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DTLによるNANDの実験


本ページ作成。(2026/08/22)

  1. 実験の目的

  2. DTL(Diode Transister Logic)の構成にて実現したNAND回路を設計し、
    実際に組み立て、その入出力特性を測定し、設計した通りに動作することを
    確認します。設計にあたってはワーストケース(最悪値)設計を意識します。
    また、NAND回路としての論理動作についても確認します。

  3. 実験課題

  4. 下記の項目について測定を行いDTL NAND回路の動作を確認します。
    1. 入出力静特性測定
    2. 論理動作の確認
    3. パルス発生器から矩形波を入力して出力を観測

  5. 実験回路

  6. 下図において、回路図表記とシンボル表記は論理素子としては等価な機能です。
    1. 回路図表記


    2. シンボル表記


  7. 回路の動作

  8. 基本的にはダイオードによるAND回路トランジスタ・インバータを接続したものです。
    端子A、端子Bのどちらか、または両方が"L"レベルになるとX点のレベルは"L"になり、
    更にトランジスタ・インバータにより論理が反転されるので、端子Yは"H"レベルになります。
    端子A、端子Bの両方が"H"になるとX点のレベルはプルアップ抵抗:RB1により
    "H"になります。更にトランジスタ・インバータにより論理が反転されるので、
    端子Yは"L"レベルになります。以上の動作をまとめると下図の真理値表となります。
    A  B  Y 
    LLH
    LHH
    HLH
    HHL

    更に詳細な動作については、トランジスタ・パルス回路の DTLによるNAND
    参照してください。

  9. 実験回路の設計

    1. 信号の電圧レベル
    2. 本来であれば、最初に論理素子間の電圧レベルの仕様を決めます。
      しかし、全ての仕様を決めてから回路を設計するのはなかなか困難で
      結果的には、今回は下図のようになりました。


    3. NANDの電気的仕様

    4. D1〜D4の選定と閾値の計算
    5. 結論としてはD1〜D4の全てに汎用品の1S1588を使いましたが、
      D1、D2に1S1588を使うか、BAT43を使うかは迷いました。
      問題は閾値がいくらになるかです。そこで、閾値の違いを計算してみました。
      閾値の上限(VT(max))と下限(VT(min))は下記の式で計算します。
      VD(max)はダイオード:D3、D4(1S1588)の順方向電圧です。
      VT(max) = VD(max)*2 + VBON - VD1(min)

      VT(min) ≦ VBOFF - VD2(max) + VD(min) * 2

      トランジスタが確実にONとなるベース電圧(VBON)は0.9[V]、
      トランジスタが確実にOFFとなるベース電圧(VBOFF)は0.4[V]で計算します。

      (1)D1、D2がBAT43の場合
      VT(max) = 0.9[V]*2 + 0.9[V] - 0.26[V] = 2.44[V]
      VT(min) ≦ 0.4[V] - 0.33[V] + 0.4[V]*2 = 0.87[V]

      (2)D1、D2が1S1588の場合
      VT(max) = 0.9[V]*2 + 0.9[V] - 0.4[V] = 2.3[V]
      VT(min) ≦ 0.4[V] - 0.9[V] + 0.4[V]*2 = 0.3[V]

      両者を比較すると、とくに1S1588ではVT(min)が0.3[V]と低いため
      BAT43の方が良いように見えます。
      しかし、VD2(max)が0.9[V]で同時にVD(min)が0.4[V]になるような状況は
      考えずらく、その差はせいぜい0.2〜0.3[V]程度でしょう。
      その場合、VT(min)は0.5〜0.9[V]になるので、D1、D2に1S1588を
      使用しても誤動作する可能性はないと思われます。
      このように、ワーストケース設計を徹底すると現実的な設計が難しくなることが
      ときどき起こります。その場合は、合理的な理由を以て条件を緩和することが
      必要になるでしょう。(もちろん設計に困っただけの理由で緩和するのは論外です。)(^^;

    6. Rcの選定
    7. インバータ回路と同様に次の式で範囲が決まります。
      VCC(max) / [{IC(max) - IOL(max)}*(1-α)] ≦ Rc ≦ (VCC(min) - VOH(min)) / {IOH(max)*(1+α)}・・・・(1)

      今回の回路は、インバータの実験のときと違い、入力電流のIIH(max)は ほとんど0なので、
      IOH(max)も0で計算しても動作します。そうすると、不等式の後半は不要なので
      VCC(max) / [{IC(max) - IOL(max)}*(1-α)] ≦ Rc

      となります。ただし、今回は仕様で、IOH(max)=0.1mA、VOH(min)=3.0Vと 決めたので、
      やはり(1)式で計算することにします。仕様で与えられた値を代入すると
      5.25[V] / [{10[mA] - 8[mA]}*(1-0.05)] ≦ Rc ≦ (4.75[V] - 3.0[V])/(0.1[mA] * 1.05)
      ∴ 2,764[Ω] ≦ Rc ≦ 16,666[Ω]

      となります。E6系列から選定して RC = 10[kΩ]としました。

    8. RB1の選定
    9. 以下の式で範囲が決まります。
      RB1 ≧ {VCC(max) - VD2(min)} / {(1-α) * IIL(max)}

      値を代入すると
      RB1 ≧ (5.25[V] - 0.4[V]) / (0.95 * 0.4[mA]) = 12,763[Ω]

