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ダイオードAND・ダイオードORの実験
本ページ作成。(2026/07/18)
実験の目的
ダイオードAND回路とダイオードOR回路について設計と実験を行います。
回路の設計にあたってはワースト・ケース(最悪値)を意識しながら
前段と次段に接続するインバータの仕様通りに信号を伝達出来るようにします。
(実験では次段にのみインバータを接続します。)
実験課題
下記の項目について測定と確認を行います。
- 入出力静特性測定
B端子の電圧を0、2.0[V]、Vccに固定した状態で、A端子の電圧を可変して、
出力であるY端子の電圧の変化を測定します。
- 出力にインバータとLEDを接続し論理動作の確認
A、B、Y端子の状態をH/Lで表現した場合のAND回路、OR回路の動作について
真理値表が理論通りとなることを確認します。
実験回路
- ダイオードAND

- ダイオードOR

実験回路の動作
- ダイオードAND
A端子かB端子(または両方)がLレベルになると、Lレベルになった方の
ダイオードが導通しY端子がLレベルになります。
A端子とB端子の両方がHレベルになると、ダイオードは両方ともOFFになります。
そうすると、Y端子は抵抗RでVccにプルアップされているためHレベルとなります。

入力レベルのパターン毎に出力レベルがどのようになるかを表現した表を
真理値表と言います。ANDの真理値表は下記です。
- ダイオードOR
A端子かB端子(または両方)がHレベルになると、Hレベルになった方の
ダイオードが導通しY端子がHレベルになります。
A端子とB端子の両方がLレベルになると、ダイオードは両方ともOFFになります。
そうすると、Y端子は抵抗RでGNDにプルダウンされているためLレベルとなります。

ORの真理値表は下記です。
ダイオードANDとダイオードORの解析についての詳細は、
トランジスタ・パルスの解析に記載した
ダイオードANDとダイオードOR
の項を参照してください。
実験回路の設計
- 信号の電圧レベル
ダイオードANDとダイオードORの前後に
トランジスタ・インバータの実験で使用した
回路を接続することを想定します。
ただし、出力に接続するインバータは1個のみとします。
インバータ実験回路の電圧レベルは下図となります。

- インバータの仕様
トランジスタ・インバータの実験
で設計したインバータの仕様です。
(1)電源電圧
Vcc: 5V±5%(5V±0.25V)
(2)出力電流(IO)
IOH(max): 0.9mA
IOL(max): 3mA
(3)入力電流(II)
IIH(max): 0.38mA
IIL(max): 0mA
(4)出力レベル(VO):
VOH(min): 3.8V
VOL(max): 0.4V
VOL(max)は事実上トランジスタ飽和時のコレクタ〜エミッタ間電圧で
決まってしまうので、データシートの値よりやや大きめにしてあります。
(5)閾値レベル(VT):
VT(max): 3.5V
VT(min): 1.0V
- D1、D2の選定
順方向電圧が小さいシリコン・ショットキー・バリア・ダイオードである
BAT43を使います。データシートより順方向電流が2[mA]のときの
電圧(VD)は最大(VD(max)):0.33[V]、
最小(VD(min)):0.26[V]です。
- AND回路のR選定
抵抗の最大誤差は5%とします。
(1)出力が"L"のときの動作

インバータの入力仕様
上IIL(max)=0なのでY端子から流れ込む電流は0です。
なので、Rを流れる電流は全てD1を経由して前段インバータの出力に吸い込まれます。
インバータの出力仕様
上IOL(max)=3[mA]ですので、この電流を超えないように
Rを決めます。Rの電流が最大になるのは
・電源(Vcc)の電圧が最大(VCC(max))のとき。
・誤差で抵抗Rが最小(R*(1-0.05))になったとき。
・ダイオードの順方向電圧が最小(VD(min))になったとき。
・前段インバータの出力電圧が最小(VOL(min)=0)になったとき。
なので、
IOL(max) ≧ (VCC(max) - VOL(min) - VD(min)) /
{R*(1-0.05)}
∴ R ≧ (VCC(max) - VOL(min) - VD(min)) /
(IOL(max) * 0.95)
= (5.25[V] - 0[V] - 0.26[V]) / (3[mA] * 0.95)
∴ R ≧ 1751[Ω]
E6系列から選定して
R = 2.2[kΩ]としました。
(下図、再掲)

