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非安定マルチ・バイブレータの設計
工事中(2012/12/10)
- 回路の機能
ふたつのトランジスタが交互にON、OFFを繰り返すことにより発振します。
安定点を持たないために非安定マルチ・バイブレータと呼ばれています。
別名として、無安定マルチ・バイブレータや自走マルチ・バイブレータ
と呼ばれることもあります。
発振波形は、矩形波(方形波)に近いですが、立上りは遅くなるため
少し丸まります。
回路のバリエーションが豊富で、発振周期やデューティの可変なども可能です。
また、FETやディジタルICにより実現することも出来ます。
ここでは、バイポーラ・トランジスタを用いた最も簡単な回路構成について
検討します。
- 設計仕様
(1)バイポーラ・トランジスタを使用した非安定マルチ・バイブレータとする。
(2)周波数、デューティ・サイクルは固定
- 回路図
- 回路の動作原理
下記の回路図のようにCR結合された2段のトランジスタ増幅器の出力を
点線のように接続し入力に戻すと、位相が同じになるため
正帰還がかかり、回路は発振します。
このとき、帰還量が多いため、発振波形は正弦波とはならず
波形の上下が歪んで矩形波に近い波形となります。
この回路は二つのトランジスタ回路が同じ形をしているため、
通常、下図のように左右対称に記述されます。
この回路は必ずTr1とTr2のどちらか一方がON(飽和)状態、
他方がOFF(遮断)状態となっており、そして交互にON、OFFを
繰り返すととゆう特徴を持っています。
しかし、小信号増幅回路のようにトランジスタが線形な動作をする
わけではないため、増幅回路で使用した解析手法が使えません。
そこで、この回路の動作を改めて直流的な時間変化の観点から考えてみます。
(1)今、時間t=0において、Tr1がON、Tr2がOFFになったとします。
実は、t=0の直前において、C1はほぼ電位差がほぼ0(正確にはTr1をONさせるための
ベース電位である約0.6VにTr1のベース側が正になるよう充電されいる)であり
C2はほぼVcc(正確にはVcc-0.6V。0.6VはTr2がONするベース電位)に充電されています。
そして、Tr1がONすると、コレクタ電位Vc1はほぼ0(正確には飽和電圧)
となります。C1はほぼVccに充電されているため、VB2はほぼ-Vccとなり
Tr2はOFF状態となります。
一方、Tr1はONしているためベース電位VB1はほぼ0.6V位になります。
C1はほとんど放電しているため、Tr2のコレクタ電位は、Tr2がOFFしていても
VB1のベース電位と同じになります。
こうして、t=0の直後はTr1がON、Tr2がOFFの状態がしばらく安定します。
ここで、Tr2はOFF状態なので分りやすいように回路図から取り除きます。
t=0からt=1の間においては、赤線で示すように、Vcc⇒Rc2⇒C1⇒Tr1のベース
の経路で電流が流れるため、C1は次第に充電されます。
このため、C1の両端の電位は次第にVccに向かって大きくなるため、
Tr2のコレクタ電位は上昇し、Vccとなります。
一方、青線で示すように、Vcc⇒RB2⇒C2⇒Tr1のコレクタの経路でも電流が
流れるためC2に充電されていた電荷は次第に放電し、C1の電位は次第に
0に向かって減少していきます。
ここまでのTr1、Tr2のそれぞれのコレクタ電圧とベース電圧の波形を
図にすると下図のようになります。
C2の充電と、C1の放電は同時に進行しますが、通常RC2<<RB2であるため
Tr2のコレクタ電位の上昇が先に進行します。
更に時間が経過し、C2が放電し尽くし逆方向に充電が始まると、
VB2の電位がプラス方向にまで上昇し始めます。
そして、ついにTr2のベース電位VB2が0.6V位まで上昇するとOFFしていた
Tr2のベースに電流IB2が流れ始めます。
Tr2のベース電流IB2が流れ始めると、Tr2のコレクタ電流IC2が流れ始め、
コレクタ電位Vc2が低下し始めます。
Vc2が低下すると、C2を経由してTr1のベース電位VB1が低下するため
Tr1のベース電流IB1が減少し、更にTr1のコレクタ電流IB1が減少します。
このため、RC1の電圧降下が小さくなるため、Tr2のコレクタ電位Vc1は
上昇し始めます。
コレクタ電位Vc1の上昇は、C2を経由してTr2のベース電位の上昇させるため
この現象の発端となったTr2のベース電位の上昇が更に加速されることになります。
このため、短時間でTr2はOFF状態からON状態に遷移します。
また、同時にTr1はON状態からOFF状態に遷移します。
そして、遷移前の状態では、C2は約0.6Vに充電状態、C1はほぼVccにまで充電
されていたことから、今度はTr1とTr2が入れ替わった状態でTr2がt=1からt=2の期間に
t=0〜t=1の期間のTr1と同様な動作をします。
このように、Tr1とTr2が交互にON/OFFを繰り返すことによって
この回路は発振を継続するようになります。
発振波形は上図のようになりますが、コレクタ電位Vc1、Vc2の立ち上がりは
時定数C2*Rc1、C1*Rc2となる丸まった波形となります。
- 回路定数の設計
- 前提
- RC1、RC2
- RB1、RB2
- C1、C2
トランジスタのベース電位は、スイッチした瞬間ほぼ-Vcc程度に下がって
いますが、それがVccからRBを経由して放電されだんだん電位が上がり
ほぼ0V付近でトランジスタのベース〜エミッタ間に順方向電流が
流れたときONとOFFの状態が遷移します。
ベース電位の変化をグラフにすると下図のようになります。

この曲線はt=0のとき、-Vccを原点とすれば、2Vccを漸近線とする
CR回路の過渡曲線となるため次のような式になります。
V = 2Vcc * {1 - exp(-t/τ)}
τは時定数なので、CRです。
VBがほぼVB=0になったときトランジスタがスイッチするので
Vの式ではV = Vccになる時間が一方のトランジスタのOFF時間
となります。
Vcc = 2Vcc * {1 - exp(-t/CR)}
両辺をVccで割ると
exp(-t/CR) = 1/2
両辺の対数をとると
左辺 = logε{exp(-t/CR)} = -t/CR * logε(ε) = -t/CR
右辺 = logε(1/2) ≒ -0.7
∴ t = 0.7 * CR
このtは一方のトランジスタがOFFしている時間ですので、
回路の発振周期はそれぞれのトランジスタのOFF時間を足して
T = 0.7 * (C1*RB1 + C2*RB2)
- 発振周波数の計算
発振周期T
T = 0.7*(C1*RB1 + C2*RB2)
発振周波数f
f = 1/T = 1.4/(C1*RB1 + C2*RB2)
- 課題
- 参考文献
- 関連項目
- 固定バイアス回路
- トランジスタのスイッチ動作
- CR回路の過渡現象
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