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トランジスタのスイッチ動作
工事中(2015/01/26)
回路の機能
トランジスタがスイッチのようにONとOFFの動作をします。
トランジスタ・スイッチのON/OFFは電圧または電流により制御します。
また、トランジスタには電流増幅作用があるため、少ない電流で大きな電流(FFE倍)を
ON/OFF制御出来ます
設計仕様
(1)電源電圧(Vcc): Vcc(min)~Vcc(max)
電源電圧は一般的に正確にVccである訳ではなく、ある幅で変動します。
この変動幅内で回路の動作を保障する必要がありますが、設計値は更に
その電源仕様よりも厳しい値にする必要があります。
その設計値の電源電圧の最小値をVcc(min)、最大値をVcc(max)とします。
(2)入力レベル(Vi)
Vih(min):3.5[V]
Vil(max):0.3[V]
この回路の性質上、Vih(min)は高めに、Vil(max)は低めにした方が設計が楽になるため
上記の値としました。
(3)入力電流(Ii)
Iih(max):規定しません。
Iil(max):規定しません。
トランジスタのON/OFF制御は入力電圧(Vi)で行うと考え、電流は規定しない
ことにします。ただし、結果的にいくらになるかの計算は行います。
(4)出力電流(Io):
トランジスタON時 :Ion(max)
トランジスタOFF時:Ioff(max)
OFF時はもちろん電流を流す必要はありませんが、回路設計上Ioff(max)まで
許容して検討することにしました。
回路図
回路の動作原理
(1)トランジスタのOFF動作
バイポーラ・トランジスタにおいてベース電流IBを次第に減少させていくと
コレクタ電流Icは
Ic = hFE * IB
の関係があるためIcも次第に減少していきます。
このためコレクタの抵抗Rcの電圧降下も減少していき、出力電圧Voは
次第に上昇しVccに近づいて行きます。
やがて、IB≒0mAになると、Ic≒0mAになるためVo≒Vccとなります。
Ic=0とゆうことは電流が流れないので、スイッチのOFF状態と等価です。

トランジスタの静特性
で見ると、OFF状態とゆうのは遮断領域にあることを
意味します。

(2)トランジスタのON動作
バイポーラ・トランジスタにおいてベース電流IBを次第に増加させていくと
コレクタ電流Icは
Ic = hFE * IB
の関係があるためIcも次第に増加していきます。
コレクタ電流が増加すると抵抗Rcでの電圧降下が次第に大きくなりVoは低下していきます。
Ic = Vcc/Rcまで電流が増加すると、トランジスタのコレクタ~エミッタ間電圧VCE
はほぼ0
(厳密にはVCE(sat))となります。よってVoもほぼ0となります。

VCEが0になると、もうそれ以上IBを増加させても
Icは増加しなくなります。この状態を飽和状態といい、スイッチのON状態に相当します。
トランジスタの静特性
で見ると、ON状態とゆうのは飽和領域にあることを
意味します。

ON状態で流れるコレクタ電流Icは負荷抵抗Rcで決まります。すなわち、
Ic = (Vcc - VCE(sat)) / Rc ≒ Vcc/Rc
上記のように入力電圧Viによりトランジスタのコレクタ~エミッタ間を
スイッチのようにONとOFFの状態に制御することが出来ます。
(この回路では実際のスイッチとは異なり、電流はコレクタからエミッタ方向にしか
流すことは出来ません。双方向に電流を流すためには回路上の工夫が必要です。)
回路定数の設計
- トランジスタの選定
(1)コレクタ・エミッタ間電圧(VCEO):
トランジスタがOFFのとき、コレクタ・エミッタ間には電源電圧:Vccが
印加されます。従って、少なくともVCEO>Vcc(max)である品種
を選定する必要があります。
(2)コレクタ電流(Ic):
トランジスタがONのとき、コレクタには出力電流Ion(max)が流れ込みます。
従って、コレクタ電流Icの最大定格が少なくてもIon(max)より大きい品種を選びます。
- RBの決定
(1)トランジスタON動作時