なお、このときY端子の出力電圧が次段の
インバータの閾値(VT(min))を
下回っていることも確認する必要があります。
Y端子の電圧(VYL(max))が最大になる条件は
・ダイオードの順方向電圧が最大(VD(max))のとき。
・前段のインバータの出力電圧が最大(VOL(max))のとき。
ですが、インバータの仕様
からVOL(max)=0.4[V]なので
VYL(max) = VOL(max) + VD(max)
= 0.4[V] + 0.33[V]
= 0.73[V]
よって、
VYL(max) < VT(min) = 1.0[V]
となり、問題ないことが判りました。
VYL(max)とVT(min)の電圧差=1.0-0.73=0.27[V]はL側ノイズ・マージンと
なります。
(2)出力が"H"のときの動作

Rは一応決めましたが、Y端子の出力がHレベルのとき、出力電圧(VYH(min))が
次段のインバータの閾値(VT(max))
を超えていることを確認する必要があります。
ダイオードD1、D2はともにOFF状態です。
なので、Y端子電圧が最小(VYH(min))になる条件は
・電源(Vcc)の電圧が最小(VCC(min))のとき。
・誤差で抵抗Rが最大{R*(1+0.05)}になったとき。
・次段インバータのH入力時の入力電流が最大(IIH(max))になったとき。
となりますが、インバータの仕様
よりIIH(max)=0.38[mA]なので
VYH(min) = VCC(min) - R*(1+0.05) * IIH(max)
= 4.75[V] - 2.2[kΩ]*1.05 * 0.38[mA]
= 3.87[V]
よって、
VYH(min) > VT(max) = 3.5[V]
となり、問題ないことが判りました。
VYH(min)とVT(max)の電圧差=3.87-3.5=0.37[V]はH側ノイズ・マージンと
なります。
- OR回路のR選定
抵抗の最大誤差は5%とします。
(1)出力が"H"のときの動作
Y端子から流れ出る電流(IIH(max))は
インバータの仕様から最大0.38[mA]です。
一方、A端子またはB端子から流れ込む最大電流(IOH(max))は
インバータの仕様から
0.9[mA]なので、Rにはその差分である0.52[mA]まで流せそうに見えます。
ところが、このままでは問題がありました。
インバータのHレベルの最小電圧(VOH(min))は3.8[V]です。
そしてダイオードの最大電圧(VD(max))は0.33[V]なので
Y端子のHレベル電圧の最小値(VYH(min))は
VYH(min) = VOH(min) - VD(max) = 3.8 - 0.33 = 3.47[V]
となり、次段のインバータの閾値
(VT(max))である3.5[V]を下回ってしまい、
ワーストケースの設計が成り立ちません(実際には動作すると思いますが)。

そもそもVOH(min)が3.8[V]まで低下するのは、出力電流(IOH)を
0.9[mA]流したときのワースト値です。もし、IOHを0.9[mA]より
小さくするならばVOH(min)は3.8[V]まで低下しないはずです。
そこで、Rに流す電流を0.12[mA]とすれば、AまたはB端子から流れ込む
電流は最大0.50[mA]となるので、インバータの最小出力電圧(VOH(min))は
VOH(min) = VCC(min) - RC * (1+0.05) * IOH(max)
= 4.75 - 1[kΩ] * 1.05 * 0.50[mA] = 4.225[V]
となり、ここからダイオードの電圧降下(VD(max)=0.33[V])を引くと3.895[V]となり
インバータの閾値(VT(max))である3.5[V]に対し0.395[V]あるので
この0.395[V]がH側ノイズ・マージンとなります。

