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標準電圧発生器
本ページ作成。(2019/04/30 平成最後の日)
概要
直流電位差計として使用することを想定した標準電圧の発生装置です。
かつては、標準電池が使用されてしましたが、取り扱いが難しかったため
今は電子式にとって代わられました。
ここでは、自作しやすいように専用のICを使用し、特に気になる電圧の精度については
スペックで0.1%のIC(LM4040AIM3-4.1)が手に入りましたので、これを使用しました。
また、直流電位差計を使用する際はセンターメータの電流計も必要になりますが、
これも同一のケースに組み込みました。
仕様
- 標準電圧発生部
- 出力電圧:4.096V ±0.1%
- 出力電流:最大100μA
- 電源(2way)
(1)内部電池:6V (単四×4)
(2)外部電源:4.7V〜10V
- 消費電流
(1)内部電池使用時:1.9mA
(2)外部電源端子:〜5.9[mA](電源10V時)
- 電流計部
外観
- 前面
- 後面
回路図

回路構成
- 出力電流(標準電圧端子)
平衡法で使用する標準電圧源なので、平衡状態で流れる電流はほぼ0です。
(実際は電流計の検出可能な電流による。)
しかし、平衡がとれていない状態では電流が流れるので、その場合でも電流は
供給出来る必要があります。
今回は電流計に100μAの電流計を使用することを想定して
標準電圧の最大出力電流も100μAとしました。
ただ、測定の過程で一時的に100μAを超えることはありえます。
その場合でも、装置が燃えたり(?)壊れたりしないようにします。
- 電源
2-way方式としました。
一般的に、実験をやる環境では様々な装置を使うため、机上にはたくさんのケーブルが
交錯し合います。ので、ケーブルがなるべく少なくなるよう電池式にしたいところです。
そこで、まず電池で使用できるようにしました。シャントレギュレターの電圧が
約4.1[V]なので、電池の電圧も(4.1[V]+(R1+D2)の電圧降下)必要です。
電池の本数は増えると面倒なので、今回は単四4本としました。
ところで、直流電位差計は頻繁に使用する装置ではありません。
長く使用していないと当然電池の自然放電による電圧の低下が心配になります。
なので、測定を開始する前にラフでよいので、本装置の電池の電圧を測定して
おきたくなりそうです。そこで、電池の電圧を測定する電圧確認端子を設けました。
そうすると、今度は、いちいち電池の消耗を心配するなら、最初から外部から
供給したいと思うこともあるような気がしてきました。(オイオイ。笑)
外部電源の電圧としては、比較的身近にあると思われる5[V]電源を使用できる
よう下限は4.7[V]以上としました。
上限は、6、9、12、15[V]などを考えましたが、あまり高くすると
抵抗1本の簡単な回路ではシャントレギュレータに流れる電流が増えるので
今回は10[V]としました。
また、電池実装状態で外部電源を接続すると、乾電池が充電状態となり危険なので
ダイオードD1,D2によるOR回路を組み込みました。
電圧確認はORの出力で行います。
おまけの機能ですが、内部電池で使用する場合、電圧確認端子は電池に接続されているため
単なる電池としても使用出来ます。(^^;
- 電流計
直流電位差計で使用する電流計は平衡状態を確認するために電流が0であることを
観測します。このため、精度は必要なく出来るだけ高感度であることが必要です。
電流は直流ですが、プラスにもマイナスにも流れるため、出来ればセンターメータ
タイプを使用したいところです。
平衡に近い状態と、平衡状態から離れているときでは、電流計の振れ方が変わります。
平衡状態から離れているときでは、電流計に過大な電流が流れ、いきなり針が
振り切れてしまいます。可動コイル型電流計は過電流に強いと言われていますが、
使用勝手の点からも、感度を落とす機能があると使い易いと考え、直列抵抗を入れ、
これをスイッチ(SW2)でON/OFFすることにより感度を「高/低」の二段階に
切れかえるようにしました。
また、電流計は標準電圧源とは独立しているので、電流計単独で使用することも
出来ます。(このとは、感度スイッチは「高」(抵抗バイパス)に設定します。)
設計
入力電圧をVin、R1を流れる電流をI1
出力端子(標準電圧端子)の電圧をVo、電流をIo
シャントレギュレータに流れ込む電流をIzとします。
レギュレータIC(LM4040AIM3-4.1)が2端子構成のため、ツェナーダイオードと同じ
考え方で設計出来ます。

