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トランジスタによる帰還増幅型定電圧電源回路


本ページ作成。(2015/07/16)
  1. 回路の機能

  2. 回路図



  3. 回路の動作

    1. 安定化動作の概略

      出力電圧: Voは検出回路であるR3とR4とで分圧され、比較回路となる
      トランジスタTr2のベースに入力されます。
      一方、基準電圧となるツェナーダイオード:ZDはTr2のエミッタに
      接続されています。このため、Tr2のベース電圧は常にVz+VBE2となり
      ほぼ一定です。つまり、R3とR4との分圧電圧とTr2のベース電圧が等しくなるような
      出力電圧Voが発生します。これを式で書くと、
      Vo * R4/(R3 + R4) = Vz + VBE2
      ∴Vo = (Vz + VBE2) * (1 + R3/R4)

      となります。
      出力電圧はTr1の電圧降下により制御されます。
      Tr1はドロッパーとも呼ばれ、出力電圧Voが一定になるように入力電圧Viに対して
      電圧降下を発生させます。従って、この回路ではVi>Voでなければなりません。
      Tr1は一種のエミッタ・フォロワーとみることも出来ます。

    2. 出力(負荷)電流変動時の動作

      出力電流Ioが変化した場合の動作を考えます。
      もし仮に負荷の変動により出力電流Ioが増加したとすると、
      Ioの増加によりTr1での電圧降下が増大しVoが低下します。
      するとR3とR4とで分圧された(A)点の電圧が低下します。
      Vaが低下するとTr2のVBEが減少することにより
      コレクタ電流Ic2が減少します。
      Ic2が減少すると、抵抗R1の電流が減少するため電圧降下が小さくなり、
      (B)点の電圧Vbは上昇します。
      出力電圧Voは(B)点の電圧からTr1のベース〜エミッタ間電圧VBE1だけ
      低い電圧となることからVo=Vb-VBE2となり、Vbの上昇によりVoが上昇します。
      この結果、最初に出力電流Ioが増加したことによるVoの低下が打ち消され
      Voは一定に保たれます。

      抵抗R2は出力電流の変化によりTr2のエミッタ電流が変化したとき、
      ツェナー・ダイオードZDに流れる電流が大きく変化して基準電圧が
      大きく変化しないように予め一定の電流を流しておくための抵抗です。

    3. 各部の電圧と電流
      電源回路の負荷をRLとします。


      負荷抵抗RLの両端の電圧はVoです。
      (A)点の電圧VaはTr2のベース電流を無視すると
      VoをR3とR4とで分圧したものになるので、
      Va = R4/(R3 + R4) * Vo ・・・@

      一方、Tr2のエミッタ電圧はVzなので、Tr2のベース電圧Vaは
      Va = Vz + VBE2 ≒ Vz + 0.6 ・・・A

      @とAは等しいので、
      R4/(R3 + R4) * Vo = Vz + 0.6

      この式をVoについて解くと
      Vo = (Vz + 0.6) * (R3/R4 + 1)

      (B)点の電位Vbは
      Vb = Vo + VBE1 ≒ Vo + 0.6
      となります。

      従って、抵抗R1を流れる電流IR1
      IR1 = (Vi - Vb)/R1
       = (Vi - Vo - VBE1)/R1

      トランジスタTr1の直流電流増幅率をhFE1とすれば
      Tr2のベース電流IB1は
      IB1 = IE/(hFE + 1)
       = Io/(hFE + 1)
       ≒ Io/hFE

      また、Tr2のコレクタ電流Ic2は、抵抗R1の電流IR1から
      Tr1のベース電流IB1を引いたものなので
      Ic2 = IR1 - IB
       = (Vi - Vo - VBE1)/R1 - Io/hFE

      ツェナーダイオードDzに流れる電流Izは
      Iz = (Vo - Vz)/R2 + IE2
       ≒ (Vo - Vz)/R2 + Ic2
       = (Vo - Vz)/R2 + (Vi - Vo - VBE1)/R1 - Io/hFE

    4. ツェナー・ダイオードの消費電力
      ツェナー・ダイオードの消費電力Pzは
      Pz = Vz * Iz
       = Vz * {(Vo - Vz)/R2 + (Vi - Vo - VBE1)/R1 - Io/hFE}

      なお、ツェナー・ダイオードの動作の詳細については
      ツェナー・ダイオードによる定電圧電源回路」を 参照してください。

    5. トランジスタTr2の消費電力
      トランジスタTr2の消費電力Ptr2は
      Ptr2 = VCE2 * Io
       = (Vi - Vo) * Io

  4. 参考文献

    1. トランジスタ回路の実用設計(2005 初版)、渡辺明禎著、CQ出版社
    2. 実用電子回路設計ガイド(2002 第16版)、見城尚志・高橋久共著、総合電子出版社
    3. トランジスタの実用回路入門(2003 第1版 第1刷)、富山忠宏著、オーム社


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