さてRに流す電流が0.12[mA](以下)と決まったのでRを計算します。
Y端子の最大電圧(VYH(max))は
VYH(max) = VOH(max) - VD(min)
= VCC(max) - VD(min)
= 5.25 - 0.26 = 4.99[V]
であることから
R ≧ VYH(max) / {0.12[mA] * (1-0.05)} = 4.99 / (0.12[mA] * 0.95) ≒ 43.8[kΩ]
E6系列から選定して
R = 47[kΩ]としました。
再計算後の各部の電圧・電流は下図となります。

(2)出力が"L"のときの動作

Rは一応決めましたが、Y端子の出力がLレベルのとき、出力電圧(VYL(min))が
次段のインバータの閾値
(VT(min))を下回っていることを確認する必要があります。
まずインバータの仕様上、
次段のインバータから電流が流れ込むことはありません。
そうするとY端子の電圧が最大(VYL(max))になる条件は
・前段のインバータ出力のLレベルが最大(VOL(max))のとき。
・ダイオードの順方向電圧が最小(VD(min))になったとき。
となるので、
VYL(max) = VOL(max) - VD(min)
= 0.4[V] - 0.26[V]
= 0.14[V]
よって、
VYL(max) < VT(min) = 1.0[V]
となり問題、ないことが判りました。
VYL(max)とVT(min)との電圧差1.0-0.14=0.86[V]はL側ノイズ・マージン
となります。
なお、このとき前段インバータから0.14[V] / 47[kΩ] = 3[μA](max)の電流が流れ出し
R経由でグランドに流れるかもしれません。(問題ありません)
- 入出力静特性測定(AND回路)
(1)下図の回路を組み立てます。
AND回路のダイオードはダイオード・ブリッジ・ボックス
を流用しました。
また、次段インバータのコレクタはLEDに変更しています。

(2)VR 2kΩを調整しB端子の電圧(VB)を0[V]に設定します。
(3)A端子にテスターを接続し、VR 5kΩを調整しA端子の電圧(VA)を
0〜Vccに0.5[V]毎に設定します。
(4)テスターでY端子の電圧(VY)を測定し記録します。
また、同時にLEDが点灯するかどうかも観察します。
(5)B端子にテスターを接続し、VR 2kΩを調整しB端子の電圧(VB)
を2.0[V]とVccに設定し、
(4)〜(5)を繰返します。
この際、B端子の電圧(VB)を2.0[V]に設定したとき、A端子の電圧が変わると
最初に設定したB端子の電圧が変わることがあるので、毎回B端子の電圧も確認します。
(A端子の電圧の変化によってB端子の電流が変わるからです。とくに、A端子とB端子の電圧が
近いときにB端子の電圧が変化します。)
- 入出力静特性測定(OR回路)
(1)下図の回路を組み立てます。
OR回路のダイオードはダイオード・ブリッジ・ボックス
を流用しました。
また、次段インバータのコレクタはLEDに変更しています。

