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エミッタ接地小信号増幅回路の解析
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回路図
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エミッタ接地小信号増幅回路の等価回路を求めると下図となります。
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求めた等価回路から、
回路の入力インピーダンス(Zi)を求めます。
Zi = R1 // R2 // hie
ここで、//は並列接続の記号で、Ra//Rb = Ra*Rb/(Ra + Rb)の意味です。
hieは概算式を用いると、
Zi ≒ R1 // R2 // [1/(40*IB)]
= R1 // R2 // [β/(40*Ic)]
≒ R1 // R2 // [β/(40*IE)]
同様に等価回路から、
回路の出力インピーダンス(Zo)を求めます。
電流源の内部抵抗は無限大であることに注目すると、
Zo = Rc
等価回路から、電圧増幅度を計算します。
まず、ibを求めます。
ib = vi/hie
一方、出力電圧voは
vo = - ic * Rc
= - (hfe * ib) * Rc
= - hfe * (vi/hie) * Rc
∴vo = - vi * (hfe/hie) * Rc
ここで、マイナスの符号はvoがviに対して、
位相が180度反転することを意味しています。
以上より、電圧増幅度Avは
Av = vo/vi
∴Av = - (hfe/hie) * Rc
なお、hieは概算式を使用すると、
hie = β/(40 * Ic) = hfe/(40 * Ic)
≒ β/(40 * IE) = hfe/(40 * IE)
なので、β=hfeとおいて
Av = - β / [β/(40 * Ic)] * Rc
∴Av = - 40 * Ic * Rc
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入力側カップリング・コンデンサCiの影響を検討します。
出力側カップリング・コンデンサCoとエミッタのバイパス・コンデンサCEを
この後の項で検討するように無視出来る値(インピーダンス=0)に設定し、
Ciのみを残すと等価回路は下図のようになります。
まず、R1、R2、hieは並列接続になるので、以下の計算においては
RB = R1//R2 = R1*R2/(R1+R2)
R = RB//hie = RB*hie/(RB+hie)
とします。
RとCiはローカット・フィルタ(Low Cut Filter)を
形成するため、周波数が低くなると減衰を無視できなくなります。
カットオフ周波数を求めるために、v1の値を計算します。
v1 = vi * R/[1/(jωCi) + R]
= vi * R/[R - j/(ωCi)]
= vi * R/[exp(-jθ) * √{R2 + 1/(ωCi)2}]
= vi * exp(jθ) * R/√{R2 + 1/(ωCi)2}
ここに、θ= tan-1[(ω * Ci)/R]
これによりv1が1/√2(=-3dB)になる周波数fiは
1/√2 = R/√{R2 + 1/(ωCi)2}
両辺を二乗して
1/2 = R2 /{R2 + 1/(ωCi)2}
分母をはらうと
R2 + 1/(ωCi)2 = 2 * R2
1/(ωCi)2 = R2
両辺の平方根をとって
1/(ωCi) = R
∴ω = 1/(Ci * R)
カットオフ周波数をfciとすれば、ω=2π * fciなので
fci = 1/(2π * Ci * R)
となります。
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出力側カップリング・コンデンサCoの影響を検討します。
入力側カップリング・コンデンサCiとエミッタのバイパス・コンデンサCEを
この後の項で検討するように無視出来る値(インピーダンス=0)に設定し、
Coのみを残すと等価回路は下図のようになります。
Coは負荷抵抗RLとともにローカットフィルターを形成します。
Coの値は、この増幅器の出力側のインピーダンスRLが
決まらないと決められません。
そのカットオフ周波数fcoとすれば、
fco = 1/(2π * C o* RL)
となります。
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まず、CiとCoの影響がないように値を決定します。
更に、REと並列に接続されているバイパスコンデンサCEの値を
REの影響がなくなるように
RE >> 1/(ωCE)
となるよう決定すれば、等価回路は次のように簡略化されます。
等価回路によりベースより流入する交流電流はib、
コレクタより流入する交流電流icは
ic = hfe * ib
となるので、エミッタより流出する交流電流ieは
ie = ib + ic = ib + hfe*ib = ib * (1 + hfe)
となります。
従って、エミッタの交流電位veは
ve = 1/(jωCE) * ie
= 1/(jωCE) * ib * (1 + hfe)
= (hfe + 1)/(jωCE) * ib
これにより
vi = ib * hie + ve
= ib * hie + (hfe + 1)/(jωCE) * ib
= ib * {hie + (hfe + 1)/(jωCE)}
= ib * {hie + 1/[jω{CE/(hfe + 1)}]
≒ ib * {hie + 1/[jω(CE/hfe)]
この式は、次の等価回路と同じです。
すなわち、入力側からみた場合CEは1/hfe倍に見え、
hieとCE/hfeとでローカットフィルタを形成しています。
(viとibとの関係なので、CE/hfeとhieを入れ換えても
ローカットフィルタであることには変わりありません。
本ページ最下部の付録を参照してください。)
よって、そのカットオフ周波数fceは、
fce = hfe/{2π * CE * hie}
ここで、hieに概算式を用いると、β=hfeとして
fce = β/[2π * CE * {β/(40 * Ic)}]
∴fce = 20 * Ic /[π * CE]
となります。
参考文献
- 簡明電子回路入門(1980 初版)、矢部初男著、槇書店
- アナログ電子回路の基礎(2003 第1版第1刷)、堀桂太郎、東京電機大学出版局
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付録
ib = vi/[hie + 1/{jωCE/hfe}]
|ib| = vi/[√{hie2 + 1/(ωCE/hfe)2}]
ω→∞のとき
|ib|(ω→∞) = vi/hie
カットオフ周波数fcは
|ib|(ω→∞)/√2 = |ib|
となる周波数なので、以下計算すると
vi/(hie * √2) = vi/[√{hie2 + 1/(ωCE/hfe)2}]
両辺をviで割ってから、分母をはらうと
√{hie2 + 1/(ωCE/hfe)2} = √2 * hie
両辺を自乗して
hie2 + 1/(ωCE/hfe)2 = 2 * hie2
1/(ωCE/hfe)2 = hie2
両辺の平方根をとって
1/(ωCE/hfe) = hie
ω = 1/(CE/hfe * hie)
ω = 2π*fcとすれば
fc = 1/[2π * (CE/hfe) * hie]
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