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アナログ直流電圧計の校正実験(直流電位差計による)


本ページ作成(2019/07/16)
  1. 実験の目的

    アナログ電圧計、アナログ・テスター、直流電位差計とで種々の大きさの同一の
    電圧を測定し、その測定値を比較する。
    この際、直流電位差計の測定値が正しいものとして
    各種電圧計の補正率を求める。
  2. 実験課題

    電圧計として、下記の二種類について校正を行う。
    1. 可動コイル型直流電圧計(0.5V/1.0V/2.5Vレンジ)
    2. テスターの直流電圧レンジ:2.5V
  3. 実験方法

    1. 実験回路全体


    2. 直流電位差計詳細


    3. 実験手順(各レンジ共通)

      1. 回路図を組立ます。電源はまだ接続しません。
        100μAセンターメータは標準電圧発生器に接続します。
      2. 標準電圧発生器の感度スイッチを"低"に設定します。
      3. ケルビンバーレーポテンショメーターのロータリスイッチを"4096"に設定します。
      4. 12V電源を接続し、標準電圧発生器の電源をONにします。
      5. 100μAセンターメータが0になるように2kΩ可変抵抗器を調整します。
      6. 標準電圧発生器の感度スイッチを"高"に設定します。
      7. 100μAセンターメータが0になるように2kΩ可変抵抗器を調整します。
      8. 標準電圧発生器との接続を外します。
        この段階では直流電位差計はダイオードに接続しません。
        ダイオードに流れる電流が小さいときに平衡のとれていない直流電位差計を
        ダイオードに接続すると、直流電位差計からダイオードに電流が流れ込むからです。
        (電位差計の平衡をとろうとすると、ダイオードの電流が変化します。)
      9. ダイオードに電流を流す3V電源を接続します。

      10. 5kΩの可変抵抗器を調整して、ダイオードに測定電流が流れるようにします。
      11. 直流電位差計をダイオードに接続します。
        ダイオードに流れる電流が変化するかもしれませんが、5kΩの可変抵抗器の設定は
        この段階では変えません。
      12. ケルビンバーレーポテンショメーターのロータリスイッチを調整して
        100μAセンターメータが0になるようします。
      13. 感度スイッチを"低"から"高"に切り換え、再度100μAセンターメータが
        0になるようします。
      14. この時点で、ダイオードの電流が測定値からずれていれば5kΩの
        可変抵抗器を調整します。
      15. 必要ならセンタメータの0と、ダイオードの電流を交互に調整します。
      16. 調整が完了したらケルビンバーレーポテンショメーターのロータリスイッチの
        値を読み取ります。今回は、0.01〜0.0001の設定がそのままダイオード両端の
        電圧となります。
      17. センタメーターの感度スイッチを"低"に切り換えます。
      18. 直流電位差計をダイオードから切り離します。

        以下、10〜18を繰り返して測定を続けます。
  4. 実験機材

    1. ケルビンバーレーポテンショメーター
    2. 標準電圧発生器
    3. 可変抵抗器(5kΩB)
    4. 可変抵抗器(2kΩB)
    5. 可動コイル型直流電圧計
    6. アナログ・テスター
    7. 乾電池(12V, 3V)

  5. 実験結果

      測定結果である、直流電位差計の読みVdとアナログ電圧計の読みVaから、
      下記の式で補正率αを求めて、横軸をVaにしてグラフを書きます。

      α= ( Vd / Va - 1) × 100

    1. 可動コイル型直流電圧計(0.5Vレンジ)の校正
        

    2. 可動コイル型直流電圧計(1.0Vレンジ)の校正
        

    3. 可動コイル型直流電圧計(2.5Vレンジ)の校正
        

    4. テスターの直流電圧レンジ2.5Vの校正
        

  6. 考察

    1. 可動コイル型直流電圧計(0.5V/1.0V/2.5Vレンジ)の校正
      補正率のグラフの形状が、0.5V/1.0V/2.5Vレンジの三つとも同じような
      形状をしていることから、もともとの電流計の誤差の傾向が表れている
      ものと考えます。
      可動コイル型直流電圧計は、原理的には電流の測定値からオームの法則により
      電圧を求めているため、元々の電流計の誤差に対して抵抗器の誤差分だけ
      電圧計としての誤差が増加します。
      ただ、今回測定に使用したアナログ電圧計は、そもそも倍率器の設計段階で
      1%の誤差を許容してしまったため、補正のうち1%は設計による誤差です。
      また、倍率器に使用した抵抗器は誤差1%の金属皮膜抵抗器なので、
      理論上は最悪電流計自体の誤差より更に2%誤差が悪化します。

      フルスケールに対する補正率が、6.8%、6.4%、6.4%となったことから、
      電流計以外の最大誤差2%を引くと、電流計自体の誤差は少なくとも
      4.8%、4.4%、4.4%あることとなり、2.5級のパネルメータであるにもかかわらず
      誤差が2.5%以内に収まっていないことが判ります。
      以上より、誤差が小さい測定をしたい場合は、面倒でも電圧計の補正率の
      曲線を求めて、測定値を補正する必要があることが確認出来ました。

    2. テスターの直流電圧レンジ2.5Vの校正
      1750mV測定時の補正が-3.9%になりました。
      テスタは内部に分流器や倍圧器を持っているため、誤差はアナログメータ単体
      より大きくると思われます。

    3. 共通の考察
      測定電流がフルスケールに対してだいたい20%以下のときは、補正率が大きくなって
      いますが、この傾向は可動コイル型直流電流計/テスタの電流レンジのときと
      同様の傾向です。電圧を測定する場合も、やはり出来るだけメータの針が大きく
      振れるレンジを用いて測定するべきであることが判ります。

  7. 参考文献

    入門電気計測(16刷 1980)、西野治著、実教出版
    電気工学入門演習 電気計測(3版 1988)、金古喜代治、堤捨男著、学献社
    現代電気電子工学の基礎実験(1981)、元岡達編集、オーム社

  8. 関連項目

    1. 直流電位差計の原理
    2. ケルビンバーレーポテンショメーター
    3. 標準電圧発生器
    4. 可動コイル型直流電圧計の原理
    5. 倍率器


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