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交流電圧の測定(交流プローブ)
本ページ作成。(2024/07/26)
実験の目的
まず、プローブ方式での交流電圧測定回路について、直流電圧計のレンジを変えて
交流電圧と整流直流電圧との誤差の違いを比較・検討します。
次に整流方式を検討する際、問題となるのが交流電圧の値が小さくなると(約1V以下?)、
ダイオードの順方向電圧が誤差として無視できなくなることです。
測定周波数が低周波であれば、演算増幅器(オペアンプ)などを使用すると、
この誤差を補正することは可能ですが、今回はプローブ方式の整流回路について、
増幅器を使用しないで補正できないかを検討し実験します。
実験課題
- 交流電圧を補正しないで測定
まずは、比較のために補正をしないでフルスケール1V、5V、10Vの直流電圧計で
整流電圧を測定したの場合の結果を確認します。
- 交流電圧を補正して測定
ダイオードの順方向電圧の電圧降下により発生する誤差をアナログ的に補正する案の
回路を付加した場合について測定します。
実験回路の動作原理と実験回路設計
プローブ形式の全波整流回路ですが、動作原理は
電源の倍電圧半波整流と同じです。
測定器としてのプローブ形の特徴は、被測定回路の直後で整流して直流に変換するため
周波数特性が良く、とくに高周波の電圧や電力の簡易測定ではよく使われます。
一方、デメリットとして測定電圧が小さいと整流ダイオードの非線形特性のため
入力(交流)電圧と出力(直流)電圧が比例しないため、メーターの校正が必要になる
という問題があります。(電圧が小さいとき目盛りがつまる)

C1、C2の選定ですが、直流電圧計の内部抵抗とコンデンサーとで
決まる時定数が測定波形の周期より十分大きくなれば良いと考えました。
今回使用する直流電圧計の内部抵抗は
10Vレンジで200kΩ、5Vレンジで100kΩ、1Vレンジで20kΩです。
また、今回測定に使用する周波数は商用電源の50Hzのみとします。
そうすると、時定数τは
τ = 2 * π * C * R
なので
C = τ / (2 * π * R)
τは50Hzの場合20msとなり、内部抵抗が最も小さい20kΩの場合、
C = .05 / (2 * π * 20,000) ≒ 0.4[μF]
C1、C2はこの値より十分大きければよいので、
C1 = C2 = 10[μF]
としました。プローブとして使用する場合C1は周波数特性の良いものを使用したい
のでフィルム系のコンデンサーを使用すべきと考えられますが、今回の実験では
測定周波数が50Hz固定なので、10[μF]の電解コンデンサーを使用しました。
補正案の原理は、ダイオードの順方向電圧が誤差の要因となるので、あらかじめダイオードに
順方向電圧を印加しておき(ゲルマニウム・ダイオードやシリコン・ショットキ・ダイオードの
場合、約0.3V)、交流電圧が入力されたとき、すぐにダイオードを動作させられないか、
というアイデアです。

回路構成上、D1のアノード側に直流電圧を印加するのが困難だったので、直流電圧計の
マイナス側に負電圧(Vbias)を印加する回路構成としました。

余談ですが、このアイデアの元は
ゲルマニウム・ラジオの検波器にシリコン・ダイオードを
使用すると音が割れてとても実用にならないのに対し、下図のように1.5Vの電池と抵抗器Rで
順方向バイアスをかけると、実用になるということから考えたものです。

実験回路と実験方法
以下の実験回路において、いずれも
C1=10μF、C2=10μF、D1=BAT43、D3=BAT43
です。
- 実験回路(1)
直流電圧計:10Vレンジ

- 実験回路(2)
直流電圧計:5Vレンジ

- 実験回路(3)
直流電圧計:1Vレンジ

- 実験手順
(1)回路を組立ます。
ダイオードD1、D3はダイオードブリッジボックス
を使用しました。
接続は下図となります。実験回路で、D1の次がD3になっているのは
ダイオードブリッジボックス内のダイオードの番号に合わせたためです。

