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ツェナー・ダイオードの静特性の測定(直流電位差計による)
本ページ作成。(2024/09/15)
実験の目的
ツェナー・ダイオードの逆方向静特性を測定し、電流を変化させても
逆方向電圧がほぼ一定となることを確認します。
実験課題
ツェナー・ダイオードに逆方向電圧をかけ、流れる電流と電圧を測定し、
測定結果をグラフに書き、逆方向電圧が一定となることを確認します。
- ツェナー・ダイオード:1N5338B (許容電力:5[W])
- ツェナー・ダイオード:1N5231B (許容電力:500[mW])
ツェナー・ダイオードの静特性
ツェナー・ダイオードはPN接合に対し、N型(カソード)に+、P型(アノード)に−の
電圧をかけたときを逆方向電圧と呼び、ツェナー電圧においては、
流す電流を変えてもほとんど両端の電圧(Vz)は変化しません。

ツェナー・ダイオードの静特性をグラフで表すと下記のようになります。

実験回路
- 実験回路全体

- 直流電位差計詳細

実験方法
ツェナーダイオードの逆方向電流は、逆方向電圧をわずかに変えただけでも
大きく変化します。このため、逆方向電圧の測定には、
分解能のある測定器を使用する必要があります。
近年はディジタル・テスターが安価かつ容易に手に入りますが、
本実験では直流電位差計を使用します。
ツェナーダイオード両端の電圧を直接測定するために、電圧計と電流計の接続としては、
AV法により測定を行います。
逆に、VA法を使用すると、電流計の両端に発生する電圧がツェナーダイオードの逆方向電圧の
測定値に対して大きな誤差を発生させます。

電流計については、測定範囲に合わせて、測定電流が50μAより小さいときは、
アナログ直流電流計(50μA)を使用し、50μAを超える範囲ではアナログ・テスター
を使用します。 以下に測定手順を示します。
- 回路図を組立ます。電源はまだ接続しません。
100μAセンターメータは標準電圧発生器に接続します。
- 標準電圧発生器の感度スイッチを"低"に設定します。
- ケルビンバーレーポテンショメーターのロータリスイッチを"4096"に設定します。
- 12V電源を接続し、標準電圧発生器の電源をONにします。
- 100μAセンターメータが0になるように2kΩ可変抵抗器を調整します。
- 標準電圧発生器の感度スイッチを"高"に設定します。
- 100μAセンターメータが0になるように2kΩ可変抵抗器を調整します。
- 標準電圧発生器の感度スイッチを"低"に設定し、標準電圧発生器との接続を外します。
この段階では直流電位差計はツェナーダイオードに接続しません。
ツェナーダイオードに流れる電流が小さいときに平衡のとれていない直流電位差計を
ツェナーダイオードに接続すると、直流電位差計からツェナーダイオードに電流が流れ込むからです。
(電位差計の平衡をとろうとすると、ツェナーダイオードの電流が変化します。)
- ツェナーダイオードに電流を流す6V電源を接続します。
- 5kΩの可変抵抗器を調整して、ツェナーダイオードに測定電流が流れるようにします。
- 直流電位差計をツェナーダイオードに接続します。
ツェナーダイオードに流れる電流が変化するかもしれませんが、5kΩの可変抵抗器の設定は
この段階では変えません。
- ケルビンバーレーポテンショメーターのロータリスイッチを調整して
100μAセンターメータが0になるようします。
- 感度スイッチを"低"から"高"に切り換え、再度100μAセンターメータが
0になるようします。
- この時点で、ツェナーダイオードの電流が測定値からずれていれば5kΩの
可変抵抗器を調整します。
- 必要ならセンタメータの0と、ツェナーダイオードの電流を交互に調整します。
- 調整が完了したらケルビンバーレーポテンショメーターのロータリスイッチの
値を読み取ります。今回は、0.01〜0.0001の設定がそのままツェナーダイオード両端の
電圧となります。
- センタメーターの感度スイッチを"低"に切り換えます。
- 直流電位差計をツェナーダイオードから切り離します。
以下、10〜18を繰り返して測定を続けます。
実験機材
- ツェナー・ダイオード:1N5338B
(許容電力:5[W])

- ツェナー・ダイオード:1N5231B
(許容電力:500[mW])