      となりますが、この抵抗を大きくしてしまうと、後述のRB2の値も大きくなって
      しまいます。RB2が大きくなると蓄積電荷によりトランジスタがOFFになる
      時間遅れが大きくなります。ので、なのでなるべく12,763[Ω]に近い値を選びます。
      E6系列から選定して10[kΩ]と 3.3[kΩ]の直列接続とし、
      RB1 = 13.3[kΩ]としました。

    10. RB2の選定
    11. 次の式で範囲が決まります。
      IC(max) / hFE(min) ≦ (VCC(min) - VD(max)*2 - VBON) / {(1+α) * RB1} - VBON / {(1-α) * RB2}

      仕様で与えられた値を代入すると
      10[mA] / 120 ≦ (4.75[V] - 0.9[V]*2 - 0.9[V]) / (1.05 * 13.3[kΩ]) - 0.9[V] / (0.95 * RB2)

      計算すると
      0.083[mA] ≦ 0.147[mA] - 0.95 / RB2

      ∴ RB2 ≧ 14,844[Ω]

      E6系列から選定して RB2 = 15[kΩ]としたいところですが
      手持ち部品の関係で RB2 = 22[kΩ]としました。
      念のためこれらの値を不等式に代入してみると、不等式が
      成り立っていることが確認出来ます。

    12. 入力電流の計算
    13. (1)HレベルのときはダイオードがOFFになるので電流はほとんど流れません。 (IIH(max)≒0)

      (2)Lレベルのときの最大電流(IIL(max))ですが、
      次の式となります。
      IIL(max) ≒ {VCC(max) - VD2(min)} / {(1-α) * RB1}

      値を代入して
      IIL(max) = (5.25[V] - 0.4[V]) / (0.95 * 13.3[kΩ])
      ∴ IIL(max) ≒ 0.384[mA]

      この結果、ファンアウト(1個の論理素子が何個の論理素子をドライブできるか)は
      ファンアウト = IOL(max) / IIL(max) = 8[mA] / 0.384[mA] ≒ 20.8[個]

      なので、ファンアウトは20個ということになります。

  10. 実験方法

    1. 入出力静特性測定
    2. (1)下図の回路を組み立てます。
       (本回路においてはA端子をopenにするとVA="H"と等価になります。)


      (2)ディジタル・テスターでVBを測定しながらVR 2kΩを調整し 電圧VBを設定します。
      (3)ディジタル・テスターでVYを測定します。

      (4) (2)〜(3)を繰り返し、VBを0[V]からVccまで変化させ、
        VBとVYの関係をグラフにします。

    3. 論理動作の確認
    4. A端子およびB端子をopen(="H")またはGNDに接続(="L")し、Y端子の電圧を
      測定します。この際、Y端子が0.4[V]以下なら"L"、3.0V[V]以上なら"H"と判定し
      真理値表のYの値を記録します。
      A  B  Y 
      LL 
      LH 
      HL 
      HH 

    5. 波形測定
    6. (1)下図の回路を組み立てます。


      (2)矩形波発振器から0-5Vのレベルで、500Hz程度の矩形波を端子Bに加えます。
      (3)オシロスコープで端子Bと端子Yの波形を観測します。
      (4)端子Aをopen(="H")にしたり、グランドに接続(="L")したりしながら、
       端子Yの波形の変化を観測します。

  11. 実験機材

    1. 電子ブロック
    2. 簡易安定化電源 (5[V]端子)
    3. 可変抵抗器(2kΩB)
    4. ディジタル・テスター
    5. オシロスコープ
    6. 矩形波発振器

  12. 実験結果

    1. 入出力静特性の測定
    2. 閾値は0.8〜1.0[V]。傾斜はトランジスタ・インバータより急峻。


    3. 論理動作の確認
    4. Yの欄(赤色)が測定結果。
      A  B  Y 
      LL H
      LH H
      HL H
      HH L

    5. 波形測定
    6. (1)端子A="H"

      上:VB 5V/div、0.5ms/div
      下:VY 5V/div、0.5ms/div

      (1)端子A="L"

      上:VB 5V/div、0.5ms/div
      下:VY 5V/div、0.5ms/div

  13. 考察

    1. 入出力静特性の測定

    2. 論理動作の確認

    3. 波形測定


  14. 今後の課題

    1. トランジスタNAND回路の実験への応用
    2. NAND回路を組み合わせた論理機能(記憶素子、加算器など)の実現

  15. 参考文献

    1. パルス回路の設計(昭和56年(1981) 第20版(改訂10版)) P-132〜137 インバータ、 猪飼國夫著、 CQ出版社
    2. 解析ディジタル回路(昭和56年(1981) 第11版)、岡村迪夫著、CQ出版社

  16. 関連項目

    1. トランジスタ・パルス回路の解析− トランジスタのスイッチ動作の基本
    2. トランジスタ・パルス回路の解析− トランジスタ・インバータ
    3. トランジスタ・パルス回路の実験− トランジスタ・スイッチとLEDの点灯/消灯制御実験
    4. トランジスタ・パルス回路の実験− スピードアップ・コンデンサの実験
    5. 簡易安定化電源 (5[V]端子)
    6. 可変抵抗器(2kΩB)
    7. 矩形波発振器


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