JH8CHUのホームページ> トランジスタ・パルス回路の実験 >ダイオードAND・ダイオードORの実験

ダイオードAND・ダイオードORの実験


本ページ作成。(2026/07/18)
  1. 実験の目的

  2. ダイオードAND回路とダイオードOR回路について設計と実験を行います。
    回路の設計にあたってはワースト・ケース(最悪値)を意識しながら
    前段と次段に接続するインバータの仕様通りに信号を伝達出来るようにします。
    (実験では次段にのみインバータを接続します。)

  3. 実験課題

  4. 下記の項目について測定と確認を行います。
    1. 入出力静特性測定
    2. B端子の電圧を0、2.0[V]、Vccに固定した状態で、A端子の電圧を可変して、
      出力であるY端子の電圧の変化を測定します。

    3. 出力にインバータとLEDを接続し論理動作の確認
    4. A、B、Y端子の状態をH/Lで表現した場合のAND回路、OR回路の動作について
      真理値表が理論通りとなることを確認します。

  5. 実験回路

    1. ダイオードAND


    2. ダイオードOR


  6. 実験回路の動作


  7. 実験回路の設計

    1. 信号の電圧レベル
    2. ダイオードANDとダイオードORの前後に トランジスタ・インバータの実験で使用した
      回路を接続することを想定します。
      ただし、出力に接続するインバータは1個のみとします。
      インバータ実験回路の電圧レベルは下図となります。


    3. インバータの仕様
    4. トランジスタ・インバータの実験 で設計したインバータの仕様です。


    5. D1、D2の選定
    6. 順方向電圧が小さいシリコン・ショットキー・バリア・ダイオードである
      BAT43を使います。データシートより順方向電流が2[mA]のときの
      電圧(VD)は最大(VD(max)):0.33[V]、 最小(VD(min)):0.26[V]です。

    7. AND回路のR選定
    8. 抵抗の最大誤差は5%とします。
      (1)出力が"L"のときの動作

      インバータの入力仕様 上IIL(max)=0なのでY端子から流れ込む電流は0です。
      なので、Rを流れる電流は全てD1を経由して前段インバータの出力に吸い込まれます。
      インバータの出力仕様 上IOL(max)=3[mA]ですので、この電流を超えないように
      Rを決めます。Rの電流が最大になるのは
      ・電源(Vcc)の電圧が最大(VCC(max))のとき。
      ・誤差で抵抗Rが最小(R*(1-0.05))になったとき。
      ・ダイオードの順方向電圧が最小(VD(min))になったとき。
      ・前段インバータの出力電圧が最小(VOL(min)=0)になったとき。

      なので、
      IOL(max) ≧ (VCC(max) - VOL(min) - VD(min)) / {R*(1-0.05)}
      ∴ R ≧ (VCC(max) - VOL(min) - VD(min)) / (IOL(max) * 0.95)
         = (5.25[V] - 0[V] - 0.26[V]) / (3[mA] * 0.95)
      ∴ R ≧ 1751[Ω]

      E6系列から選定して R = 2.2[kΩ]としました。

      (下図、再掲)


      なお、このときY端子の出力電圧が次段の インバータの閾値(VT(min))を
      下回っていることも確認する必要があります。
      Y端子の電圧(VYL(max))が最大になる条件は
      ・ダイオードの順方向電圧が最大(VD(max))のとき。
      ・前段のインバータの出力電圧が最大(VOL(max))のとき。

      ですが、インバータの仕様 からVOL(max)=0.4[V]なので
      VYL(max) = VOL(max) + VD(max)
         = 0.4[V] + 0.33[V]
         = 0.73[V]

      よって、
      VYL(max) < VT(min) = 1.0[V]

      となり、問題ないことが判りました。
      VYL(max)とVT(min)の電圧差=1.0-0.73=0.27[V]はL側ノイズ・マージンと なります。

      (2)出力が"H"のときの動作

      Rは一応決めましたが、Y端子の出力がHレベルのとき、出力電圧(VYH(min))が
      次段のインバータの閾値(VT(max)) を超えていることを確認する必要があります。
      ダイオードD1、D2はともにOFF状態です。
      なので、Y端子電圧が最小(VYH(min))になる条件は
      ・電源(Vcc)の電圧が最小(VCC(min))のとき。
      ・誤差で抵抗Rが最大{R*(1+0.05)}になったとき。
      ・次段インバータのH入力時の入力電流が最大(IIH(max))になったとき。

