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エミッタ接地の静特性測定(直流電位差計による)


本ページ作成。(2024/09/19)
  1. 実験の目的

  2. バイポーラ・トランジスタのエミッタ接地静特性を測定することで
    バイポーラ・トランジスタの動作を確認するとともに、小信号等価回路の
    パラメータについて考察します。
  3. 実験課題

  4. 下記の項目について静特性の測定を行い、測定結果から等価回路の
    パラメータ(hfe、hie)を求めます。
    1. IB-IC特性
    2. VBE-IB特性
    3. VCE-IC特性

  5. 実験回路

    1. IB-IC特性、VBE-IB特性


    2. VCE-IC特性


    3. 直流電位差計詳細回路



  6. トランジスタの静特性

  7. エミッタ接地回路の場合、入力特性はVBE-IB特性、 出力特性はVCE-IC特性、
    伝達特性はIB-IC特性で表されます。

    1. IB-IC特性
    2. 伝達特性であるIB-IC特性は、トランジスタの基本関係式より
      IC = hFE * IB
      であることから、ほぼ原点を通る直線となります。


    3. VBE-IB特性
      入力特性であるVBE-IB特性は、PN接合の順方向特性となることから
      IB = Ico * {exp((q/kT)*VBE) − 1)}
      となり、ほぼ指数関数曲線(を下方向に移動し原点を通る曲線)となります。


    4. VCE-IC特性
    5. 出力特性であるVCE-IC特性は、Icが基本関係式より
      IC = hFE * IB
      で決まるためVCEには依然せず、IBが一定ならば、Icもほぼ一定となります。
      グラフ上は、IBをパラメータとしたほぼ水平なグラフとなります。
      しかし、実際にはICが増えるほど、やや右肩上がりのグラフとなります。


  8. トランジスタの小信号簡易化等価回路

  9. トランジスタに小信号増幅をさせる場合、静特性のグラフのままでは
    回路の解析が難しいので、まずバイアスをかけて動作点を決め、
    次に、小信号動作であることを前提としてその動作点においては
    線形動作をすると近似して解析します。
    線形動作をするトランジスタは等価回路で置き換えます。
    最も簡単な等価回路は下図です。


    等価回路の中のパラメータである、hie、hfeは静特性のグラフから
    以下のように求めます。

    (1)hfe
    IcとIBは原点を通る直線となることから、交流に対する増幅度hfeは
    ほぼ直流に対する増幅度hFEと同じになります。
    icがibのみで決まるため、等価回路では 制御電源で表現され、電流の値(ic)は
    hfe*ibとなります。


    (2)hie
    入力特性であるVBE-IB特性はほぼ指数関数であることから
    小信号に対する抵抗値(hie)はVBE-IB特性曲線上の動作点(バイアス点)
    における接線の傾きで近似します。また、当然、hieは動作点で変化します。


    計算上は下記の概算式が使えます。
    hie = 1/(40 * IE) × β
    hie ≒ 1/(40 * IB)
  10. 実験方法

    1. IB-IC特性、VBE-IB特性
    2. IB-IC特性とVBE-IB特性は 測定手順がほとんど同じであることから、
      同時に測定しました。
      IB-VBE特性は ダイオードの特性と同様にわずかなVBEの変化で、
      IBが大きく変化するので、VBEの測定には直流電位差計を用いました。
      なお、測定回路はAV法を用います。

      測定手順は、20kΩのVRでベース電流IBを0から増加させながら、
      そのときのベース・エミッタ間電圧VBEと コレクタ電流Icを読み取って行きます。


    3. VCE-IC特性
    4. まず20kΩのVRでベース電流IBを設定して、次に直流電位差計の電圧を先に設定
      します(このとき100μA電流計の感度を「低」にしておきます)。
      その後、2kΩのVRで平衡を取ります。平衡したら感度を「高」にして再度平衡を取り、
      コレクタ電流Icを読み取っていきます。
      この際、VCEが小さい間はVCEを変化させると
      わずかにベース電流IBも変化するので、IBを再調整します。


    5. 直流電位差計の使用方法
    6. 簡単に記載します。



  11. 実験機材

    1. トランジスタ:2SC1815(Yランク)
    2. アナログ直流電流計(50μA)
    3. 標準電圧発生器
    4. ケルビン・バーレー・ポテンショメータ
    5. アナログ・テスター
    6. 簡易安定化電源
    7.  トランジスタの電源:10[V]と直流電位差計の15[V]は、簡易安定化電源から同時に供給します。
    8. 可変抵抗器(2kΩB)
    9. 可変抵抗器(5kΩB)
    10. 可変抵抗器(20kΩB)
    11. 固定抵抗器100kΩ

  12. 実験結果

    1. IB-IC特性、VBE-IB特性 測定データ


    2. IB-IC特性グラフ


    3. IB-VBE特性グラフ


    4. IC-VCE特性 測定データ


    5. IC-VCE特性グラフ



  13. 測定結果・考察

    1. IB-IC特性とhfe
    2. IBとICはほぼ比例関係になることが確認出来ました。
      サンプルのトランジスタ:2SC1815において、その比、すなわちhFE
      およそ8.7[mA]/45[μA] ≒ 193になりました。データシートによるとYランクの
      2SC1815のhFEは120〜240ですので、仕様の範囲内であることが判りました。

    3. IB-VBE特性
    4. 今回の測定範囲では、判りずらいですが、ベース電流が2μAを超えたあたりから
      急激にVBEが600mV位に増加したことから、ほぼ指数関数(を下方向に
      移動した関数)になると考えられます。

    5. IC-VCE特性
    6. VCEがおよそ2[V]を超えると、Icはほぼ一定となりIBのみで
      決まることが確認できました。
      グラフは折れ線グラフにしましたが、Excelで点を曲線で結ぶと1.5[V]あたりで
      オーバーシュートがあるように線が引かれるため折れ線グラフにしました。
      VCEが0.5〜1.0[V]あたりでもう少し細かくデータを取れば良かったかも
      しれません。

    7. hie
    8. 測定データから次の方法で計算しました。
      IB = 4[μA]のときのhieは、その前後であるIB = 2[μA]と6[μA]の
      測定データで傾きを計算。




      計算結果は下記となりました


      概算式:hie ≒ 1/(40 * IB)から計算したhieとともにグラフにすると下図となりました。


      ふたつのグラフは概ね一致することが確認出来ました。
      よってhieは概算式から計算して設計することが出来ると判断します。

  14. 今後の課題


  15. 参考文献

    1. 2SC1815データシート

  16. 関連項目

    1. AV法
    2. ダイオードの特性


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