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エミッタ接地トランジスタ増幅回路(交流負帰還有り)の解析
本ページ作成(2015/04/01)
回路図
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増幅回路の等価回路は下図のようになります。
トランジスタは
小信号簡単化等価回路で置き換えます。
電源のインピーダンスは零なので、電源Vccとグランド(GND)間は短絡します。
また、2つのカップリング・コンデンサCiとCoは増幅する周波数帯域内では
無視できる(=ゼロと見なせる)値を選定するため、CiとCoも短絡します。
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まず、トランジスタのベースから右側を見たときの入力インピーダンスRiを求めます。
等価回路から以下の関係式が成り立ちます。
vi = ib * hie + RE * (ib + hfe * ib) = ib * { hie + RE * (hfe + 1)}
従って、
Ri = vi/ib = hie + RE * (hfe + 1)
このRiを使用すると、Ziは
Zi = R1//R2//Ri
= R1 // R2 // [hie + RE * (hfe + 1)]
hfe = βなので
Zi = R1 // R2 // [hie + RE * (β + 1)]
ここで、hieとして概算式を使うと、
Zi ≒ R1 // R2 // [1/(40*IB) + RE * (β + 1)]
= R1 // R2 // [β/(40*Ic) + RE * (β + 1)]
≒ R1 // R2 // [β/(40*IE) + RE * (β + 1)]
また、 hie << RE * (hfe + 1)と見なせるときは
Ri = RE * (hfe + 1) ≒ RE * hfe (∵hfe >> 1)
∴Ri ≒ RE * hfe = RE * β
の式で概算出来ます。
更に、R1//R2 << Riと見なして
Zi = R1 // R2
の式で概算しても実用になります。
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制御電流源の内部抵抗は無限大であることに注目すると、
等価回路よりただちに、
Zo = Rc
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まず、ibを求めます。
ib = vi/Ri = vi/{hie + RE * (hfe + 1)}
一方、出力電圧voは
vo = - ic * Rc
= - (hfe * ib) * Rc
= - hfe * [vi/{hie + RE * (hfe + 1)}] * Rc
∴vo = - vi * [hfe/{hie + RE * (hfe + 1)}] * Rc
ここで、マイナスの符号はvoがviに対して、
位相が180度反転することを意味しています。
以上より、電圧増幅度Avは
Av = vo/vi
∴Av = - hfe/{hie + RE * (hfe + 1)} * Rc
・・・・・@
なお、hieは概算式を使用すると、
hie = β/(40 * Ic) = hfe/(40 * Ic)
≒ β/(40 * IE) = hfe/(40 * IE)
なので、hfe+1≒hfe(∵hfe>>1)、hfe=β、とすれば
Av = - β/{β/(40 * Ic) + RE * β} * Rc
= - 1/{1/(40 * Ic) + RE} * Rc
∴Av = - Rc/{1/(40 * Ic) + RE}
一方、@の式において、hie >> RE * (hfe + 1)、hfe+1 ≒ hfe
であることを利用して近似すれば、
vo = - vi * [hfe/{RE * hfe}] * Rc
= - vi * [1/RE] * Rc
∴vo = -vi * Rc/RE
となることから、
Av = vo/vi = - Rc/RE
∴Av =- Rc/RE
となり、抵抗器RcとREのみでAvが決まります。
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入力側カップリング・コンデンサCiの影響を検討します。
出力側カップリング・コンデンサCoをこの後の項で検討するように
無視出来る値(インピーダンス=0)に設定し、Ciのみを残すと
等価回路は下図のようになります。
トランジスタのベースから右側を見たときの入力インピーダンスをRiとすれば、
R1、R2、Riは並列接続となるので、以下の計算においては
Zi = R1 // R2 // Ri
とします。
ZiとCiはローカット・フィルタ(Low Cut Filter)を
形成するため、周波数が低くなると減衰を無視できなくなります。
カットオフ周波数を求めるために、v1の値を計算します。
v1 = vi * Zi/[1/(jωCi) + Zi]
= vi * Zi/[Zi - j/(ωCi)]
= vi * Zi/[exp(-jθ) * √{Zi2 + 1/(ωCi)2}]
= vi * exp(jθ) * Zi/√{Zi2 + 1/(ωCi)2}
ここに、θ= tan-1[(ω * Ci)/Zi]
これによりv1が1/√2(=-3dB)になる周波数fiは
1/√2 = Zi/√{Zi2 + 1/(ωCi)2}
両辺を二乗して
1/2 = Zi2 /{Zi2 + 1/(ωCi)2}
分母をはらうと
Zi2 + 1/(ωCi)2 = 2 * Zi2
1/(ωCi)2 = Zi2
両辺の平方根をとって
1/(ωCi) = Zi
∴ω = 1/(Ci * Zi)
カットオフ周波数をfciとすれば、ω=2π * fciなので
fci = 1/(2π * Ci * Zi)
となります。
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出力側カップリング・コンデンサCoの影響を検討します。
入力側カップリング・コンデンサCiとエミッタのバイパス・コンデンサCEを
この後の項で検討するように無視出来る値(インピーダンス=0)に設定し、
Coのみを残すと等価回路は下図のようになります。
Coは負荷抵抗RLとともにローカットフィルターを形成します。
Coの値は、この増幅器の出力側のインピーダンスRLが
決まらないと決められません。
そのカットオフ周波数fcoとすれば、
fco = 1/(2π * C o* RL)
となります。
参考文献
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