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アナログ直流電流計の校正実験


本ページ作成(2013/12/07)
  1. 実験の目的

    アナログ電流計とディジタル・テスターとで種々の大きさの同一の
    電流を測定し、その測定値を比較する。
    この際、一応ディジタル・テスターの指示値が正しいものとして
    アナログ電流計の補正率を求める。
  2. 実験課題

    アナログ電流として、下記の二種類について校正を行う。
    1. 可動コイル型直流電流計(50μA)
    2. テスターの直流電流レンジ:10mA
  3. 実験方法

    1. 可動コイル型直流電流計(50μA)の校正
      下図の回路接続を行い、可動コイル型直流電流計(50μA)の校正をする。
      可変抵抗器(VR)を最大にしたとき、 電流計に過大な電流が流れないように、
      47[kΩ]の固定抵抗器を電流計と直列に接続します。
      VR最大時の電流は、電流計の内部抵抗を0とした場合、
      3[V]/47[kΩ] = 63.8μA
      である。可動コイル型電流計は、最大測定値の3倍程度の過電流には
      耐えられると言われているので、電流制限抵抗は47[kΩ]としました。
      当然、電池を接続する前にVRは最小になるよう設定しておき、
      電池は最後に接続します。


    2. テスターの直流電流レンジ10mAの校正
      下図の回路接続を行い、アナログ・テスターの10mA電流レンジを校正します。
      可変抵抗器(VR)を最小にしたとき、 電流計に過大な電流が流れないように、
      220Ωの固定抵抗器をVRと直列に接続します。
      VR最小時の電流は、電流計の内部抵抗を0とした場合、
      3[V]/220[Ω] = 13.6mA
      です。可動コイル型電流計は、最大測定値の3倍程度の過電流には
      耐えられると言われているので、電流制限抵抗は220Ωとしました。
      当然、接続にあたり電池は最後に接続し、接続する前にVRは最大になるよう
      設定します。

  4. 実験機材

    1. 可動コイル型直流電流計 (アナログ直流電圧計の電流端子を利用)
    2. アナログ・テスター
    3. ディジタル・テスター
    4. 乾電池
      1.5[V] ×2本、 電池ホルダー
    5. 可変抵抗器(5kΩB)
    6. 固定抵抗器
       ・47kΩ
       ・220Ω

  5. 実験結果

      測定結果である、ディジタル・テスタの読みIdとアナログ電流計の読みIaから、
      下記の式で補正率αを求めて、横軸をIaにしてグラフを書きます。

      α= ( Id / Ia - 1) × 100

    1. 可動コイル型直流電流計(50μA)の校正


    2. テスターの直流電流レンジ10mAの校正


  6. 考察

    1. 可動コイル型直流電流計(50μA)の校正
      フルスケール(50μA)のときの補正率が5.4%もありました。
      今回使用したパネルメータは2.5級なので、相対誤差は2.5%以内に入ることを
      期待しましたが、実際の誤差はもっと大きいようです。
      今回の実験では、ディジタルテスタの誤差は考慮していませんが、
      一般的に、ディジタルテスタの誤差はもっと小さいと考えてよいと思います。
      (何故、パネルメータの誤差が期待したより大きいのか私はその辺の
      事情を知りませんが、価格とかと関係があるかも知れません。
      ただ、私個人はパネルメータの誤差はこの程度だと思っています。)

      測定電流が小さいとき(フルスケールに対して大体20%以下)のとき
      補正が大きくなっていますが、これは読み取りの誤差がメータの
      0付近とフルスケール付近とで同じになるため、相対誤差としては
      測定値が小さい程、相対誤差に効いてくるためと思われます。
      今回の実験のように補正率を求めれば補正出来そうですが、
      通常、そこまではやらないと思うので、そうであれば、
      複数のレンジのあるアナログメータで測定を行う場合は
      出来るだけメータの針が大きく振れるレンジを用いて測定する
      べきであることが判ります。

    2. テスターの直流電流レンジ10mAの校正
      7mA測定時の補正が-2.9%になりました。
      テスタは内部に分流器や倍圧器を持っているため、誤差はアナログメータ単体
      より大きくるはずですが、補正率2.9%はこのテスタの価格(1200\)が安い割には
      良い値だと思います。
      また、当然ながらテスタの誤差(補正)はレンジによって異なりますので
      補正をかける場合はレンジ毎に補正率を測定する必要があります。
      ちなみに私の経験では多少価格の高い(5〜6k\)アナログテスタであっても
      レンジによっては誤差がびっくりするくらい大きい場合があるので注意が必要です。
      傾向を見るだけなら今回のようにグラフを作成しなくても、フルスケールに
      対する誤差を計ってみるだけでもよいと思います。

      測定電流が小さいときとき補正率が大きくなっていますが、この傾向は
      可動コイル型直流電流計(50μA)のときと同様です。
      7mAのときの補正が-2.9%あるので、3%くらいまでの補正を許容範囲とすれば、
      やはりフルスケールの20%くらいまでで使用すると誤差が小さくなると
      考えられます。

  7. 参考文献

    入門電気計測(16刷 1980)、西野治著、実教出版
    電気工学入門演習 電気計測(3版 1988)、金古喜代治、堤捨男著、学献社
    現代電気電子工学の基礎実験(1981)、元岡達編集、オーム社

  8. 関連項目

    1. 可動コイル型直流電流計の原理
    2. 電流計の接続
    3. 電流の定義
    4. 直流電流の精密測定
    5. オームの法則
    6. 電池
    7. 電気抵抗
  9. 実験中の様子

    1. 可動コイル型直流電流計(50μA)の校正


    2. 電流制限抵抗(47kΩ)の接続の様子


    3. テスターの直流電流レンジ10mAの校正




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