出力電流Ion(max)を流すために十分なベース電流IBが流れるように
RBを設定します。トランジスタの特性式より
Ic = hFE * IB
ですから、
Ic(min) > Ion(max)とすればよいので
Ic(min) = hFE(min) * IBON(min) > Ion(max)
∴IBON(min) > Ion(max) / hFE(min)
ですが、トランジスタを確実に飽和状態とするためには必要なベース電流の
5~10倍のIBを流します。言い換えると、飽和状態ではhFEが
1/5~1/10になると考えます。ここではN倍のIBを流すとすれば、上式は
IBON(min) = N * Ion(max) / hFE(min)・・・・・①
となります。一方、回路構成より
IBON = (Vih - VBE)/RB
∴IBON(min) = {Vih(min) - VBE(max)}/RB(max)
です。従って
RB(max) = {Vih(min) - VBE(max)}/IBON(min)
この式に①式を代入すると、
RB(max) = {Vih(min) - VBE(max)} * hFE(min) / {N * Ion(max)}
抵抗器の誤差をξとすればRB(max) = RB*(1 + ξ)なので
RB = {Vih(min) - VBE(max)} * hFE(min)
/ {(1+ξ) * N * Ion(max)}・・・・・(*)
(2)トランジスタOFF動作時
通常は、トランジスタのON条件からRBを決定すればそれで終わりですが
ここではOFF条件を考えてみます。

出力電流をIoff(max)以下にするためのIBOFF(max)を検討します。
トランジスタの特性式より
Ic = hFE * IB
ですから、
Ic(max) < Ioff(max)とすればよいので
Ic(max) = hFE(max) * IBOFF(max) < Ioff(max)
∴IBOFF(max) < Ioff(max) / hFE(max) ・・・・・②
となります。一方、回路構成より
IBOFF = (Vil - VBE)/RB
∴IBOFF(max) = {Vil(max) - VBE(min)} / RB(min)
です。この式を②式を代入すると、
{Vil(max) - VBE(min)} / RB(min) < Ioff(max) / hFE(max)
従って
RB(min) > {Vil(max) - VBE(min)} * hFE(max) / Ioff(max)
抵抗器の誤差をξとすればRB(min) = RB*(1 - ξ)なので
RB > {Vil(max) - VBE(min)} * hFE(max) / {(1-ξ) * Ioff(max)}
この式から、もし分母のIoff(max)を0にしてしまうと、分子は∞となってしまいます。
これを防ぐためには分子も0にする必要があります。すなわち、Vil(max) = VBE(min)
とする必要があります。これは、Vil(max)はVBE(min)より高くなる仕様は
実現出来ないことになります。
しかし、もし、Vil(max)<VBE(min)であるならば、
RBを決める式は(*)のみで決定してよいと考えられます。
ところで、このVBE(min)は0.6~0.8[V]と考えたくなりますが、
そうではありません。VBE(min)が0.6~0.8[V]となるのは
トランジスタが能動状態のときの話で、IBが減少して
遮断状態に近づくと下図のようにVBEは0[V]に近づいていきます。

そうるすと、Ioff(max)=0とするためにはIB=0とする必要がありましたが
そのためには、VBE=0、すなわちVil=0[V]としなければなりません。
実際には、VBE=0.2~0.3[V]のあたりでIoff(max)≒0となりますが
この結果トランジスタをOFFさせるためのVil(max)は比較的0[V]に近い値となります。
(このVil(max)が机上の計算の段階でどの程度になるかを一般的には
計算困難と思われます。VBE-IB特性を指数関数で近似すると
計算できそうですが、温度の影響を受けるので厳密な計算をして
もワーストの値を確定するのは難しいと考えます。)
(3)ベース電流IBON(max)の計算
課題
- スイッチング特性(AC特性)の検討
参考文献
関連項目
- エミッタ接地回路におけるトランジスタの静特性
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