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トランジスタ・インバータの特性測定実験
本ページ作成。(2026/07/06)
実験の目的
バイポーラ・トランジスタを使った簡単なインバータ回路について設計と実験を行います。
回路の設計にあたってはワースト・ケース(最悪値)を意識しながら、入力の閾値を
仕様通りの範囲に収めることを目指します。
実験課題
下記の項目について測定と観測を行います。
- 入出力静特性測定
レベルシフト・ダイオードの効果を入出力静特性で確かめます。
- 矩形波入力時の出力波形観測
RB2があるときとないときの波形を比較し
RB2の効果を確かめます。
実験回路
RB1は10[kΩ]と2.2[kΩ]を直列にしてます。

実験回路の動作
ディジタル信号の論理レベルを反転します。
トランジスタ・スイッチの実験で使用した回路も、一種のインバータとして動作しますが
HレベルのとLレベルを分ける閾値の電圧が低く、L信号時のノイズ・マージンが小さい
という問題があります。
閾値の電圧を上げる方法として、トランジスタのベースにレベルシフト・ダイオードを
挿入する方式が今回の回路です。
インバータ回路の解析についての詳細は、トランジスタ・パルス回路の解析に
記載したトランジスタ・インバータ
の項を参照してください。
実験回路の設計
- 信号の電圧レベル
本来であれば、最初に論理素子間の電圧レベルの仕様を決めます。
出来ればTTL(Transistor Transistor Logic)と呼ばれるディジタルICの
規格に準じたかったのですが、回路方式の違いからか、RB1とRB2の計算が
なかなかうまくいかなかったので、計算結果に合うように電圧レベルを
決めたというのが本音です(-_-;
結果的には、今回は下図のように決めたのですが、
H側のノイズ・マージンが0.3[V]と小さくなってしまいました(T_T;

- 設計条件
(1)電源電圧
Vcc: 5V±5%(5V±0.25V)
(2)出力電流(IO)
IOH(max): 0.9mA
IOL(max): 3mA
(3)入力電流(II)
IIH(max): 0.38mA
IIL(max): 0mA
IIHは流れ込み、IILは流れ出しの電流値です。
IIH(max)は計算上、結果的にこの値になった結果です。
(4)出力レベル(VO):
VOH(min): 3.8V
VOL(max): 0.4V
VOL(max)は事実上トランジスタ飽和時のコレクタ〜エミッタ間電圧で
決まってしまうので、データシートの値よりやや大きめにしてあります。
(5)閾値レベル(VT):
VT(max): 3.5V
VT(min): 1.0V
閾値です。1.0[V]から3.5[V]の間になるよう設計します。
これもRB1とRB2の値が決まるよう試行錯誤して
決めた値です。(-_-;;
(6)トランジスタ直流電流増幅率(hFE):
hFE(min): 120
hFE(max): 240
トランジスタは2SC1815のYランクを使用します。
(7)トランジスタのコレクタ電流の最大値(IC(max)):10mA
IC(max)は出力電流IOH(max)より大きい必要があります。
(8)抵抗器の最大誤差(α):5%
昨今は安価なP型カーボン抵抗でも1%誤差が一般的ですが、
何でも使えるように5%誤差としました。
- Dの選定
汎用品の1S1588を使います。
- Rcの選定
次の式で範囲が決まります。
VCC(max) / [{IC(max) - IOL(max)}*(1-α)]
≦ Rc ≦ (VCC(min) - VOH(min)) /
{IOH(max)*(1+α)}
仕様で与えられた値を代入すると
5.25[V] / [{10[mA] - 3[mA]}*(1-0.05)] ≦ Rc ≦ (4.75[V] - 3.8[V]) / {0.9[mA]*(1+0.05)}
∴ 789[Ω] ≦ Rc ≦ 1005[Ω]
E6系列から選定して
RC = 1[kΩ]としました。
もしRcがこの式の範囲に収まらないならば、要求仕様を見直すことに
なるでしょう。
- RB1、RB2の選定
次のふたつの式で範囲が決まります。
IC(max) / hFE(min) ≦
(VT(max) - VD(max) - VBON) /
{(1+α) * RB1} - VBON / {(1-α) * RB2}
VBOFF ≧ {VT(min) - VD(min)} *
(1+α) * RB2 / {(1-α) * RB1 + (1+α) * RB2}
仕様で与えられた値を代入すると
10[mA] / 120 ≦ (3.5[V] - 0.9[V] - 0.9[V]) / (1.05 * RB1) -
0.9[V] / (0.95 * RB2)
0.4[V] ≧ (1[V] - 0.4[V]) * 1.05 * RB2 /
(0.95 * RB1 + 1.05 * RB2)
計算すると
0.083[mA] ≦ 1.63 / RB1 - 0.95 / RB2
0.4[V] ≧ 0.63 * RB2 / (0.95 * RB1 + 1.05 * RB2)
∴ RB2 ≦ 1.81 * RB1
RB2 = 1.81 * RB1
として、第1の不等式に代入して計算すると
RB1 ≦ 13.373[kΩ]
RB2 ≦ 24,205[kΩ]
E6系列から選定しますが
RB1は10[kΩ]と2.2[kΩ]の直列(=12.2[kΩ])、
RB2は22[kΩ]としました。
念のためこれらの値をふたつの不等式に代入してみると、不等式が
成り立っていることが確認出来ます。
- 入力電流の計算
(1)LレベルのときはダイオードがOFFになるので電流はほとんど流れません。
(IIL(max)≒0)
(2)Hレベルのときの最大電流(IIH(max))ですが、計算するためには
トランジスタがONになる最低電圧が必要です。
この値は低くてもせいぜい0.5[V]〜0.6[V]ですが、
マージンをみてVBOFFと同じ0.4[V]で計算しました。
また、Hレベル時の信号電圧の最大値(VIH(max))はVccとしました。

