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NANDによるスルーラッチ
本ページ作成。(2026/09/14)
回路の機能
RS-フリップ・フロップと
同様に1bitの情報を記憶出来る回路ですが、
D端子の値をEN端子の制御により内部に読み込み込んで記憶するような
動作をします。別名、Dラッチとも言います。
EN端子(Enable)が"H"のときはD端子の値がそのままQp端子に現れます
(スルー(through)状態)。EN端子が"L"に変化したとき、変化した時点での
D端子の値がQp端子に保持されます。EN端子が"L"の状態でD端子の値が
変化してもQpの値は変化しません。
・動作波形の例

実はスルーラッチは今ではあまり使用されません。
現在、記憶素子として最もよく使用されるのはD-フリップ・フロップです。
D-フリップ・フロップではスルー動作がなく、下図のようにクロック端子(CKn)の
立ち下がりでD端子の値を読み込み、Qp、Qnに反映します。(立上がりタイプもある)
このような動作はエッジ・トリガなどとも言います。

D-フリップ・フロップをNANDで構成するためには更に多くのNANDを組合わせて
タイミングを調整する必要があるため、ここでは扱いません。
回路図
(1)NANDによるスルーラッチ

(2)シンボル化したスルーラッチの例
スルーラッチ(やD-フリップ・フロップ)は論理回路の中でたくさん使用されるため
専用のシンボルが用意されています。
下図の他に、Qn端子がないものなど、いくつかバリエーションがあります。

回路の動作
回路図において、信号名の最後にnがついた信号は"L"でアクティブ(有効)で
あることを示し、負論理の信号と言います。
また、信号Qnは信号Qpを反転したものでもあります。
なお、信号名の最後にnを付けて負論理を表すやり方は、
必ずしも一般的ではありません。
- EN="H"のとき
(1-1)D="L"のとき
D="L"なのでsn="H"となります。そうするとEN="H"なので、rnは"L"となります。
sn="H"、rn="L"なのでリセット動作となり、Qp="L"、Qn="H"となります。
この結果、QpはDと同じ"L"となります。

(snのsは小文字なので大文字のSpの反転ではありません。
rnは結果的にRpの反転ですが。念のため。)
(1-2)D="H"のとき
EN="H"かつD="H"なのでsn="L"となります。そうするとrnは"H"となります。
sn="L"、rn="H"なのでセット動作となり、Qp="H"、Qn="L"となります。
この結果、QpはDと同じ"H"となります。

このように、EN="H"のときQpはDと同じ値になるので、
スルー動作をしていることになります。
- EN="L"のとき
sn="Hかつrn="H"となります。なので、Dに関係なく、
Qp、Qnは保持動作となります。

以上の動作を真理値表で表すと下記となります。
| EN | D | Qp |
Q* |
| L | X | 保持 | 保持 |
| H | L | L | H |
| H | H | H | L |
動作波形の例(再掲)

スルーラッチを同期方式で使用する
応用として、T-フリップフロップを実現することを考えます。
D-フリップフロップなら次のように接続するとT-フリップフロップを
簡単に構成出来ます。

前回のクロックで読み込んだ値の反転(Qn)を次のクロックの
タイミングで読み込めば、クロックの度にQp、Qnが反転し、
T-フリップフロップとなります。

CKn↓に対しQnの変化はディレイにより少し遅れるので
Dは前回のQnの値を確実に記憶出来ます。
厳密にはセットアップ時間、ホールド時間、
クロック・スキューなどの議論が必要です。
ところがスルーラッチでは同じことが出来ません。QnをDに直接戻すと、
EN="H"のときインバータの入出力を接続したのと同じ論理になるので
発振してしまうからです。

そこで、ふたつのスルーラッチを"H"レベルがオーバーラップしない
2相クロック(φ1、φ2)で動作させます。

このようにするとふたつのスルーラッチが同時にスルーになることはないので
うまく動作します。スルーラッチが多くなる大きなシステムの場合、クロックを
更に3相、4相にすることも考えられます。

しかし、このようにスルーラッチが増えるならば、最初からD-フリップフロップを
使えばよいではないか、という話になりますし、D-フリップフロップならクロックも
1相で済みます。またIC化した場合もわざわざスルーラッチにする必要がないので
今ではとくに理由がない限りD-フリップフロップを使うのが標準になっています。
(余談ですが、昔ECL(Emitter-coupled logic)などでは発熱などの制約でICの
集積度が上げられなかったことから、少ないゲート数で実現出来るスルーラッチを
標準で使うこともあったようです。)
今後の課題
- NANDで実現したRS-FFついて動作確認を行う
トランジスタ・パルス回路の実験−
DTL-NANDによるスルーラッチの実験に記載予定。
参考文献
- とくになし
関連項目
- トランジスタ・パルス回路の解析−
NANDによるRS−FF
- トランジスタ・パルス回路の解析−
DTLによるNAND
NANDの実現方法はバイポーラ・トランジスタである必要はなく
FETやCMOSでも構わないので、NANDによるFFの実現は論理回路における
一般的な理論になります。
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