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エミッタフォロワーの実験
本ページ作成(2015/04/25)
出力コンデンサ(Co)の設計の計算式を修正しました。(2024/10/01)
実験の目的
エミッターフォロワー(コレクタ接地増幅回路)を動作させ、
回路の特徴であるインピーダンス変換作用について確認します。
実験課題
下記の項目について簡易測定を行い、設計値と測定値を比較します。
- 直流動作点
- 電圧増幅度
- 入力インピーダンス
- 出力インピーダンス
実験回路

回路の動作
トランジスタのコレクタを共通端子とした増幅回路です。
コレクタは直接Vccに接続しますが、Vccは交流的にはグランド(GND)と同電位
なので、コレクタ接地(共通)回路となります。
出力はエミッタの抵抗REの両端から取り出しますが
REは同時に直流的な負帰還をかける動作もしています。
また、実は同時に交流負帰還もかかっています。
単純に考えると、voはviより直流分のVBE(=約0.7V)分、電圧が低くなるだけなので
電圧増幅度はほぼ1となります。

実験回路の設計
まず、直流動作点を決めるために、バイアス回路の設計をします。
- 設計条件
(1)電源は乾電池1.5V×4本=6Vとします。
(2)コレクター電流:Ic=3mA
(3)エミッタ抵抗REの両端の電圧:VE=3V
(4)トランジスタは2SC1815のYランクを使う(データシートよりhFE=120〜240)
(5)増幅する周波数帯域の最低周波数は50Hz
(6)信号源の出力インピーダンスは0.91[kΩ]
(7)負荷側インピーダンスは1[kΩ]。
ドライブ能力を持たせるためにコレクタ電流をやや多めの3mAとしました。
また、出力電圧はREから取り出すため、電源電圧Vccの約半分の3Vとしました。

- バイアス回路の設計
(1)REの計算
RE = VE/IE ≒ VE/Ic = 3[V]/3[mA] = 1[kΩ]
∴RE =1[Ω]
(2)R1、R2の計算
VBEを0.7[V]とすると、VE=3[V]としたので、R2の両端の電V1は
3.7[V]となります。
一方、R1、R2に流すブリーダー電流はIBの約10倍に設定します。
トランジスタのhFEを120(min)とすれば、
IB = Ic/hFE = 3[mA]/120 = 25[μA]
なので、ブリーダ電流をIBの10倍の0.25[mA]とすれば、
R1 + R2 = Vcc/(ブリーダ電流) = 6[V]/0.25[mA] = 24[kΩ]
よって、
R2 ≒ 3.7[V]/6[V] * 24[kΩ] = 14.8[kΩ]
R1 = 24[kΩ] - 14.8[kΩ] = 9.2[kΩ]
実際は、E-6系列より選定して、R1 = 10[kΩ]
R2はE-6系列より選定するとR2 = 15[kΩ]となりますが、
手持ち部品の都合でR2 = 22[kΩ]
とします。
以上、選定した抵抗の定数から、改めて各部の電圧、電流を
計算し直してみると、
ベースの電圧:V1 ≒ Vcc * R2/(R1 + R2) = 6[V] * 22[kΩ]/(10[kΩ] + 22[kΩ]) = 4.1[V]
エミッタの電圧:VE = V1 - VBE ≒ 4.1 - 0.7 = 3.4[V]
コレクタ電流:Ic ≒ エミッタ電流:IE = VE/RE
= 3.4[V]/1[kΩ] = 3.4[mA]
となります。

- 増幅回路の等価回路
交流の等価回路ではカップリング・コンデンサのCi、Coは
短絡して考えます。増幅する周波数帯ではコンデンサのリアクタンスが十分小さく
なるように値を決めるため、交流的には短絡して考えるのですが、
その値を決めるためには、入力インピーダンスの計算が必要なので、
手順が前後するように見えますが、まず、増幅回路の等価回路から
2個のコンデンサCi、Coを短絡した下図の等価回路で考えます。
トランジスタはコレクタ接地の
小信号簡略等価回路に置き換え、
また、Vccとグランド(GND)も交流的には同電位なので接続してあります。