(2)VR 2kΩを調整しB端子の電圧(VB)を0[V]に設定します。
(3)A端子にテスターを接続し、VR 5kΩを調整しA端子の電圧(VA)を
0〜Vccに0.5[V]毎に設定します。
(4)テスターでY端子の電圧(VY)を測定し記録します。
また、同時にLEDが点灯するかどうかも観察します。
(5)B端子にテスターを接続し、VR 2kΩを調整しB端子の電圧(VB)
を2.0[V]とVccに設定し、
(4)〜(5)を繰返します。
この際、B端子の電圧(VB)を2.0[V]に設定したとき、A端子の電圧が変わると
最初に設定したB端子の電圧が変わることがあるので、毎回B端子の電圧も確認します。
(A端子の電圧の変化によってB端子の電流が変わるからです。とくに、A端子とB端子の電圧が
近いときにB端子の電圧が変化します。)
- 論理動作の確認
入出力静特性測定の結果から、論理動作の真理値表を作ります。
Y端子の電圧は0.4[V]以下なら"L"、3.8[V]以上なら"H"とします。
手順はAND回路、OR回路共通です。
(1)B端子が0[V]のとき"L"、A端子が0[V]のとき"L"とし、Y端子の電圧をグラフから読取りH/Lを判定。
(2)B端子が0[V]のとき"L"、A端子がVccのとき"H"とし、Y端子の電圧をグラフから読取りH/Lを判定。
(3)B端子がVccのとき"H"、A端子が0[V]のとき"L"とし、Y端子の電圧をグラフから読取りH/Lを判定。
(4)B端子がVccのとき"H"、A端子がVccのとき"H"とし、Y端子の電圧をグラフから読取りH/Lを判定。
実験機材
- ダイオード・ブリッジ・ボックス
- 固定抵抗器: 2.2[kΩ]、47[kΩ]
- 簡易安定化電源 (5[V]端子)
- 可変抵抗器(2kΩB)
- 可変抵抗器(5kΩB)
- ディジタル・テスター
- トランジスタ・インバータの実験で使用した
自作電子ブロック回路
ただし、コレクタ抵抗はLEDと電流制限抵抗(480Ω)に変更。
実験結果
- AND回路の入出力静特性の測定
(1)VB = 0[V]

(2)VB = 2.0[V]

(3)VB = Vcc = 4.85[V]
VYは4.3[V]で頭打ちになる。

- OR回路の入出力静特性の測定
(1)VB = 0[V]

(2)VB = 2.0[V]

(3)VB = Vcc = 4.85[V]

- 論理動作の確認
(1)ダイオードAND回路の論理動作
| A | B | Y |
LED |
| L | L | L | 消灯 |
| L | H | L | 消灯 |
| H | L | L | 消灯 |
| H | H | H | 点灯 |
(2)ダイオードOR回路の論理動作
| A | B | Y |
LED |
| L | L | L | 消灯 |
| L | H | H | 点灯 |
| H | L | H | 点灯 |
| H | H | H | 点灯 |
考察
- AND回路の入出力静特性の測定
Y端子の電圧は、A端子とB端子の低い方の電圧より約0.2[V]高い電圧となりました。
このことからダイオードAND回路は一種の最小値回路として動作していることが解ります。
0.2[V]の電圧差はダイオードの順方向電圧です。
なお、A端子とB端子ともVccのとき、Y端子の電圧は4.3[V]であたまうちになりました。
これはふたつのダイオードがともにOFFになったとき、抵抗Rから次段インバータに流れる
電流によりRに電圧降下が発生するからです。
- OR回路の入出力静特性の測定
Y端子の電圧は、A端子とB端子のより約0.2[V]低い電圧となりました。
このことからダイオードOR回路は一種の最大値回路として動作していることが解ります。
0.2[V]の電圧差はダイオードの順方向電圧です。
- 論理動作の確認
ダイオードAND回路、ダイオードOR回路ともそれぞれ論理素子のANDとORとして
動作していることを確認しました。
今後の課題
- トランジスタNAND回路の実験への応用
トランジスタNAND回路の実験はトランジスタ・パルス回路の実験−
DTL NADの実験に記載予定。
参考文献
- パルス回路の設計(昭和56年(1981) 第20版(改訂10版)) P-132〜137 インバータ、
猪飼國夫著、 CQ出版社
関連項目
- トランジスタ・パルス回路の解析−
ダイオードAND・ダイオードOR
- トランジスタ・パルス回路の実験−
トランジスタ・インバータ
- 簡易安定化電源 (5[V]端子)
- 可変抵抗器(2kΩB)
- 可変抵抗器(5kΩB)
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