- ケルビンバーレーポテンショメーター
- 標準電圧発生器
- アナログ直流電流計(50μA)
- 可変抵抗器(5kΩB)
- 可変抵抗器(2kΩB)
- 固定抵抗器(150Ω)
- アナログ・テスター
- 簡易安定化電源
実験結果
IDとVDは本来、符号はマイナスですが、下記の表とグラフはプラスで表示してます。
- 測定データ

- 1項データのグラフ

- 測定データ(縦軸:IDの対数を取ったもの)
電流IDの対数をとってグラフを描くと、ほぼ直線となりました。
赤線は直線です。

考察
- ツェナー電圧
(1)1N5338B
仕様 | 実測 |
条件(Iz)[mA] | Vz(min)[V] | Vz(typ)[V] | Vz(max)[V] | 条件(Iz)[mA] | Vz[V] |
240 | 4.85 | 5.1 | 5.36
| 10 | 4.47 |
実測の電流(Iz=10mA)が仕様の条件(Iz=240mA)より小さいため、
ツェナー電圧(Vz)の実測値は仕様より小さくなりました。
(2)1N5231B
仕様 | 実測 |
条件(Iz)[mA] | Vz(min)[V] | Vz(typ)[V] | Vz(max)[V] | 条件(Iz)[mA] | Vz[V] |
20 | 4.845 | 5.1 | 5.355
| 10 | 4.85 |
実測の電流(Iz=10mA)は仕様の条件(Iz=20mA)より小さいですが、
実測値は仕様の範囲に入りました。
(3)ツェナー電圧のまとめ
ツェナー電圧(Vz)は、測定条件(Iz)のときの電圧であるため、この条件より
小さい電圧で使用すると、ツェナー電圧は仕様より小さくなることが判りました。
従って、許容電力の大きいツェナー・ダイオードを測定条件より小さい電流で使用すると
ツェナー電圧(Vz)が仕様より小さくなるので注意が必要だと思います。
- 直流等価抵抗(Zz)の計算(概算値)
(1-1)1N5338B(1mA付近、0.8mAと1mAでの傾きを計算)
(3.758[V] - 3.677[V])/(1.0[mA] - 0.8[mA]) = 405[Ω]
(1-2)1N5338B(10mA付近、8mAと10mAでの傾きを計算)
(4.472[V] - 4.408[V])/(10[mA] - 8[mA]) = 32[Ω]
条件(Iz) | Zz仕様[Ω] | Zz実測[Ω]
| 1mA | 400 | 405 |
240mA | 1.5 | (参考:32[Iz=10mA]) |
(2-1)1N5231B(0.25mA付近、0.2mAと0.4mAでの傾きを計算)
(3.830[V] - 3.588[V])/(0.4[mA] - 0.2[mA]) = 1210[Ω]
(2-2)1N5231B(10mA付近、8mAと10mAでの傾きを計算)
(4.849[V] - 4.796[V])/(10[mA] - 8[mA]) = 26.5[Ω]
条件(Iz) | Zz仕様[Ω] | Zz実測[Ω]
| 0.25mA | 1600 | 1210 |
20mA | 17 | (参考:26.5[Iz=10mA]) |
(3)直流等価抵抗のまとめ
直流等価抵抗は小さい方が良いのですが、動作点によって大きく変化します。
(グラフの接線の傾きの逆数なので、電流が大きい方が抵抗が小さい)
データシートに記載の値は測定点におけるtyp値と思われます。
なので、仕様と実測で概ね一致していればよいと考えました。
- ツェナーダイオードの静特性
ツェナーダイオードの逆方向電圧と電流との関係は指数関数に近いことが判りました。
従って、電流が変化しても逆方向電圧が一定であるためには、ある程度電流を流す必要が
あることが判ります。すなわち、電流の値が大きい方が等価的な直流抵抗が減少します。

今後の課題
- ツェナーダイオードが発生するノイズの検討
参考文献
- ツェナー・ダイオード:1N5338B データシート
- ツェナー・ダイオード:1N5231B データシート
関連項目
- 直流電位差計の原理
- ケルビンバーレーポテンショメーター
- 標準電圧発生器
- AV法
- 簡易安定化電源
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