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交流ブリッジによるLC測定(信号源1kHz)
本ページ作成。(2025/06/05)
実験の目的
交流ブリッジを使用した電気容量(キャパシタンス)、インダクタンスの
測定原理を理解するとともに、精度が保証されているコンデンサー、
インダクターを交流ブリッジを使用して測定し、どの程度の測定精度が
出るのかを確認します。
今回使用する交流電源は1kHzの正弦波を使用します。
実験課題
- コンデンサーの容量測定
下記の校正用コンデンサーの静電容量を測定します。
(1)0.1μF (誤差1%)
(2)0.01μF (誤差1%)
(3)1000pF (誤差1%)
(4)100pF (誤差5%)
(5)10pF (誤差±0.5pF)
- インダクタンスの測定
下記の校正用インダクターのインダクタンスを測定します。
(1)10mH (誤差5%)
(2)1mH (誤差5%)
(3)100μH (誤差10%)
(4)10μH (誤差10%)
(5)1μH (誤差30%)
実験方法
以下、交流ブリッジによる静電容量測定を実験回路(1)と手順(1)に、
インダクタンス測定を実験回路(2)と手順(2)に示します。
- 実験回路(1)

- 実験手順(1)
(1)発振器の周波数は1kHzを選択し、出力をレベルを0にします。
(2)ブリッジのトグルスイッチはM側にします。機能設定は「C」(容量測定)を選択します。
(3)実験回路を組立ます。電源は最後にONにします。
(4)被測定コンデンサーを接続します。
(5)発振器の出力レベルを適度な音量まで上げます。
(6)レンジのスイッチとBALANCEのVRとD/FのVRを調整して音が消える点を探します。
(7)音が小さくなったら発振器の出力レベルを上げます。
(8)BALANCEとD/FのVRを調整して音が消える範囲の中央に設定します。
(9)発振器の出力レベルを0にします。(イヤホンから大きな音が出ないようにするため)
(10)ブリッジのトグルスイッチをT側に倒します。
(11)その時の抵抗値をディジタルテスタ(または直流電位差計)で読み取ります。(この値をBとします)
(12)ブリッジのトグルスイッチをM側に倒します。
(13)被測定コンデンサーを交換します。
(14)(5)から(13)までの手順を繰り返します。
本当は、被測定コンデンサー毎に数回測定し、平均を取るべきですが今回は1回としました。
- 実験回路(2)

- 実験手順(2)
(1)発振器の周波数は1kHzを選択し、出力をレベルを0にします。
(2)ブリッジのトグルスイッチはM側にします。機能設定は「L」(インダクタンス測定)を選択します。
(3)実験回路を組立ます。電源は最後にONにします。
(4)被測定インダクターを接続します。
(5)発振器の出力レベルを適度な音量まで上げます。
(6)レンジのスイッチとBALANCEのVRとQのVRを調整して音が消える点を探します。
(7)音が小さくなったら発振器の出力レベルを上げます。
(8)BALANCEとQのVRを調整して音が消える範囲の中央に設定します。
(9)発振器の出力レベルを0にします。(イヤホンから大きな音が出ないようにするため)
(10)ブリッジのトグルスイッチをT側に倒します。
(11)その時の抵抗値をディジタルテスタ(または直流電位差計)で読み取ります。(この値をBとします)
(12)ブリッジのトグルスイッチをM側に倒します。
(13)被測定インダクターを交換します。
(14)(5)から(13)までの手順を繰り返します。
本当は、被測定コンデンサー毎に数回測定し、平均を取るべきですが今回は1回としました。
実験機材
- 交流ブリッジ
- 低周波発振器
- クリスタル・イヤホン
- 校正用コンデンサ
- 校正用インダクタ
- ディジタルテスターまたは直流電位差計
実験結果
- 被測定コンデンサーの容量計算式

ディジタルテスター(または直流電位差計)の読みをBとします。
Cs = 0.01μF、Rはレンジにより変わります。
このとき、次の式で被測定コンデンサーの容量(Cx)を計算します。
Cx = B/R・Cs
- 容量の測定結果
Cx公称値[F] | R[レンジ] | R[Ω] | B[Ω] | Cx計算値[F] | 公称値からの偏差[%]
| 50Hzでの測定値(*1) |
0.1μ (1%) | 1 | 10 | 117.0 | 0.117μ | 17.0% | 0.1106μ |
0.01μ (1%) | 2 | 100 | 97.1 | 0.00971μ | -2.9% | 0.00967μ |
1000p (1%) | 3 | 1k | 100.4 | 1004p | 0.4% | 1057p |
100p (5%) | 4 | 10k | 115.9 | 115.9p | 15.9% | 測定不可 |
10p (±0.5p) | 5 | 100k | 216.6 | 21.66 | 217% | 測定不可 |
(*1)50Hzでの測定結果はこちらの実験結果を引用。
- 被測定インダクターのインダクタンス計算式