- 抵抗(R1)
使用するICのスペック上、ICには最低68[μA]の電流を流す必要があります。
今回は、最低100[μA]流れるように設計します。
回路構成より、ICに流れる電流(Iz)が最も少さくなる条件は
・負荷電流が最大になったとき、すなわちIo=100[μA]となったとき
・入力電圧Vinが最小になったとき、すなわちVin=4.7[V]となったとき
のふたつが同時に成立したときです。

そして、このときR1に流れる電流をI1とすれば
I1= Io(max) + Iz(min) = 100[μA] + 100[μA] = 200[μA]
となります。
D1の順方向最大電圧(VF(max))はデータシータより0.33[V]なので、R1は
R1 = (Vin(min) - VF(max) - Vo)/I1
= (4.7 - 0.33 - 4.1)/0.0002
= 1,350 [Ω]
手持ちの抵抗から選ぶとして、R1=1[kΩ]とします。
このとき、ICに流れる電流Iz(min)を改めて計算すると、
Iz(min) = (Vin(min) - VF(max) - Vo)/R1 - Io
= (4.7 - 0.33 -4.1)/1000 - 0.0001
= 170[μA]
となります。
R1の最大消費電力P1は、入力電圧Vin(max)=10[V]のときで、
ダイオードD1の電圧降下が0[V]だとすると
P1 = (Vin(max) - Vo)2/R1 = (10 - 4.1)2/1000
∴P1 = 0.035[W]
となることから、1/4Wタイプの抵抗器を使用します。
なお、この抵抗は精度は必要なく、カーボン型で十分です。
- シャントレギュレータ
この装置の出力電圧はシャントレギュレータの電圧で決まってしまいます。
今回使用したICはレギュレータ電圧が4.096[V]なので、
標準電圧端子の電圧Voも4.096[V]に決まってしまいます。
また、シャントレギュレータの電流Izが最大になるための条件は
・負荷電流が最小であるIo(min)=0[mA]のとき
(R1を流れる電流は全てツェナーダイオードに流れ込みます。)
・入力電圧Vinが最大のとき
のふたつが同時に成立したときです。

ダイオードの順方向電圧は0[V]とします。
このとき、回路構成よりIz(max)は
Iz(max) = (Vin(max) - Vo) /R1 = (10 - 4.1)/1000
Iz(max) ≒ 5.9[mA]
となりますが、ICの最大定格電流は20[mA]ですので、
これ以下であり問題ありません。
- 出力端子(標準電圧端子)短絡時
誤って標準電圧端子をGNDに短絡したり、仕様上の上限電流(100μA)を
超えてしまうことがあり得ます。

