JH8CHUのホームページ>電気計測実験 >交流ブリッジによるLC測定(信号源1kHz)

交流ブリッジによるLC測定(信号源1kHz)


本ページ作成。(2025/06/05)
  1. 実験の目的

  2. 交流ブリッジを使用した電気容量(キャパシタンス)、インダクタンスの
    測定原理を理解するとともに、精度が保証されているコンデンサー、
    インダクターを交流ブリッジを使用して測定し、どの程度の測定精度が
    出るのかを確認します。
    今回使用する交流電源は1kHzの正弦波を使用します。
  3. 実験課題

    1. コンデンサーの容量測定
    2. 下記の校正用コンデンサーの静電容量を測定します。

    3. インダクタンスの測定
    4. 下記の校正用インダクターのインダクタンスを測定します。

  4. 実験方法

  5. 以下、交流ブリッジによる静電容量測定を実験回路(1)と手順(1)に、
    インダクタンス測定を実験回路(2)と手順(2)に示します。

    1. 実験回路(1)


    2. 実験手順(1)

    3. (1)発振器の周波数は1kHzを選択し、出力をレベルを0にします。
      (2)ブリッジのトグルスイッチはM側にします。機能設定は「C」(容量測定)を選択します。
      (3)実験回路を組立ます。電源は最後にONにします。
      (4)被測定コンデンサーを接続します。

      (5)発振器の出力レベルを適度な音量まで上げます。
      (6)レンジのスイッチとBALANCEのVRとD/FのVRを調整して音が消える点を探します。
      (7)音が小さくなったら発振器の出力レベルを上げます。
      (8)BALANCEとD/FのVRを調整して音が消える範囲の中央に設定します。
      (9)発振器の出力レベルを0にします。(イヤホンから大きな音が出ないようにするため)
      (10)ブリッジのトグルスイッチをT側に倒します。
      (11)その時の抵抗値をディジタルテスタ(または直流電位差計)で読み取ります。(この値をBとします)
      (12)ブリッジのトグルスイッチをM側に倒します。
      (13)被測定コンデンサーを交換します。

      (14)(5)から(13)までの手順を繰り返します。
       本当は、被測定コンデンサー毎に数回測定し、平均を取るべきですが今回は1回としました。


    4. 実験回路(2)


    5. 実験手順(2)

    6. (1)発振器の周波数は1kHzを選択し、出力をレベルを0にします。
      (2)ブリッジのトグルスイッチはM側にします。機能設定は「L」(インダクタンス測定)を選択します。
      (3)実験回路を組立ます。電源は最後にONにします。
      (4)被測定インダクターを接続します。

      (5)発振器の出力レベルを適度な音量まで上げます。
      (6)レンジのスイッチとBALANCEのVRとQのVRを調整して音が消える点を探します。
      (7)音が小さくなったら発振器の出力レベルを上げます。
      (8)BALANCEとQのVRを調整して音が消える範囲の中央に設定します。
      (9)発振器の出力レベルを0にします。(イヤホンから大きな音が出ないようにするため)
      (10)ブリッジのトグルスイッチをT側に倒します。
      (11)その時の抵抗値をディジタルテスタ(または直流電位差計)で読み取ります。(この値をBとします)
      (12)ブリッジのトグルスイッチをM側に倒します。
      (13)被測定インダクターを交換します。

      (14)(5)から(13)までの手順を繰り返します。
       本当は、被測定コンデンサー毎に数回測定し、平均を取るべきですが今回は1回としました。

  6. 実験機材

    1. 交流ブリッジ
    2. 低周波発振器
    3. クリスタル・イヤホン
    4. 校正用コンデンサ
    5. 校正用インダクタ
    6. ディジタルテスターまたは直流電位差計
  7. 実験結果

    1. 被測定コンデンサーの容量計算式


    2. ディジタルテスター(または直流電位差計)の読みをBとします。
      Cs = 0.01μF、Rはレンジにより変わります。
      このとき、次の式で被測定コンデンサーの容量(Cx)を計算します。

      Cx = B/R・Cs

    3. 容量の測定結果
    4. Cx公称値[F]R[レンジ]R[Ω]B[Ω]Cx計算値[F]公称値からの偏差[%] 50Hzでの測定値(*1)
      0.1μ (1%)110117.00.117μ17.0%0.1106μ
      0.01μ (1%)210097.10.00971μ-2.9%0.00967μ
      1000p (1%)31k100.41004p0.4%1057p
      100p (5%)410k115.9115.9p15.9%測定不可
      10p (±0.5p)5100k216.621.66217%測定不可
      (*1)50Hzでの測定結果はこちらの実験結果を引用。