計算にあたってhic(=hie)の値が必要になりますが、
概算式である
hie = β/(40 * Ic)
の式を用います。
バイアス回路の設計の項で記述したように、今回の実験回路では、Ic =3.4[mA]です。
また、本実験に使用するトランジスタのβは
静特性の測定実験で測定した値を
使用すると175になりますので
hie = β/(40 * Ic) = 175/(40 * 0.0034) = hic
∴hic=1287[Ω]
となります。
- 入力インピーダンスの計算
導出は少し面倒ですが下記の式で与えられます。(β+1≒βでの近似も可)
Zi = RB//[hic + (β + 1)*R]
設計条件より、負荷回路のインピーダンスは1[kΩ]としましたので、
Zi = (10[kΩ]//22[kΩ])//{1287 + (175 + 1)*(1[kΩ]//1[kΩ])}
= (6.9[kΩ])//{1287 + 176*0.5[kΩ]}
= (6.9[kΩ])//{1287 + 88[kΩ]}
= (6.9[kΩ])//(89.3[kΩ])
∴Zi = 6.4[kΩ]
- 出力インピーダンスの計算
導出は少し面倒ですが下記の式で与えられます。(β+1≒βでの近似も可)
Zo = RE//{(hic + ρ)/(β + 1)}
設計条件より、信号源インピーダンスは0.91[kΩ]としましたので、
ρ = R1//R2//Rs = 10[kΩ]//22[kΩ]//0.91[kΩ]
= 0.80[kΩ]
Zo = 1[kΩ]//{(1287[Ω] + 0.8[kΩ])/(175 + 1)}
= 1[kΩ]//{2087[Ω]/176}
= 1[kΩ]//{11.9[Ω]}
∴Zo = 11.8[Ω]
となります。
- 増幅度の計算
導出は少し面倒ですが下記の式で与えられます。(β+1≒βでの近似も可)
Av = (β+1) * R/[(β+1) * R + hic]
Av = (175 + 1)*0.5[kΩ]/{(175 + 1)*0.5[kΩ] + 1287[Ω]}
= 176*0.5[kΩ]/{176*0.5[kΩ] + 1287[Ω]}
= 88[kΩ]/{88[kΩ] + 1287[Ω]}
= 88[kΩ]/{89.3[kΩ]}
= 0.985
∴Av = 0.985 ≒ 1
となります。
- コンデンサの容量の決定
(1)実験回路の等価回路
トランジスタをエミッタ接地の
小信号簡略等価回路に置き換え、
また、VccとGNDは交流的には同電位であることから接続してしまうと
実験回路の小信号等価回路は下図のようになります。

(2)入力コンデンサ(Ci)
入力インピーダンス:Ziが上記で表されますので、入力コンデンサ:CiとZiは
下図のようにローカット・フィルター(LCF)を構成します。
この影響をなくすためには、フィルタのカットオフ周波数が
信号の最低周波数より十分小さくなるようにCiを決定します。

信号の最低周波数:fsを50Hzとすれば
Ci >> 1/(2π*fs*Zi)
の関係式より
Ziの値は入力インピーダンスの項で計算したように
Zi = 6.4[kΩ]
でしたので、
Ci >> 1/(2π*fs*Zi) = 1/(2π*50*6400)=0.5[μF]
電解コンデンサは経年変化により静電容量が減少しますので、
少なくとも計算値の2倍は欲しいところです。
今回は、計算値より大き目で、かつエミッタ接地増幅回路と同じ値とし
10[μF]としました。
(3)出力コンデンサ(Co) ---(2024/10/01 修正)
Coの値を決めるためには本増幅回路の次段の回路の入力抵抗:RLが
決まらないと計算出来ません。

ここでは、RL=1[kΩ]と仮定して、計算すると
Co >> 1/(2π*fs*RL) = 3.2[μF]
Co >> 1/{2π*fs*(Zo + RL)}
Zo << RLなので
Co >> 1/(2π*fs*RL) ≒ 3.2[μF]
となります。
しかし、今回の実験では出力インピーダンスZoを測定する際には、
RLが1[kΩ]より小さくなることが予想されます。
そこで、Co=470[μF]と大きなコンデンサをつけたとき、
逆に、カットオフ周波数が50[Hz]となるRLを計算すると
RL = 1/(2π*fs*Co) = 1/(2π*50*470[μF])
= 6.8[Ω]
となり、1[kΩ]よりかなり小さくなります。
実際には、負荷抵抗RLをあまり小さくすると出力がクリップするため
6.8[Ω]よりかなり大きな値しかとれなので、Co=470[μF]で十分です。
実験方法
信号源としては、トランス・ボックス
を使用します。
従って、周波数は(東日本では)50Hzになります。
トランス・ボックスの出力電圧がそのままでは電圧が高すぎるので
抵抗器により分圧し、約600[mV](rms)まで減衰させます。
分圧比は10:1ですが、消費電力が大きくならないように、
分圧抵抗の値をあまり小さく出来ません。
このため、増幅回路の入力インピーダンスZiに対して、信号源の内部抵抗が
無視できない大きさとなります。
しかし、分圧比が小さいことから、逆に増幅回路の入力電圧viは直接テスターで
測定出来るレベルとなります。
測定には可変抵抗器と交流電圧計とを使用して、簡易測定法により、
入力インピーダンス、出力インピーダンス、電圧増幅度をそれぞれ測定します。
- 電子ブロックの配置

- 直流動作点の測定
ディジタルテスターの直流電圧測定レンジで、下図に示すようにVCE、VE、
V1、VBEを測定します。IcはVEとREの値から
Ic ≒ IE = VE/REの式により求めます。
また、電源電圧Vccも正確に6.0[V]ではないので、測定しておきます。

