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CR移相発振回路の設計


一応(?)本ページ完成(2014/05/05)
  1. 回路構成と機能

    基本的な回路構成は下図となります。
    反転増幅回路の出力VoをCR回路3段による移相回路により180度位相を
    ずらして増幅回路の入力に戻すと正帰還がかかり発振します。


  2. 回路の特徴

    周波数としては低周波(〜1MHzくらい?)までの正弦波で発振します。

    発振周波数の決定にコンデンサや増幅器のパラメータが影響するため
    温度などの影響によりコンデンサの容量や増幅器のパラメータが変化するため
    発振周波数は安定ではありません。
    また、発振周波数が低周波であるため発振周波数を決める移相回路の
    コンデンサの容量が大きくなること、また移相回路の抵抗器が3個あり
    同時に可変するためには3連以上の可変抵抗器が必要となるため
    一般的に発振周波数の可変には向いていません。
    (移相回路の抵抗は、1個または2個を可変しても発振周波数か変わるが、
    可変範囲は狭くなる)
  3. 動作原理


    増幅度が-29倍の反転増幅回路とCRが3段(以上)の移相回路により構成されます。
    反転増幅器により入力電圧Viと出力電圧Voとは位相が180度ずれています。
    帰還回路により、出力電圧Voの位相を更に180度ずらして増幅器の入力に加えると
    全体で360度位相がずれ元に戻るため、正帰還がかかり位相条件を満足するようになります。

    位相を変えるためにCRによる微分回路を使用します。
    1段のCR回路で90度(未満)の位相を変えられるので、180度位相を変えるためには
    最低3段のCR回路が必要になります。


    増幅度の29倍とゆうのは、3段のCR移相回路による損失が1/29であるためです。
    この増幅度が29倍より小さいと、回路は発振しません。
    正帰還された信号が、次第に減衰してしまうためです。
    また、29倍よりあまり大きいと、正弦波の歪が大きくなります。
    歪の小さな発振回路とするためには増幅回路にAGC(自動利得制御)などの
    回路を付加する必要があります。
    このような工夫をしない限り、一般的に、本回路が生成する正弦波の歪は大きいです。

  4. 回路図の例

    1. トランジスタ1段構成の場合


    2. トランジスタ2段構成の場合


    3. 演算増幅器の場合
      【後報】

  5. 部品選定

    増幅回路は増幅度を29倍(よりやや大きめ)に設定します。
    一般的な増幅回路そのものなので、詳細は増幅回路の設計を参照してください。
    上記の回路図例においてCiはカップリング・コンデンサなので発振周波数に
    影響を与えないようにCi>>Cとなるように選定します。

    発振周波数fは、
    f = 1/(2π√6 CR)
    で与えられます。
    それぞれ3個あるCとRの値は必ずしも同じ値である必要はありませんが、
    異なる値とすると発振周波数の計算が煩雑になること、
    また使用する部品の種類が増えてしまうことから
    通常は3個とも同じ値を使用します。

    また、上記のfの式は、増幅回路の入力インピーダンスが無限大
    出力インピーダンスが零であることを前提としているため
    実際の回路でこれらの条件からずれる場合は発振周波数が若干、
    計算式からずれることになります。
    しかし、もともとこの回路は正確な周波数の発振には向いていないので
    理想的な増幅回路でなくても問題はないことが多いです。
    逆に、正確な発振周波数が必要な場合は、別な回路構成とすべきです。
  6. 関連項目

  7. 参考文献


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