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電流増幅付きツェナー定電圧電源回路


本ページ作成(2015/06/01)
  1. 回路の機能と特徴


  2. 回路図



  3. 回路の動作

    1. 各部の電圧と電流
        電源回路の負荷をRLとします。


        ツェナー・ダイオードZDの両端の電圧はVzです。
        出力電圧Voは、トランジスタのベース-エミッタ間電圧VBEだけ
        低い電圧となるので、
        Vo = Vz - VBE

        出力電流Ioは、
        Io = Vo/RL
        トランジスタの直流電流増幅率をhFEとすれば、ベース電流IB
        IB = Io/hFE
        一方、抵抗R1の両端の電圧VRはVi-Vzなので、R1を流れる電流IR
        IR = (Vi - Vz)/R1

        従って、ツェナー・ダイオードに流れる電流Izは
        Iz = IR - IB
         = (Vi - Vz)/R1 - Io/hFE

        ちなみにこの回路を書き換えると下図のようになり
        一種の エミッタ・フォロワーです。


    2. 出力(負荷)電流変動時の動作
        負荷の消費電流が変動した場合を考えます。
        例えば、RLが小さくなったとするとVoは低下します。
        一方、Vzはツェナー・ダイオードにより一定に保たれているので、
        Voが低下するとVBEが増加します。
        VBEが増加するとIBが増加しIEが増加します。
        IEはすなわちIoなのでIoの増加によりVoは上昇します。
        また、その結果VBEの増加分も打ち消されて、ほとんど変化しません。
        このようにして、Voはツェナー・ダイオードの電圧VzよりVBEだけ
        低い電圧に保たれています。

        今、このIEすなわち消費電流Ioの増加分を僮oとします。
        このため、トランジスタのベース電流IBが増加します。
        ベース電流の増加分を僮Bとすれば、
        IB + 僮B = (Io + 僮o)/hFE
         = Io/hFE + 僮o/hFE
         = IB + 僮o/hFE

        従って
        B = 僮o/hFE

        となります。抵抗R1の両端の電圧VRはVi-Vzのまま変化がないので、
        R1を流れる電流IRも変化がなく
        IR = (Vi - Vz)/R1

        のままです。よって、ツェナー・ダイオードに流れる電流はベース電流の
        増加分僮Bの分だけ減少します。すなわちツェナー・ダイオードに
        流れる電流の変化分を僮zとすれば、
        僮z = -僮B = -僮o/hFE

        この値をツェナー・ダイオードのみの 定電圧回路と比較すると
        出力電流の変化僮oに対するツェナー・ダイオードの電流変化が
        1/hFEになっていることが判ります。


    3. 入力電圧変動時の動作
        入力電圧が変動した場合を考えます。
        今、例えば、入力電圧Viが変動し、Viが儼iだけ増加したとします。
        Voは(Vz-VBE)=一定なので、Viの変化は全てVCE
        の変化となります。Ioは変化しません。
        (トランジスタのIE(=Io)はほぼIBのみで決まる。
        VBEが一定なのでIBも一定)

        Vzはツェナー・ダイオードにより一定に保たれているのでVR
        儼iだけ増加します。このため抵抗R1の電流IRが増加します。
        その電流増加分僮R
        R = 儼R/R1となりなます。
        一方、VBEが一定なのでIBも一定です。
        よって、僮Rの増加電流はツェナーダイオードの電流Izの 増加僮zとなります。すなわち
        僮z = 僮R = 儼R/R1

        この値をツェナー・ダイオードのみの 定電圧回路と比較すると
        R1が同じなら、僮zも同じになることが判ります。


    4. ツェナー・ダイオードに流れる電流
        出力電流Ioが変化した場合、および入力電圧Viが変化した場合、
        ツェナー・ダイオードに流れる電流Izが変化します。
        この場合、Izが減少した場合、Iz≒0にならないようにR1を選定する
        必要があります。また、Izが増加した場合ツェナー・ダイオードの
        最大定格を超えないようにする必要があります。
        考え方は、 ツェナー・ダイオードのみの定電圧回路と同じです。

  4. 参考文献

    1. トランジスタ回路の実用設計(2005 初版)、渡辺明禎著、CQ出版社
    2. 電源回路の「しくみ」と「基本」(2012 初版 第1刷)、渡辺昭二著、技術評論社
    3. 実用電子回路設計ガイド(2002 第16版)、見城尚志・高橋久共著、総合電子出版社


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