      となりますが、インバータの仕様 よりIIH(max)=0.38[mA]なので
      VYH(min) = VCC(min) - R*(1+0.05) * IIH(max)
         = 4.75[V] - 2.2[kΩ]*1.05 * 0.38[mA]
         = 3.87[V]

      よって、
      VYH(min) > VT(max) = 3.5[V]

      となり、問題ないことが判りました。
      VYH(min)とVT(max)の電圧差=3.87-3.5=0.37[V]はH側ノイズ・マージンと なります。

    9. OR回路のR選定
    10. 抵抗の最大誤差は5%とします。
      (1)出力が"H"のときの動作
      Y端子から流れ出る電流(IIH(max))は インバータの仕様から最大0.38[mA]です。
      一方、A端子またはB端子から流れ込む最大電流(IOH(max))は インバータの仕様から
      0.9[mA]なので、Rにはその差分である0.52[mA]まで流せそうに見えます。
      ところが、このままでは問題がありました。
      インバータのHレベルの最小電圧(VOH(min))は3.8[V]です。
      そしてダイオードの最大電圧(VD(max))は0.33[V]なので
      Y端子のHレベル電圧の最小値(VYH(min))は
      VYH(min) = VOH(min) - VD(max) = 3.8 - 0.33 = 3.47[V]

      となり、次段のインバータの閾値 (VT(max))である3.5[V]を下回ってしまい、
      ワーストケースの設計が成り立ちません(実際には動作すると思いますが)。

      そもそもVOH(min)が3.8[V]まで低下するのは、出力電流(IOH)を
      0.9[mA]流したときのワースト値です。もし、IOHを0.9[mA]より
      小さくするならばVOH(min)は3.8[V]まで低下しないはずです。
      そこで、Rに流す電流を0.12[mA]とすれば、AまたはB端子から流れ込む
      電流は最大0.50[mA]となるので、インバータの最小出力電圧(VOH(min))は
      VOH(min) = VCC(min) - RC * (1+0.05) * IOH(max)
         = 4.75 - 1[kΩ] * 1.05 * 0.50[mA] = 4.225[V]

      となり、ここからダイオードの電圧降下(VD(max)=0.33[V])を引くと3.895[V]となり
      インバータの閾値(VT(max))である3.5[V]に対し0.395[V]あるので
      この0.395[V]がH側ノイズ・マージンとなります。


      さてRに流す電流が0.12[mA](以下)と決まったのでRを計算します。
      Y端子の最大電圧(VYH(max))は
      VYH(max) = VOH(max) - VD(min)
           = VCC(max) - VD(min)
           = 5.25 - 0.26 = 4.99[V]

      であることから
      R ≧ VYH(max) / {0.12[mA] * (1-0.05)} = 4.99 / (0.12[mA] * 0.95) ≒ 43.8[kΩ]

      E6系列から選定して R = 47[kΩ]としました。

      再計算後の各部の電圧・電流は下図となります。


      (2)出力が"L"のときの動作

      Rは一応決めましたが、Y端子の出力がLレベルのとき、出力電圧(VYL(min))が
      次段のインバータの閾値 (VT(min))を下回っていることを確認する必要があります。
      まずインバータの仕様上、 次段のインバータから電流が流れ込むことはありません。
      そうするとY端子の電圧が最大(VYL(max))になる条件は
      ・前段のインバータ出力のLレベルが最大(VOL(max))のとき。
      ・ダイオードの順方向電圧が最小(VD(min))になったとき。

      となるので、
      VYL(max) = VOL(max) - VD(min)
         = 0.4[V] - 0.26[V]
         = 0.14[V]

      よって、
      VYL(max) < VT(min) = 1.0[V]

      となり問題、ないことが判りました。
      VYL(max)とVT(min)との電圧差1.0-0.14=0.86[V]はL側ノイズ・マージン となります。
      なお、このとき前段インバータから0.14[V] / 47[kΩ] = 3[μA](max)の電流が流れ出し
      R経由でグランドに流れるかもしれません。(問題ありません)


  8. 実験方法

    1. 入出力静特性測定(AND回路)
    2. (1)下図の回路を組み立てます。
      AND回路のダイオードはダイオード・ブリッジ・ボックス を流用しました。
      また、次段インバータのコレクタはLEDに変更しています。