ディジタルテスター(または直流電位差計)の読みをBとします。
Cq = 1000pF、Rはレンジにより変わります。
このとき、次の式で被測定インダクターのインダクタンス(Lx)を計算します。
Lx =R・B・Cq
- インダクタンスの測定結果
Lx公称値[H] | R[レンジ] | R[Ω] | B[Ω] | Lx計算値[H] | 公称値からの偏差[%]
| 50Hzでの測定値(*1) |
10m (5%) | 4 | 10k | 822 | 8.22m | -10.78% | 8.51m |
1m (5%) | 3 | 1k | 777 | 0.777m | -22.3% | 0.838m |
100μ (10%) | 2 | 100 | 868 | 86.8μ | -13.2% | 83.9μ |
10μ (10%) | 2 | 100 | 128.6 | 12.86μ | 28.6% | 9.02μ |
1μ (30%) | 1 | 10 | 254.4 | 2.54μ | 254% | 0.858μ |
(*1)50Hzでの測定結果はこちらの実験結果を引用。
考察
- 誤差伝搬の法則よると、
Cxの計算式が
Cx = B/R・Cs
であるときのCxの相対誤差は、Rの相対誤差が0.1%、Cqの相対誤差が1%であり、
あとはBのディジタル・テスタ(または直流電位差計)の読み取り誤差ですが、
これを仮に(大き目に)0.5%と仮定すると、合計0.1+1+0.5=1.6%となります。
あとは平衡点(つまりVR-Bの値)をいかに正確に合わせるかで誤差が決まります。
- 誤差伝搬の法則よると、
Lxの計算式が
Lx =R・B・Cq
であるときのLxの相対誤差は、Rの相対誤差が0.1%、Cqの相対誤差が1%であり、
あとはBのディジタル・テスタ(または直流電位差計)の読み取り誤差ですが、
仮に(大き目に)0.5%と仮定すると、合計0.1+1+0.5=1.6%となります。
あとは平衡点(つまりVR-Bの値)をいかに正確に合わせるかで誤差が決まります。
- 容量測定では、平衡点が比較的判りやすかったですが、
インダクタンス測定では、バランスVR(B)の変化に対して検出器である
イヤホンからの音の変化が小さく、平衡点が判りづらかったです。
この結果、バランスVR(B)を精度よく設定することが難しいことから
測定精度も悪くなります。
この平衡点の位置は、測定の度に多少変化してしまいます。
なので、測定は複数回実施し、平均をとるなどの対策を実施した方が
良いと思います。今回はそこまで実施しませんでした。

- 容量測定の公称値からの偏差は、100pF以上では最大17.0%となりました。
10pFの測定誤差は2倍を超えましたが、実は、X端子にはコンデンサーを接続しなくても
ブリッジが平衡します。ブリッジ自体の浮遊容量と思われ、その値は約11pFでした。
これに、校正用コンデンサーとブリッジ間の配線容量を含めると約15pF大きめの
測定結果が出るようです。なので、1000pF以下の測定では15pFを引くと
10pFあたりまで測定可能と思われます。
50Hzでは測定出来なかった1000pF以下の容量も測定出来たことから、信号源の周波数は
可能な限り高めにすると測定が楽です。(1kHzより3kHzの方がさらに平衡点が見つけやすいです。)
- インダクタンス測定の公称値からの偏差は、10μH以上では最大28.6%となりました。
1μHの測定誤差は2.5倍にもなりましたが、やはりインダンタンス測定では複数回の
測定が必須と思われます。
参考文献
電気電子工学の基礎実験(1981,第1版第刷)2.4.インピーダンス測定、本岡達著、オーム社
関連項目
- ソーティ・ブリッジの原理
- マクスウェル・ブリッジの原理
- 誤差伝搬の法則
- 交流ブリッジの製作
- 低周波発振器
- 校正用コンデンサ
- 校正用インダクタ
今後の課題
今のところなし。
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