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エミッタ接地回路の静特性測定


本ページ作成。(2015/02/28)
  1. 実験の目的

    バイポーラ・トランジスタのエミッタ接地回路の静特性を測定することで
    バイポーラ・トランジスタの動作を確認するとともに、小信号等価回路の
    パラメータについて考察します。
  2. 実験課題

    下記の項目について静特性の測定を行い、測定結果から等価回路のパラメータを
    求めます。
    1. IB-IC特性
    2. VBE-IB特性
    3. VCE-IC特性

  3. 実験回路

    1. IB-IC特性、VBE-IB特性


    2. VCE-IC特性



  4. トランジスタの静特性

    エミッタ接地回路の場合、入力特性はVbe-Ib特性、出力特性はVce-Ic特性、
    伝達特性はIb-Ic特性で表されます。

    1. IB-IC特性
      伝達特性であるIB-IC特性は、トランジスタの基本関係式より
      IC = hFE * IB
      であることから、ほぼ原点を通る直線となります。


    2. VBE-IB特性
      入力特性であるVBE-IB特性は、PN接合の順方向特性となることから
      IB = Ico * {exp((q/kT)*VBE) − 1)}
      となり、ほぼ指数関数曲線となります。


    3. VCE-IC特性
      出力特性であるVCE-IC特性は、Icが基本関係式より
      IC = hFE * IB
      で決まるためVCEには依然せず、IBが一定ならば、Icもほぼ一定となります。
      グラフ上は、IBをパラメータとしたほぼ水平なグラフとなります。
      しかし、実際にはICが増えるほど、やや右肩上がりのグラフとなります。


  5. トランジスタの小信号簡易化等価回路

    トランジスタに小信号増幅をさせる場合、静特性のグラフのままでは
    回路の解析が難しいので、まずバイアスをかけて動作点を決め、
    次に、小信号動作であることを前提としてその動作点においては
    線形動作をすると近似して解析します。
    線形動作をするトランジスタは等価回路で置き換えます。
    最も簡単な等価回路は下図です。


    等価回路の中のパラメータである、hie、hfeは静特性のグラフから
    以下のように求めます。

    (1)hfe
    IcとIBは原点を通る直線となることから、交流に対する増幅度hfeは
    ほぼ直流に対する増幅度hFEと同じになります。
    icがibのみで決まるため、等価回路では制御電源で表現され、電流の値は
    hfe*ibとなります。


    (2)hie
    入力特性であるVBE-IB特性はほぼ指数関数であることから
    小信号に対する抵抗値(hie)はVBE-IB特性曲線上の動作点(バイアス点)
    における接線で近似します。また、当然、hieは動作点で変化します。


    計算上は下記の概算式が使えます。
    hie = 1/(40 * IE) × β
    hie ≒ 1/(40 * IB)
  6. 実験方法

    1. IB-IC特性、VBE-IB特性
      IB-IC特性とVBE-IB特性は 測定手順がほとんど同じであることから、
      同時に測定しました。
      IB-VBE特性は ダイオードの特性と同様にわずかなVBEの変化で、
      IBが大きく変化するので、VBEの測定にはディジタル・テスター
      または、直流電位差計を用います。 なお、測定回路はAV法を用います。

      測定手順は、5kΩのVRでベース電流IBを0から増加させながら、
      そのときのベース・エミッタ間電圧VBEと コレクタ電流Icを読み取って行きます。


    2. VCE-IC特性
      まず5kΩのVRでベース電流IBを設定してから1kΩのVRでコレクタ電圧を
      0から増加させながらコレクタ・エミッタ間電圧VCEとコレクタ電流Icを
      読み取っていきます。この際、VCEが小さい間はVCEを変化させると
      わずかにベース電流IBも変化するので、IBを再調整します。


  7. 実験機材

    1. トランジスタ:2SC1815(Yランク)
    2. アナログ直流電流計(50μA)
    3. アナログ・テスター
    4. ディジタル・テスター
    5. 可変抵抗器(5kΩB)
    6. 可変抵抗器(1kΩ)
    7. 固定抵抗器100kΩ
    8. 乾電池:1.5V×4

  8. 実験結果

    1. IB-IC特性、VBE-IB特性 測定データ


    2. IB-IC特性グラフ


    3. IB-VBE特性グラフ


    4. IC-VCE特性 測定データ


    5. IC-VCE特性グラフ



  9. 測定結果・考察

    1. IB-IC特性とhfe
      IBとICはほぼ比例関係になることが確認出来ました。
      サンプルのトランジスタ:2SC1815において、その比、すなわちhFE
      およそ7[mA]/40[μA] = 175になりました。データシートによるとYランクの
      2SC1815のhFEは120〜240ですので、仕様の範囲内であることが判りました。

    2. IB-VBE特性
      今回の測定範囲では、判りずらいですが、ベース電流が2μAを超えたあたりから
      急激にVBEが600mV位に増加したことから、ほぼ指数関数になると
      考えられます。

    3. IC-VCE特性
      VCEがおよそ2[V]を超えると、Icはほぼ一定となりIBのみで
      決まることが判りました。

    4. hie
      測定データから次の方法で計算しました。
      IB = 4[μA]のときのhieは、その前後であるIB = 2[μA]と6[μA]の
      測定データで傾きを計算。




      計算結果は下記となりました


      概算式:hie ≒ 1/(40 * IB)から計算したhieとともにグラフにすると下図となりました。


      ふたつのグラフはたいへんよく一致することが確認出来ました。

  10. 今後の課題


  11. 参考文献

    1. なし。

  12. 関連項目

    1. AV法
    2. ダイオードの特性


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