その場合の短絡電流の最大値は
Io(short) = Vin(max)2 / R1
= 102/1000
= 10mA
抵抗R1の消費電力P1(short)は
P1(short) = Vin2/1000
= 102/1000
= 0.1[W]
となるため、1/4[W]の抵抗器で耐えられます。
- 最大消費電流
外部電源端子から電源を供給した場合の最大消費電流は、
・入力電圧Vinが最大、すなわちVin(max)=10[V]のときです。
よって最大消費電流Iin(max)は
Iin(max) = (Vin(max) - Vo)/R1 = (10 - 4.1)/1000
= 5.9[mA]
となります。
電池を使用した場合の最大電流Ibat(max)は、
Ibat(max) = (Vbat(max) - Vo)/R1 = (6 - 4.1)/1000
= 1.9[mA]
となります。
- 電圧確認端子
- 感度調整用抵抗(R2)
電流計の感度調整に使用する抵抗(R2)はいくらが適当か感覚的なところが
あって判断に迷いました。
直流電位差計として使用した場合、電流計に印加される電圧は5[V]程度と
想定されたため、この状態でフルスケールになる抵抗値は5[V]/100[μA]=50[kΩ]です。
また、電流計の内部抵抗をテスターで測定したところ約5[kΩ]でした。
このため、50[kΩ]-5[kΩ]=45[kΩ]となるため、R2=47[kΩ]としました。
使用部品
- シャントレギュレータ
この装置の最重要部品です。
シャントレギュレータとして最もポピュラーTL431は精度が0.5〜2%なので
基準電圧としては少しもの足りないと思います。
電位差計が直読4桁なので、基準電圧も0.1%は欲しいところです。
今回は、たまたま秋月電子で精度0.1%のLM4040AIM3-4.1が手に入ったので
これを使用しました。
- 直流電流形
直流電位差計は平衡法なので、直流電流計は精度は必要なく、感度が一番大事です。
入手が容易なのは100μA以下のものでしょう。
精度が必要ないので、ラジケータでも使用可能かもしれません。
ただ、測定電流はプラスにもマイナスにも振れるので、出来ればセンターメーター
にしたいところです。今回はサトー電気から購入した±100μAの電流計を使用しました。
- ケース
安価なので愛用しているタカチ電機工業のCU型シリーズからCU-13Nを選択しました。
このシリーズは黒く塗装されている上蓋は鉄製なのでアルミ用の工具では加工が困難です。
また、大きいサイズでは、上蓋の鉄のため見た目の割に重くなるのが欠点です。
製作
- ユニバーサル基板
部品数は4個ですが、問題は表面実装部品のシャントレギュレータです。
幸いレギュレータICの足の間隔が広く(1mm程度)3本足なので、
ピッチ2.54mmのユニバーサル基板のハンダ面に取り付け可能です。
具体的には秋月電子のCタイプを使用しました。部品数の割には基板が
大きいですが、ケースの中はスペースに余裕があることと、これより小さい
ユニバーサル基板は、取り付け用のネジ穴がありませんので
Cタイプを使用することとしました。
- ケース
この装置の製作で最も手間がかかるのがケースに取り付ける電流計の穴加工です。
少し詳しく製作過程の写真を掲載します。
- 寸法

- 穴あけ開始。

- ハンド・二ブラーで切っていく。

- 電流計の穴をだいたい(?)丸く切っり抜いた。

- 丸ヤスリで形を整える。

- プリント基板
プリント基板は秋月電子のCタイプのユニバーサルを使用しました。
- 端子にはハトメを打ちました。

- 表面実装のICはハンダ面に取り付けました。

- 完成
内部の配線の様子です。リード線の端子からの引き出しが
少し窮屈になってしまいました。

動作確認
- とくに調整箇所はありません。
電池で使用する場合はまずスイッチをOFFした状態で電池を接続します。
- 電源確認端子とGND端子間の電圧を測定し、4.5[V]以上あることを確認します。
- 電源スイッチをONにします。
- 改めて、電源確認端子とGND端子間の電圧を測定し、4.5[V]以上あることを確認します。
- 標準電圧端子とGND端子間にテスターなどの電圧計を接続します。
- 電圧計の表示が4.1[V]付近を示すことを確認します。
テスターの精度は、本器のICの精度(0.1%)にかなわないので、
4.1[V]付近の電圧がでていればよいでしょう。
つまり、テスターの電圧が多少4.1[V]からずれていても、それはテスターの
誤差であって、本装置の誤差ではないので念のため。(^^;
- 測定結果例
標準電圧(4.096V)は誤差0.1%なので、4.092〜4.100[V}となります。
誤差1.5%±2文字のテスターで測定すると、60mV+2文字なので80mVの
誤差となります。よって表示が4.06[V]なら真値は3.98〜4.14[V]の
どこかです。もともと、テスターの方が誤差が大きいので、
本装置は作りっぱなしで使用します。(^^;

使用方法
- 標準電圧発生器
(1)電源スイッチをONにします。
(2)電源確認端子とGND端子間の電圧を測定し、4.5[V]以上あることを確認します。
何度も測定する場合は、この作業は測定の最初と最後に実施するだけでよいでしょう。
(3)電池動作時、消費電流が1.9[mA]あるので、使用しないときは必ず電源を切ります。
- 電流計
±100μAのアナログ電流計として使用出来ます。
感度スイッチを「高」に設定して使用します。
関連項目
- とくになし。
参考文献
- IC(LM4040AIM3-4.1)データシート
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