滑回路の動作
    4. 時間領域で見た場合、コンデンサの放電により脈流を直流に近づけている
      とも言えますが、周波数領域で見たときは、コンデンサによるハイ・カット・フィルタ
      により交流分を取り除き、直流のみ通過させている、とも見れます。
      以下に、時間領域で見た場合の動作を記載します。
       Vi>VdcのときVi≦Vdcのとき
      電流の経路
      電圧波形
      動作説明 ダイオード:Dは導通して、入力電圧Viが出力電圧Vdcに
      現れると同時にコンデンサ:Cが充電されます。
      コンデンサはViの最大値Vmまで充電されます。
      ダイオード:Dは遮断して、出力電圧Vdcはコンデンサの
      放電波形となります。このときの波形の式は
      Vm × [1 - exp{-t/(CRL) } ]
      となりますので、時定数τは
      τ = C×RL
      となります。


  3. 全波整流回路とコンデンサ入力形平滑回路

    1. 回路構成
    2. 全波整流回路とコンデンサー入力形平滑回路を組み合わせた回路を下図に示します。


    3. 全波整流回路と平滑回路の動作
    4. 時間領域で見た場合、コンデンサの放電により脈流を直流に近づけている
      とも言えますが、周波数領域で見たときは、コンデンサによるハイ・カット・フィルタ
      により交流分を取り除き、直流のみ通過させている、とも見れます。
      以下に、時間領域で見た場合の動作を記載します。
       Vi>Vdcのとき−Vdc≦Vi≦Vdcのとき
      電流の経路
      電圧波形
      動作説明 ダイオード:D1,D3は導通して、入力電圧Viが出力電圧Vdcに
      現れると同時にコンデンサ:Cが充電されます。
      コンデンサはViの最大値Vmまで充電されます。
      ダイオード:D1〜D4は全て遮断して、出力電圧Vdcはコンデンサの
      放電波形となります。このときの波形の式は
      Vm × [1 - exp{-t/(CRL) } ]
      となりますので、時定数τは
      τ = C×RL
      となります。

      (上の表の右側から続きます)
       −Vi>Vdcのとき−Vdc≦−Vi≦Vdcのとき
      電流の経路
      電圧波形
      動作説明 ダイオード:D2,D4は導通して、入力電圧−Viが出力電圧Vdcに
      現れると同時にコンデンサ:Cが充電されます。
      コンデンサは−Viの最大値Vmまで充電されます。
      ダイオード:D1〜D4は全て遮断して、出力電圧Vdcはコンデンサの
      放電波形となります。このときの波形の式は
      Vm × [1 - exp{-t/(CRL) } ]
      となりますので、時定数τは
      τ = C×RL
      となります。

  4. リプルとリプル含有率

  5. 整流回路と平滑回路により交流を直流に変換しても、出力の直流電圧には若干の交流成分が
    残ってしまいます。この残留した交流分をリプルと呼びます。
    そして、どれくらい交流分が残留しているかを示す指標としてリプル含有率(またはリプル率)
    という概念があります。リプル含有率はもちろろん小さい程よい電源です。
    ところで、このリプル含有率の定義として、世の中には次のみっつがあるようです。

    ・リプル含有率の定義1: リプル成分の実効値/直流分(平均値)
    ・リプル含有率の定義2: リプル成分のpp値/直流分(平均値) ・・・(pp:peak to peak)
    ・リプル含有率の定義3: リプル成分のpp値/直流分(平均値)/(2√2) ・・・(pp:peak to peak)

    絵に書くと下図となります。
    VDCが直流分(平均値)、Vr(t)がリプル波形、儼rpはリプル成分のpp値です。


    どうも電源の設計を本業としない私には判りずらい世界ですが(^^;
    本来のリプル含有率の定義は定義1だと思います。
    しかし、リプル電圧の波形は正弦波でないことが多く、実効値で定義してしまうと
    測定も設計も容易ではありません。
    (とくに複数のスイッチング電源を使用するディジタル回路では
    たいへん複雑な波形となります。)
    このため、実務的には定義2が使用されているのではないかと思われますが、
    定義1と定義2とでは整合性がなく、例えば正弦波ならリプル率が倍以上異なってしまいます。
    定義3は、リプル波形が実際は正弦波ではないけれど、正弦波であると(大胆に?)近似して
    測定したpp値の1/(2√2)倍を実効値とみなそう、との考えだと思います。

  6. コンデンサ入力形平滑回路のリプル電圧(半波整流)

  7. リプル電圧の波形を下図のようにノコギリ波で近似します。


    VDCは直流電圧の平均値であり、
    VDC = Vm − (1/2)儼rp

    の関係となります。

    下図はコンデンサー放電時の動作です。
    充電時、コンデンサーは交流の最大値であるVmまで充電されます。
    この時、コンデンサーに蓄えられる電荷をQ[C]とします。


    放電が始まると、コンデンサーには負荷抵抗RLが接続されているので
    IDC = VDC/RL ・・・・・・(1)

    の直流電流IDCが流れ出します。
    ちなみに、VDC>>儼rpならば、IDCは一定と見なされます。
    この状態から時間がT経過するとコンデンサーから儔の電荷が流れ出し
    両端の電圧は儼rpだけ低下するので
    儔 = C * 儼rp ・・・・・・(2)