    5. 被測定インダクターのインダクタンス計算式


    6. ディジタルテスター(または直流電位差計)の読みをBとします。
      Cq = 1000pF、Rはレンジにより変わります。
      このとき、次の式で被測定インダクターのインダクタンス(Lx)を計算します。

      Lx =R・B・Cq

    7. インダクタンスの測定結果
    8. Lx公称値[H]R[レンジ]R[Ω]B[Ω]Lx計算値[H]公称値からの偏差[%] 50Hzでの測定値(*1)
      10m (5%)410k8228.22m-10.78%8.51m
      1m (5%)31k7770.777m-22.3%0.838m
      100μ (10%)210086886.8μ-13.2%83.9μ
      10μ (10%)2100128.612.86μ28.6%9.02μ
      1μ (30%)110254.42.54μ254%0.858μ
      (*1)50Hzでの測定結果はこちらの実験結果を引用。

  8. 考察

    1. 誤差伝搬の法則よると、 Cxの計算式が
    2. Cx = B/R・Cs
      であるときのCxの相対誤差は、Rの相対誤差が0.1%、Cqの相対誤差が1%であり、
      あとはBのディジタル・テスタ(または直流電位差計)の読み取り誤差ですが、
      これを仮に(大き目に)0.5%と仮定すると、合計0.1+1+0.5=1.6%となります。
      あとは平衡点(つまりVR-Bの値)をいかに正確に合わせるかで誤差が決まります。

    3. 誤差伝搬の法則よると、 Lxの計算式が
    4. Lx =R・B・Cq
      であるときのLxの相対誤差は、Rの相対誤差が0.1%、Cqの相対誤差が1%であり、
      あとはBのディジタル・テスタ(または直流電位差計)の読み取り誤差ですが、
      仮に(大き目に)0.5%と仮定すると、合計0.1+1+0.5=1.6%となります。
      あとは平衡点(つまりVR-Bの値)をいかに正確に合わせるかで誤差が決まります。

    5. 容量測定では、平衡点が比較的判りやすかったですが、
    6. インダクタンス測定では、バランスVR(B)の変化に対して検出器である
      イヤホンからの音の変化が小さく、平衡点が判りづらかったです。
      この結果、バランスVR(B)を精度よく設定することが難しいことから
      測定精度も悪くなります。
      この平衡点の位置は、測定の度に多少変化してしまいます。
      なので、測定は複数回実施し、平均をとるなどの対策を実施した方が
      良いと思います。今回はそこまで実施しませんでした。
       


    7. 容量測定の公称値からの偏差は、100pF以上では最大17.0%となりました。
    8. 10pFの測定誤差は2倍を超えましたが、実は、X端子にはコンデンサーを接続しなくても
      ブリッジが平衡します。ブリッジ自体の浮遊容量と思われ、その値は約11pFでした。
      これに、校正用コンデンサーとブリッジ間の配線容量を含めると約15pF大きめの
      測定結果が出るようです。なので、1000pF以下の測定では15pFを引くと
      10pFあたりまで測定可能と思われます。
      50Hzでは測定出来なかった1000pF以下の容量も測定出来たことから、信号源の周波数は
      可能な限り高めにすると測定が楽です。(1kHzより3kHzの方がさらに平衡点が見つけやすいです。)

    9. インダクタンス測定の公称値からの偏差は、10μH以上では最大28.6%となりました。
    10. 1μHの測定誤差は2.5倍にもなりましたが、やはりインダンタンス測定では複数回の
      測定が必須と思われます。

  9. 参考文献

  10. 電気電子工学の基礎実験(1981,第1版第刷)2.4.インピーダンス測定、本岡達著、オーム社
  11. 関連項目

    1. ソーティ・ブリッジの原理
    2. マクスウェル・ブリッジの原理
    3. 誤差伝搬の法則
    4. 交流ブリッジの製作
    5. 低周波発振器
    6. 校正用コンデンサ
    7. 校正用インダクタ
  12. 今後の課題

  13. 今のところなし。


JH8CHUのホームページ>電気計測実験 >交流ブリッジによるLC測定(信号源1kHz)


Copyright (C)2025 Masahiro.Matsuda(JH8CHU), all rights reserved.