ダイオードブリッジボックスを使用すると下図のようにD2とD4が寄生した回路と
なってしまいますが、動作はしない(導通しない)ので実験に影響はありません。

(2)2kΩと5kΩの可変抵抗器を最小に設定し、変圧器の電源を入れます。
(3)5kΩの可変抵抗器を調整して交流入力電圧(Vac)を設定します。
(4)その時のアナログ直流電圧計の指示(Vdc)を読み取り記録します。
(5) (3)〜(4)を繰り返し、アナログ直流電圧計の最大指示となるまで測定します。
(6)変圧器の電源を切ります。
(7)2kΩの可変抵抗器を調整してVbiasを印加します。
Vbiasの測定には、ディジタルテスターを一時的につなぎかえました。
もちろん、このときディジタルテスターは直流電圧のモードに切り替えます。
(14) (2)〜(7)までの手順を繰り返し、Vbiasを変えながら交流電圧(Vac)と直流電圧(Vdc)の
関係を測定します。
実験機材
- トランスボックス
- ダイオードブリッジボックス
- アナログ直流電圧計
- 可変抵抗器(2kΩB)
- 可変抵抗器(5kΩB)
- 電解コンデンサー:10μF×2
- 乾電池:1.5[V]、電池ホルダー
- 固定抵抗器(P型カーボン1/4W):4.7kΩ、47kΩ 各1個
- ディジタルテスター
実験結果
以下の表、およびグラフにおいて「理想」欄の値は、プローブ回路が
倍電圧整流であることから、AC入力電圧(rms)の(2*√2)倍した値です。
- 直流電圧計:10Vレンジ
・測定値

Vbiasを-300[mV]以上にすると、Vac=0[V]でもVdc=0[V]とならない。
・交流電圧(Vac)と直流電圧(Vdc)との関係グラフ

- 直流電圧計:5Vレンジ
・測定値

Vbiasを-150[mV]以上にすると、Vac=0[V]でもVdc=0[V]とならない。
・交流電圧(Vac)と直流電圧(Vdc)との関係グラフ

- 直流電圧計:1Vレンジ
・測定値

Vbiasを-60[mV]以上にすると、Vac=0[V]でもVdc=0[V]とならない。
・交流電圧(Vac)と直流電圧(Vdc)との関係グラフ

考察
- アナログ電圧計の誤差(クセ)
10Vレンジ、5Vレンジ、1Vレンジいずれにおいても、フルスケールの90%を
過ぎたあたりから急にグラフの傾きが緩くなりますが、これは使用した
アナログ電圧計のクセでどうしようもありません。
(参考:電気計測実験−
アナログ電圧計の校正実験)
- 10Vレンジでの測定結果
グラフが重なっているので、(1)項の要因を除けば入力の交流電圧(Vac)と
表示直流電圧(Vdc)の関係は、比較的理想値と一致しているようにも見えますが
Vbias=0のときはやや理想の線から離れています。
ただ、0[V]付近で誤差が増加する傾向は見られませんでした。
直線性もよく、ACプローブとしては実用になると考えられます。
- 5Vレンジでの測定結果
理想値に対して表示直流電圧(Vdc)のグラフの傾きが小さくなりましたが、
直線性は悪くありません。よってプローブの後に直流増幅器などを接続すれば
補正可能と思われるので、ACプローブとしては実用になると考えられます。
- 1Vレンジでの測定結果
入力の交流電圧(Vac)が0.1[V]より小さくなったあたりから明らかに直線性が悪くなり、
容易に補正出来ない出来ないと思われます。
よってACプローブとして使う場合、校正によって直流電圧計(Vdc)の目盛りを
書き直すなどの対策をしないと実用にならないと判断出来ます。
- Vbiasによる補正の結果
結論としては今回の対策案はあまり効果がありませんでした。orz
直線性の悪い1[V]レンジの場合で見ると、Vbiasを-60[mV]以上にすると
Vac=0[V]でも直流電圧計が0[V]から浮き始め、しかしこの状態にしても直線性は
ほとんど改善しませんでした。

- 結論
直流電圧計の目盛りを較正しないのであれば、5[V]レンジ以上では
プローブ方式が実用になると判断しました。
Vbiasによる補正は実用性が乏しいとの結論になりました。
参考文献
なし。
関連項目
- 電子回路−倍電圧半波整流回路の動作
- トランスボックス
- ダイオードブリッジボックス
- アナログ直流電圧計
- 可変抵抗器(2kΩB)
- 可変抵抗器(5kΩB)
今後の課題
- 整流回路の等価的インピーダンスの考察
整流回路の等価的な入出力インピーダンスを考察したかったのですが
理論的な考察が困難だった上、実測値をうまく説明出来ないことが判りました。
このため、今回は実験項目から外しました。
将来の懸案です。
- 直流電圧計のレンジを変えたときのグラフの傾きの変化理由
直流電圧計のレンジを変えたとき、直線部分の傾きが変わりました。
測定電圧の最大値が異なるので、実際よりグラフの傾きの変化が大きく
見えているのですが、傾きが変化することには変わりありません。
要因としては、ダイオードの非線形性に由来する順方向の等価的な抵抗値の変化
と推測しますが、解析的、等価的な考察は今回不十分となりました。
いずれにしても、理論的な考察がいまひとつ不十分な実験となったように思います。(-_-;;
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