    の関係が成り立ちます。電流は単位時間当たりの電荷の移動 なので、(2)式を代入すると
    IDC = 儔/T = (C * 儼rp)/T ・・・・・・(3)

    となります。
    周波数: f = 1/T なので、上記の(3)式を変形すると
    儼rp = IDC/(f * C) ・・・・・・(4)

    この式に、(1)式を代入すると
    儼rp = VDC/(f * C * RL) ・・・・・・(5)

    を得ます。

    この式からリプル率含有率γは下記となります。(定義2)
    γ = 儼rp/VDC
    γ = 1/(f * C * RL) ・・・・・・(6)

    なお、のこぎり派の場合、実効値儼rp(rms)は 儼rp(rms)=(1/2√3)儼rp
    となるので、定義1によるリプル含有率は
    γ = 儼rp(rms)/VDC
    γ = 1/(2√3 * f * C * RL) ・・・・・・(7)

    となります。

  8. コンデンサ入力形平滑回路のリプル電圧(全波整流)

  9. コンデンサーの放電周期Tは1/2fとなりますので、
    リプル電圧儼rpは
    儼rp = VDC/(2f * C * RL)

    リプル含有率γ(定義2)は
    γ = 1/(2f * C * RL)

    リプル含有率γ(定義1)は
    γ = 1/(4√3 * f * C * RL)

    となるので、半波整流より小さくなります。



  10. O.H.Schadeのグラフによるリプル含有率の求め方

  11. リプル含有率を求める伝統的な(?)方法としてO.H.Schadeのグラフがあります。
    Rsはトランス二次側の巻き線抵抗、RLは等価的な負荷抵抗です。
    ω=2πfですが、fは商用電源の周波数です。リプル電圧の周波数ではありませんで、
    全波整流でも2倍にはしません。

    (参考文献7より引用)

    使い方は、まず半波/全波整流かの方式と、Rs/RLの値から
    該当する曲線を選びます。次にωCRLの値を下軸から選び
    曲線との交点から左軸のリプル含有率を求めます。

    このグラフからRs/RLの場合に求めたリプル含有率は、
    計算式(定義1)から求めたリプル含有率
    半波整流のγ= 1/(2√3 * f * C * RL)
    全波整流のγ= 1/(4√3 * f * C * RL)

    とほぼ一致するので、使い易い方で計算すれば良いと思います。

  12. 関連項目

    1. 変圧器の原理
    2. ダイオードの静特性
    3. 電子回路−整流回路の動作
    4. 電気回路−過渡現象−RC回路

  13. 参考文献

    1. 実用電源回路設計ハンドブック(2002 第21版) 第1章 整流回路の設計法、戸川治朗著、CQ出版社
    2. 電子回路の基礎マスター(2009 第1版第1刷)7-1 電源回路、船橋一郎、電気書院
    3. トランジスタ回路の実用設計(2005 初版)、渡辺明禎著、CQ出版社
    4. トランジスタの実用回路入門(2003 第1版第1刷) 3.2整流用ダイオード、富山忠宏、オーム社
    5. 電源回路の「しくみ」と「基本」(2012 初版 第1刷)第2章 トランスと整流回路だけの電源、渡辺昭二著、技術評論社
    6. 実用電子回路設計ガイド(2002 第16版)付録F.5 平滑回路とリップル含有率、見城尚志・高橋久共著、総合電子出版社
    7. Linear & Switching Voltage Regulator Handbook, Section 8
    8. トランジスタ技術 2000年5月号、第7章 基礎から学ぶ整流回路の設計、瀬川毅 CQ出版社
  14. 付録

    1. のこぎり波の実効値(rms)計算



    2. 緑色の線がノコギリ波の1周期です。これを関数で表すと、
      v(t) = −(儼rp/2)/(T/2)t + 儼rp/2
      ∴ v(t) = −(儼rp/T)t + 儼rp/2
      となるので、実効値(rms)を計算すると

      V(rms) = √[(2/T) * ∫0T/2 {(-儼rp/T)t + 儼rp/2}2 dt]
         = √[(2/T) * ∫0T/2 儼rp2{(-1/T)t + 1/2}2 dt]
         = √[(2/T) * 儼rp20T/2 {(-1/T)t + 1/2}2 dt]
         = √[(2/T) * 儼rp20T/2 {(1/T2)t2 - (1/T)t + 1/4} dt]
         = √{(2/T) * 儼rp2 [1/(3T2) * t3 - 1/(2T) * t2 + t/4]0T/2}
         = √{(2/T) * 儼rp2 [1/(3T2) * (T3/8) - 1/(2T) * (T2/4) + T/(2*4)]}
         = √{(2/T) * 儼rp2 [T/24 - T/8 + T/8]}
         = √{(2/T) * 儼rp2 * T/24}
         = √{儼rp2/12}
         = 儼rp/√12
       ∴V(rms) = 儼rp/(2√3)

      ちなみに、この計算は下記の波形で計算しても同じ結果となります。
      こちらの方が計算がいくらか楽です。



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