      (2)VR 2kΩを調整しB端子の電圧(VB)を0[V]に設定します。
      (3)A端子にテスターを接続し、VR 5kΩを調整しA端子の電圧(VA)を 0〜Vccに0.5[V]毎に設定します。
      (4)テスターでY端子の電圧(VY)を測定し記録します。
        また、同時にLEDが点灯するかどうかも観察します。

      (5)B端子にテスターを接続し、VR 2kΩを調整しB端子の電圧(VB) を2.0[V]とVccに設定し、
        (4)〜(5)を繰返します。
        この際、B端子の電圧(VB)を2.0[V]に設定したとき、A端子の電圧が変わると
        最初に設定したB端子の電圧が変わることがあるので、毎回B端子の電圧も確認します。
        (A端子の電圧の変化によってB端子の電流が変わるからです。とくに、A端子とB端子の電圧が
         近いときにB端子の電圧が変化します。)

    3. 入出力静特性測定(OR回路)
    4. (1)下図の回路を組み立てます。
      OR回路のダイオードはダイオード・ブリッジ・ボックス を流用しました。
      また、次段インバータのコレクタはLEDに変更しています。


      (2)VR 2kΩを調整しB端子の電圧(VB)を0[V]に設定します。
      (3)A端子にテスターを接続し、VR 5kΩを調整しA端子の電圧(VA)を 0〜Vccに0.5[V]毎に設定します。
      (4)テスターでY端子の電圧(VY)を測定し記録します。
        また、同時にLEDが点灯するかどうかも観察します。

      (5)B端子にテスターを接続し、VR 2kΩを調整しB端子の電圧(VB) を2.0[V]とVccに設定し、
        (4)〜(5)を繰返します。
        この際、B端子の電圧(VB)を2.0[V]に設定したとき、A端子の電圧が変わると
        最初に設定したB端子の電圧が変わることがあるので、毎回B端子の電圧も確認します。
        (A端子の電圧の変化によってB端子の電流が変わるからです。とくに、A端子とB端子の電圧が
         近いときにB端子の電圧が変化します。)

    5. 論理動作の確認
    6. 入出力静特性測定の結果から、論理動作の真理値表を作ります。
      Y端子の電圧は0.4[V]以下なら"L"、3.8[V]以上なら"H"とします。
      手順はAND回路、OR回路共通です。

      (1)B端子が0[V]のとき"L"、A端子が0[V]のとき"L"とし、Y端子の電圧をグラフから読取りH/Lを判定。
      (2)B端子が0[V]のとき"L"、A端子がVccのとき"H"とし、Y端子の電圧をグラフから読取りH/Lを判定。
      (3)B端子がVccのとき"H"、A端子が0[V]のとき"L"とし、Y端子の電圧をグラフから読取りH/Lを判定。
      (4)B端子がVccのとき"H"、A端子がVccのとき"H"とし、Y端子の電圧をグラフから読取りH/Lを判定。

  9. 実験機材

    1. ダイオード・ブリッジ・ボックス
    2. 固定抵抗器: 2.2[kΩ]、47[kΩ]
    3. 簡易安定化電源 (5[V]端子)
    4. 可変抵抗器(2kΩB)
    5. 可変抵抗器(5kΩB)
    6. ディジタル・テスター
    7. トランジスタ・インバータの実験で使用した 自作電子ブロック回路
      ただし、コレクタ抵抗はLEDと電流制限抵抗(480Ω)に変更。

  10. 実験結果

    1. AND回路の入出力静特性の測定

    2. OR回路の入出力静特性の測定

    3. 論理動作の確認

  11. 考察

    1. AND回路の入出力静特性の測定

    2. OR回路の入出力静特性の測定

    3. 論理動作の確認
  12. 今後の課題

    1. トランジスタNAND回路の実験への応用
    2. トランジスタNAND回路の実験はトランジスタ・パルス回路の実験−
      DTL NADの実験に記載予定。

  13. 参考文献

    1. パルス回路の設計(昭和56年(1981) 第20版(改訂10版)) P-132〜137 インバータ、 猪飼國夫著、 CQ出版社

  14. 関連項目

    1. トランジスタ・パルス回路の解析− ダイオードAND・ダイオードOR
    2. トランジスタ・パルス回路の実験− トランジスタ・インバータ
    3. 簡易安定化電源 (5[V]端子)
    4. 可変抵抗器(2kΩB)
    5. 可変抵抗器(5kΩB)


JH8CHUのホームページ> トランジスタ・パルス回路の実験> ダイオードAND・ダイオードORの実験


Copyright (C)2026 Masahiro.Matsuda(JH8CHU), all rights reserved.