IIH(max) = {VIH(max) - VD(min) - VBOFF}
/ RB1(min)
= (5.25 - 0.4 - 0.4) / (0.95 * 12.2[kΩ) ≒ 0.38[mA]
この結果、ファンアウト(1個の論理素子が何個の論理素子をドライブできるか)は
ファンアウト = IOH(max) / IIH(max) = 0.9[mA] / 0.38[mA] ≒
2.4[個]
なので、ファンアウトは2個ということになります。
- 入出力静特性測定
(1)下図の回路を組み立てます。

(2)ディジタル・テスターでViを測定しながらVR 2kΩを調整し電圧Viを設定します。
(3)ディジタル・テスターでVoを測定します。
(4) (2)〜(3)を繰返してにViとVoの特性データを採取します。
- 波形測定
(1)下図の回路を組み立てます。

(2)2現象オシロスコープでViとVoの波形を観測します。
(3)矩形波発振器の出力レベルは0-5Vの電圧レベルとし、オシロの波形を見ながら
周波数を適当に設定します。
(4)RB2を取り外し、付けているときとの波形の違いを観察します。
実験機材
- 電子ブロック
使用したブロックは、実験方法の
電子ブロックの配置を参照。
- 簡易安定化電源 (5[V]端子)
- 可変抵抗器(2kΩB)
- ディジタル・テスター
- オシロスコープ
- 矩形波発振器
実験結果
- 入出力静特性の測定
(1)今回の回路の入出力特性(室温:25℃)

(2)トランジスタのスイッチ動作の基本
で測定した
レベルシフト・ダイオードがない場合の入出力特性(参考)

(注)グラフの立上がりがゆがんでいるのは、測定に使用した
アナログ電圧計の精度の問題と思われます。
- 波形測定
発振器の周波数は約77kHzに設定しました。
(1)RB2あり

上:VI 2V/div、2μs/div
下:Vo 2V/div、2μs/div
(2)RB2なし

上:VI 2V/div、2μs/div
下:Vo 2V/div、2μs/div
考察
- 入出力静特性の測定
閾値は設計値:1.0[V]〜3.5[V]に対し、実測値:1.4[V]〜1.9[V](常温)となり、
設計の範囲に収まりました。
レベルシフト・ダイオードの挿入により、ダイオードがない場合より
約1.0[V]閾値の電圧が高くなり、効果が確認出来ました。
- 波形測定
RB2があるとき、入力(VI)がLレベルになった瞬間から出力(VO)が
立ち上がるまで約3[μs]かかり、スピードアップ・コンデンサほどの
効果はないようです。しかし、RB2を外すと、VOのVIに対する
遅延は4[μs]に広がり、波形の立ち上がりも丸まってしまうことから、
RB2の効果があることが確認出来ました。
- 【追加実験】スピードアップ・コンデンサの追加
RB2があっても、Voの立ち上がりの遅延が気になったので
ためしに下図のように100[pF]のスピードアップ・コンデンサ(Cs)を
追加してみました。

スピードアップ・コンデンサの実験で
確認済みですが、
劇的な効果がありました。スピードアップ・コンデンサを追加すると
RB2があってもなくても波形は変わりませんでしたが、ベース端子が
ハイ・インピーダンスにならないように、RB2は残すべきだと思います。

今後の課題
- トランジスタNAND回路の実験への応用
参考文献
- パルス回路の設計(昭和56年(1981) 第20版(改訂10版)) P-132〜137 インバータ、
猪飼國夫著、 CQ出版社
- 解析ディジタル回路(昭和56年(1981) 第11版)、岡村迪夫著、CQ出版社
関連項目
- トランジスタ・パルス回路の解析−
トランジスタのスイッチ動作の基本
- トランジスタ・パルス回路の解析−
トランジスタ・インバータ
- トランジスタ・パルス回路の実験−
トランジスタ・スイッチとLEDの点灯/消灯制御実験
- トランジスタ・パルス回路の実験−
スピードアップ・コンデンサの実験
- 簡易安定化電源 (5[V]端子)
- 可変抵抗器(2kΩB)
- 矩形波発振器
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