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垂下型過電流保護回路の実験
本ページ作成。(2026/04/20)
実験の目的
電源回路において出力に過電流が発生した際、電流を制限し回路を保護する
方式のひとつである垂下型過電流保護回路について回路を設計し、
実際に組み立てて動作と特性を確認します。
実験課題
帰還増幅型定電圧電源回路の実験で使用した回路に
過電流保護回路を追加し、
過電流が流れる負荷を接続して保護回路の機能が動作することを確認します。
また、過電流に対する出力の特性を測定します。
実験回路
下記の帰還増幅型定電圧電源回路において、
追加されたTr3とR5が保護回路となります。
回路の動作
出力電流Ioが大きくなると、R5の両端の電圧も増加します。
Ioが制限電流より小さいときは、R5の両端の電圧はトランジスタTr3の
ベース〜エミッタ間電圧VBE3が小さく遮断状態となるため
Tr3はOFF状態です。出力電流Ioが増加し制限電流に達すると
R5両端の電圧によりトランジスタTr3が能動状態となります。
Tr3が能動状態になると、Tr1のベース電流が減少し、
それ以上Ioが増加することが出来なくなり、出力電流Ioが制限されます。
動作の詳細については電子回路の
過電流保護回路を参照してください。
実験回路の設計
- 設計条件
- 過電流の検出値: 10[mA]
この値は出力電流(Io)の制限値です。
もともと帰還増幅型定電圧電源の実験回路の定格電流が15[mA]と
小さいことと、可能ならば出力を短絡するところまで実験したかったので
早く保護回路が動作するように小さめの検出値としました。
(電流が大きいと短絡した際、トランジスタが壊れるのが怖い) (^^;
ただし、今回の実験回路ではR2を経由して定常時は無負荷でも5[mA]の
電流が流れるので、保護回路の制限電流は15[mA]で設計します。
- 抵抗:R5の選定
トランジスタTr3のベース〜エミッタ間電圧VBE3が能動状態になる
電圧がおよそ0.65[V]として、15[mA]の電流が流れたときR5の
両端の電圧を0.65[V]になるよにするための抵抗値は、
R5 = VBE3/I3(max) = 0.65/0.015 ≒ 43.3[Ω]
となります。E6系列より選定し、
R5 = 47[Ω]としました。
抵抗に必要な許容電力PR5は
PR5 = VBE * Io(max) = 0.65 * 0.015 ≒ 0.01[W]
となりますので、1/8W以上で十分です。
- トランジスタ:Tr3の選定
Tr3のコレクタ電流IC3の最大値はR1で制限されるので
IC3(max) = (Vi - VBE1 - VBE3) / R1 =
(10 - 0.65 - 0.65) / 1500 = 10 / 1500 = 5.8[mA]
コレクタ損失(PTr3)の計算は悩ましいところですが、だいたいで見積もって
PTr3(max) = (Vi - VBE1 - VBE3) * Ic3(max) =
8.7[V] * 5.8[mA] ≒ 50[mW]
以上考慮して、定番の2SC1815-Yとします。
| 項目 | 記号 | 単位 | 部品仕様(25℃) | 設計値 | 判定 | 備考 |
| コレクタ・エミッタ間電圧 | VCEO | V | 50 | 8.7 | OK | |
| コレクタ電流 | IC | mA | 150 | 5.8 | OK | |
| コレクタ損失 | PC | mW | 400 | 50 | OK | 十分余裕有り |
- 出力短絡時の出力電流
出力をグランドに短絡すると、Vo=0となるため、トランジスタTr2はベース電流が
流れなくなり遮断状態となると同時に、R2経由でダイオードD1、
D2にも
電流が流れなくなります。そしてIoとしては
Tr1のコレクタ→エミッタ→R5の
ルート(下図赤線)で約15[mA]の電流が流れますが、これとは別に
R1→Tr3のコレクタ→エミッタのルート(下図橙線)でも電流が
流れます。今回の設計では、IC1が15[mA]と小さいためIC3が
無視出来ません。

IC3(max) ≒ (Vi - VBE * 2) / R1 = (10 - 0.65 * 2) / 1500 =
≒ 5.8[mA]
となるので、出力短絡時の電流(IO(short))は
IO(short) = IC1(max) + IC2(max) = 15 + 5.8 ≒ 21[mA]
となります。
- 電子ブロックの配置
入力電源(Vi)として簡易安定化電源
の10[V]端子を使用します。

- 負荷抵抗
下記の値の負荷抵抗(RL)をつなぎ替え、ディジタルテスターで
出力電圧(Vo)を測定します。
出力電流(Io)はIo = Vo / RLの式で計算しました。
なおRL=0の時の電流は、テスターを電流計モードにして測定しました。
(0)∞ (Vo開放)
(1)1 [kΩ]
(2)680[Ω]
(3)470[Ω]
(4)300[Ω]
(5)220
(6)100
(7)47
(8)20
(9)10
(10)0 (VoとGD間短絡)
実験機材
- 電子ブロック
使用したブロックは、実験方法の
電子ブロックの配置を参照。
- 負荷用固定抵抗器:
1[kΩ]、680[Ω]、470[Ω]、220[Ω]、100[Ω]、47[Ω]、20[Ω]、10[Ω]
- 簡易安定化電源: 10[V]端子
- ディジタル・テスター(Vo)
実験結果
出力電流は
Io = Vo / RL
で計算。ただし、短絡時の電流は、テスターを電流計にして直接測定。

考察
- 制限開始の電流
グラフよりIo=8[mA]あたりから過電流の検出と制限が始まったことが判ります。
設計値の10[mA]よりやや小さいですが、VBEの個体差によるものと
判断します。本回路ではこのくらいの誤差は許容する必要があるでしょう。
- 制限開始から出力短絡まで
出力電流が8[mA]を超えると、ゆっくりと出力電圧(Vo)が低下していきました。
本保護回路は垂下型なのですが、垂下していないように見えます(^^;
トランジスタTr3が遮断状態から能動状態に移行する過程で
ベース電流が徐々に増加することからこのように見えるものと考えます。
今回の実験回路はIo(max)=10[mA]と通常の電源よりは大分容量が小さかったのですが、
Ioが数十mAより大きい場合はもっときれいに垂下するだろと推定します。
さらにVoが低下すると、Voが低下する過程でトランジスタTr2が遮断したり、
ダイオードD1、D2に電流が流れなくなる地点があるので
電流の変化が変動すると思われます。
- 出力短絡時の電流
計算上は21[mA]でしたので、実測値は計算値以内に収まりました。
短絡時の最大電流は今回の設計手法で保護出来るものと判断します。
今後の課題
- 応用
計画中である実験用安定化電源の製作に反映する予定です。
参考文献
- トランジスタ回路の実用設計(2005 初版)、渡辺明禎著、CQ出版社
関連項目
- 電子回路−
過電流保護回路
- 電源回路の実験−帰還増幅型定電圧電源回路の実験
- 簡易安定化電源
- 自作電子ブロック
- 設計情報−抵抗器−E系列
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