- 電圧増幅度の測定
(1)下図の測定回路を組立てます。

(2)viの値を読みます。
(3)voの値を読みます。
(4)viの値とvoの値から電圧増幅度Av=vo/viを求めます。
- 入力インピーダンスの測定
増幅回路における入力インピーダンスの簡易測定法によります。
(1)下図の測定回路を組立てます。
負荷抵抗RLの値が入力インピーダンスZiに影響するので、増幅回路の出力には
1[kΩ]の抵抗器を接続します。
また、信号源インピーダンスが大きいと測定誤差になるため、分圧抵抗は
1[kΩ]と100[Ω]としました。

(2)VRを0[Ω]の状態にしてvoの値を読み取ります。
この時のvoの読みをvo0とします。
(3)voの値が1/2*vo0となるようにVRを調整します。
(4)VRを回路から外し、テスターの抵抗レンジでVRの値を読み取ります。
この時のVRの値がZiとなります。
- 出力インピーダンスの測定
増幅回路における出力インピーダンスの簡易測定法によりますが
負荷が重たくなると、出力波形がクリップしてしまいます。
そこで下図のようにして測定しました。
まず、SWが開状態のときのvoの読みをvo0とします。
次にSWを閉状態でVRを調整したとき、VRの値が50*Zoなら、voの読みはvo0*(50/51)となります。
よってこのときのVRの抵抗値を読み取って、50で割れば、それはZoになります。
なお、Zoは信号源のインピーダンスが影響します。ここでは10[kΩ]//1[kΩ]=0.91[kΩ]となります。

(1)下図の測定回路を組立てます。

(2)SWを開放の状態にしてvoの値を読み取ります。
この時のvoの読みをvo0とします。
(3)SWを閉じてからvoの値が(50/51)*vo0となるようにVRを調整します。
(4)VRを回路から外し、テスターの抵抗レンジでVRの値を読み取ります。
この時のVRの値を50で割るとZoとなります。
なお、SWについては、実際は配線を取り外すことにより解放しました。
実験機材
- 電子ブロック
- トランス・ボックス
- 5kΩの可変抵抗器
- 20kΩの可変抵抗器
- 固定抵抗器:10kΩ(1%)、1kΩ(1%)、10Ω(1%)
- ディジタル・テスター
- 乾電池:1.5V×4本、乾電池ホルダー
- 配線材
実験結果
- 直流動作点の測定
下図に測定結果を示します。
白色の吹き出しで計算値、黄色の吹き出しで測定値を表しました。

- 増幅度の測定
viの値 [V] | voの値 [V]
| Av (測定値) | Av (計算値)
| 測定値/計算値 (%) | 備考 |
0.541 | 0.523 | 0.967
| 0.985 | -1.8 | |
Av(測定値) = vo/vi
- 入力インピーダンスの測定
VRの値 [Ω] | voの値 [V] | 備考 |
0 | 0.656 | voのこの値がvo0 |
6180 | 0.328 | (vo=1/2 * vo0) |
以上の測定結果より、
Zi = 6180[Ω]
Ziの計算値と測定値を比較すると、
Zi (計算値) [Ω] | Zi (測定値) [Ω]
| 測定値/計算値 (%) | 備考 |
6400 | 6180 | -3.4 | |
- 出力インピーダンスの測定
VRの値 [Ω] | voの値 [V] | 備考 |
∞ (SW:開放) | 0.520 | voのこの値がvo0 |
570 (SW:短絡) | 0.510 | (vo=50/51 * vo0) |
以上の測定結果より、
Zo = 570/50 = 11.4[Ω]
Zoの計算値と測定値を比較すると、
Zo (計算値) [Ω] | Zo (測定値) [Ω]
| 測定値/計算値 (%) | 備考 |
11.8 | 11.4 | -3.4 | |
測定結果・考察
(1)下記のいずれの項目も、設計値と測定値は概ね一致しました。
電圧増幅度はほぼ1に近い値となりました。
- 直流動作点の測定
- 電圧増幅度の測定
- 入力インピーダンスの測定
- 出力インピーダンスの測定
(2)エミッタ・フォローの特徴である出力インピーダンスZoが小さいことが確認出来ました。
一方、入力インピーダンスZiはR1とR2がトランジスタと並列になるため
増幅回路としてはあまり大きくならないことが判りました。
今後の課題
- 周波数特性の測定
周波数特性は増幅回路の基本的な特性のひとつですが、今回の実験では
信号源として発振器ではなく、トランス・ボックスを使用する方針としたので
周波数特性の測定は断念しました。
- ひずみ率の測定
用途によってはひずみ率も重要な特性ですが、ひずみ率計が手元にないため
将来の課題としました。
参考文献
- 実験で学ぶ最新トランジスタ・アンプ設計法(1988 4版)、黒田徹著、ラジオ技術社
- 定本トランジスタ回路の設計(1991 初版)、鈴木雅臣著、CQ出版社
>関連項目
- 電子回路-エミッタ・フォロワー
-
実験中の様子
- 入出力波形
viとvoの波形。位相は同相です。

- クリップ波形
負荷が重くなると出力波形の下側がクリップします。

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